イヴァンカ・トランプ氏が安倍晋三首相と会食した「星のや東京ダイニング」とは? 知られざる3つの意義

(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

ドナルド・トランプ大統領が訪日

2017年11月5日にアメリカの大統領ドナルド・トランプ氏が訪日しましたが、それよりも少し早い11月2日にトランプ氏の長女であり大統領補佐官を務めるイヴァンカ・トランプ氏が訪日しました。

イヴァンカ氏は翌日の11月3日、東京・大手町の「星のや東京」地下にある「星のや東京ダイニング」で、安倍晋三総理と昭恵夫人たちと会食しています。

(追記:昭恵夫人は同席されなかったようです。失礼いたしました)

私は「星のや東京ダイニング」について、All Aboutたびねすで記事を書いており、料理長である浜田統之氏については<Amazonレストランガイド本1位のトップシェフ100人が選んだ「シェフ推し」をとことん読み解く><本格的なフランス料理を格安で楽しむには?>でも紹介しました。

主に食の観点から、今回イヴァンカ氏が「星のや東京ダイニング」に訪れたのは、日本にとって非常に意義があることだと考えています。

星のや東京ダイニング

「星のや東京」エントランス/著者撮影
「星のや東京」エントランス/著者撮影

まず「星のや東京ダイニング」とはどういうレストランであるのか、簡単に説明しましょう。

「星のや東京ダイニング」は、「星野リゾート」が運営する「塔の日本旅館」をコンセプトにした初めての都市型旅館「星のや東京」における唯一無二のダイニングです。ディナーだけ営業しており、完全予約制となっています。

料理長は、世界トップクラスのシェフである浜田統之氏が開業時から務めています。浜田氏は「軽井沢ホテルブレストンコート」の名店フレンチ「ユカワタン」の総料理長を務めた後、2005年「ボキューズ・ドール日本大会」で史上最年少優勝を果たし、2013年「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」では日本人初の3位(魚料理では世界1位)を獲得した今を代表する料理人です。

その浜田氏の料理を堪能できる「星のや東京ダイニング」は、以前まで宿泊客しか利用できませんでしたが、2017年3月1日から「Nipponキュイジーヌ」という新たなコースが提供され始めたと同時に、1日数組限定で宿泊客ではなくても利用できるようになりました。

3つの観点

「星のや東京ダイニング」について説明したところで、話を戻しましょう。

今回、イヴァンカ氏が「星のや東京ダイニング」へ訪れたことは日本にとって大変価値あることだと述べましたが、これを以下3つの観点から説明します。

  • 料理人
  • 食材
  • テーブルウェア

料理人

石 ~五つの意思~/著者撮影
石 ~五つの意思~/著者撮影

先程も簡単に紹介しましたが、「星のや東京ダイニング」料理長である浜田統之氏の詳しいプロフィールは以下の通りです。

  • 2004年 ボキューズ・ドール国際料理コンクール 日本大会で史上最年少優勝
  • 2005年 ボキューズ・ドール国際料理コンクール 世界大会出場
  • 2007年 ボキューズドール・アカデミー会員に選ばれる
  • 2010年 ル・テタンジェ国際料理賞 コンクール・ジャポン 3位入賞
  • 2012年 ボキューズ・ドール 国際料理コンクール アジア大会 準優勝
  • 2013年 ボキューズ・ドール国際料理コンクール フランス大会本選 世界第三位 銅メダル獲得

<名門「帝国ホテル」「ホテルニューオータニ」の海外有名シェフ招聘フェアが、他とは全く違う2つの理由>で紹介したフランス・パリでミシュランガイド2つ星を獲得した佐藤伸一氏がいたり、<今最も信頼されている食のアワード「世界のベストレストラン50」を知る>では世界的なアワードでランクインした日本人が何人もいたり、<32年振りの快挙なるか? 日本人料理人によるパリ・ファイナルへの挑戦>で紹介した吉本憲司氏は本大会で3位に入賞したりと、世界で活躍する日本人は少なくありません。

その中でも、2013年「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」で日本人初の3位を獲得し、魚料理では世界1位を獲得した浜田氏は、特に注目するべき料理人のうちの1人です。

浜田氏は、質が高くて素晴らしい日本の食材を日本人はもっと使うべきであるという哲学を持っており、どうすれば日本人の料理が世界で通用するのかを常に考えています。

そして、日本の特徴を生かし、海外にも十分通用する新しい料理を創り上げることができると確信したことから「星のや東京」の料理長を引き受けました。

浜田氏のような、実力と創造力、日本の食の未来を担う料理人がいることをイヴァンカ氏に知ってもらうことは、日本の食にとって大きな意義があるのではないでしょうか。

食材

金目鯛/著者撮影
金目鯛/著者撮影

浜田氏が紡ぎ出す料理はフランス料理とも日本料理とも分類できない新しいジャンルの料理なので「Nipponキュイジーヌ」と命名されました。

大きな特徴は以下の3点です。

1. これまでお皿に載らなかった、名も無き魚が登場

2. 食材がもつかかわりをお皿の上で表現

3. 確かな技術と日本らしさが織りなす、日仏料理の融合

出典:星のや東京

浜田氏はネタとシャリだけで完璧な世界を体現している寿司のように、食材に制限をかければかけるほど、その食材を深くまで掘り下げ、ポテンシャルを引き出せるという理論を持っていることから、肉を使わず、魚を中心にしてコースを構成しています。

鮫鰈/著者撮影
鮫鰈/著者撮影

鮫鰈、金目鯛、鱧、稚鮎、鰹、鰯、豆鯵など、挙げればきりがないほどですが、様々な魚を使っています。野菜では、百合根、山独活に加えて、名も知れぬ野草も使っており、日本独特の野菜から料理を組み立てているのです。神戸ビーフを始めとした黒毛和牛が世界で評価され、輸出が伸びていますが、日本が世界に誇れる魚も是非とも味わっていただきたいと思います。

「Nipponキュイジーヌ」は完全な日本料理ではなく、フランス料理の技法も取り入れているので、欧米人にも食べ易いはずです。イヴァンカ氏はユダヤ教徒であり、豚肉は食べられません。ユダヤ教には食べてはならない魚介類もありますが、それでも魚料理が中心である「Nipponキュイジーヌ」はイヴァンカ氏の信条に適しているでしょう。

イヴァンカ氏に日本の魚の素晴らしさや潜在能力を体験してもらうことは、大きな価値があると考えています。

テーブルウェア

龍泉刃物のナイフ/著者撮影
龍泉刃物のナイフ/著者撮影

「星のや東京」があった場所は、江戸時代には徳川家康を支えた酒井家の上屋敷がありました。日本の伝統や文化を大切にしたいということから、埋れ木を工夫してテーブルウェアを紡ぎ出し(ネタばれになるので、詳細は省きます)、食事の際に使われています。

福井県越前市にある龍泉刃物のナイフ、岐阜県土岐市にスタジオを持つ青木良太氏の陶器、木村硝子のグラス、他には南部鉄器を用いたりするなど、和のテーブルウェアがふんだんに見掛けられます。

「星のや東京ダイニング」個室/著者撮影
「星のや東京ダイニング」個室/著者撮影

「星のや東京」では靴を脱いで過ごすスタイルをとっていますが、地下一階にある「星のや東京ダイニング」も同様です。畳敷きになっており、素足で食事をとることになります。

日本のテーブルウェアを使い、日本の様式で食事することによって、日本の文化や日本人の気質を少なからず伝えられるのではないでしょうか。

日本の食がアメリカに伝わる

イヴァンカ・トランプ氏は訪日してから政治家などが御用達の赤坂の高級料亭で食事し、<帝国ホテルの四季、そして帝国ホテルと四季>でも紹介した日本のホテル発祥である帝国ホテルに宿泊し、日本の食の未来を感じさせる「星のや東京ダイニング」で安倍首相と会食を持ちました。

そして、11月4日にアメリカへと帰り、入れ違いのようにして11月5日にドナルド・トランプ氏が訪日しています。

安倍首相はイヴァンカ氏が設立に関与した「女性起業家を支援する基金」に5000万ドル(約57億円)拠出することを表明し、日米の関係は深まってきているように思えますが、日本の食の魅力もイヴァンカ氏に伝わったのではないでしょうか。

2017年「Forbes(フォーブス)」が発表した「世界で最も影響力のある女性」のランキングで、メラニア・トランプ夫人はアメリカのファーストレディーとしては初のランク外となり、イヴァンカ氏は19位に初めて入りましたが、ドナルド・トランプ氏にも大きな影響を与えると言われているイヴァンカ・トランプ氏に、「星のや東京ダイニング」での食の体験を通して、醤油や出汁、黒毛和牛だけではなく魚を始めとした日本の食材、さらには日本の料理人や文化がより理解され、日本の食が正しく深くアメリカにも広まっていくことを願っています。