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まだ食べ残しますか?「ちょうどいいが いちばんおいしい」は食品ロスを削減する

東龍グルメジャーナリスト
(ペイレスイメージズ/アフロ)

SDGsにおけるの食品ロスの削減

先日、一般社団法人 日本ブッフェ協会から<ちょうどいいが いちばんおいしい>というプレスリリースが配信されました。

私はこの日本ブッフェ協会の代表理事を務めていますが、このプレスリリースで述べられている内容は、国連でも重要視されている持続可能な開発目標(SDGs)の中で掲げられている「ターゲット12.3」の食品ロス削減と関係が深いので、考え方や取り組みを紹介したいと思います。

食品ロス削減を推進

農林水産省では以下を背景として食品ロス削減を推進しています。

我が国では、本来食べられるのに廃棄されている「食品ロス」が年間632万トン発生しています(平成25年度)。世界で約8億人の人々が栄養不足状態にある中で、「もったいない」という言葉の発祥地である我が国として、食品ロス削減にフードチェーン全体で取り組んでいくため、官民が連携して食品ロス削減に向けた国民運動を展開します。

出典:http://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/161227.html

参考までに、最新となる2014年度の食品ロスは年間621万トンです。

日本では農林水産省を中心にして、国をあげて食品ロスの問題に取り組んでおり、この食品ロス削減活動を「食品ロス削減国民運動(NO-FOODLOSS PROJECT=ノーフードプロジェクト)」と呼んでいます。

そして、日本ブッフェ協会は農林水産省と共にこの「ノーフードプロジェクト」に取り組んでいくのです。

日本ブッフェ協会の取り組み

日本ブッフェ協会×農林水産省
日本ブッフェ協会×農林水産省

では、日本ブッフェ協会はどのような取り組みを行っていくのでしょうか。

主に以下のことを行っていきます。

  • 食品ロス削減国民運動のシンボル「のすのん」を用いた喚起

日本ブッフェ協会公式サイト、および、ホテル会員のブッフェでノーフードロスを呼びかける

  • ブッフェ利用のマナー向上

「大食い」「元をとる」「食べ残しても構わない」は、ブッフェ本来の食べ方ではないということ、自分らしく適量だけ取って食べることを勧めていく

  • イベントで取り組み実施

日本ブッフェ協会が関係するイベントでノーフードロスの重要性を訴求する

  • 影響力のある料理人やパティシエによるトークショーの開催

アドバイザリーボードを中心にし、ブッフェファンに影響力のある料理人やパティシエにブッフェのあり方について話してもらう

  • 農林水産省との意見交換会

農林水産省と現状を踏まえた勉強会を実施し、今後の施策に役立てる

取り組みを分類すると、食品ロスにおける現状把握、ブッフェ利用者への食べ残し削減、多くの人に向けた周知活動に分けられます。

取り組みの特徴

日本ブッフェ協会の取り組みには以下の特徴があります。

  • ホテルが賛同
  • ブッフェ利用のマナー向上
  • 意見交換会

ホテルが賛同

ホテルは食品を扱う分量が非常に多く、町場のレストランとは比べ物になりません。ホテルのレストランはただでさえ席数が多い上に、いくつものレストランを有しています。さらには、ルームサービス、宴会やウェディングに加えて、近年エグゼクティブラウンジでもフードやドリンクを提供しているのです。

ホテルは多くの食品を扱っていますが、食品ロス削減の活動にそれほど積極的ではありませんでした。その根底にあるのは、ホスピタリティを大切にする顧客至上主義であり、客に何かをお願いしたり、強いたりすることが、料飲部門であまり行われなかったのです。

ホテルが加盟する協会はいくつかありますが、食品ロス削減に向けて具体的な施策を打ち出しているところはありません。しかし、日本ブッフェ協会は食品ロス問題を大きな課題として認識しており、同じ志を持つホテル会員と共に食品ロスに取り組んでいきます。

近年ホテルでは、環境への配慮から、客が必要ないようであれば、タオルやベッドシーツなどを取り替えない取り組みを行っていますが、こういった自然への配慮が食品ロスの観点からも、ようやく行われることになったのです。

今回の取り組みでは、まずはブッフェに関してですが、食品の消費量が膨大なホテルが足並みを揃えて取り組んでいくことは非常に意義があり、画期的なことであると言えるでしょう。

ブッフェ利用のマナー向上

ブッフェ利用のマナー向上を促進しようとしている点も、他にはない初めての試みです。

具体的には「大食い」「元をとる」「食べ残しても構わない」は、ブッフェ本来の食べ方ではないということを知らせていき、自分らしく適量だけ取って食べることを勧めていきます。

ブッフェのもとになったスモーガスボードでは、大盛りにしたりせず、自分が食べる分だけを、何度も取りに行くことがマナーとされています。

1人で大量の料理やスイーツを取ってきたり、山盛りにしたりすることは、他に取りたいと思う客に迷惑をかける上に、色々な料理が食べられるブッフェの魅力も半減させるでしょう。

様々な料理を皿にごちゃまぜに盛ることは、料理人がせっかく一生懸命に作った料理を台無しにしてしまいます。

ブッフェは確かに基本的には自由に食べてもよいですが、何から何までも好きにやっていいというわけではありません。最低限のマナーや品位がありますが、軽視されているのが現状です。

日本ブッフェ協会×農林水産省
日本ブッフェ協会×農林水産省

こういった考えを進めていくスローガンとして「ちょうどいいが いちばんおいしい」を考案し、食品ロス削減国民運動のシンボル「のすのん」と「ちょうどいいが いちばんおいしい」のデザインを作成し、ホテルのブッフェで適量に食べることを喚起します。

自分が何をどう食べたいかを考え、自分の分だけを適量だけ取ることによって、食べ残しも減り、食品ロスも削減できるのです。

そうなればブッフェを提供する側も余計なコストを削減できるので、よりよい食材を使ったり、種類数を増やしたりし、利用者にも喜ばしい好循環となるでしょう。

意見交換会

現状を把握して、分析する手段として、農林水産省との意見交換会も実施します。農林水産省は食品ロス削減に向けて、食べきりや食べ残しの持ち帰りの促進を行っていますが、具体的な現状を互いに共有し、現実的で効果のある施策を考えていき、食品ロス削減について深く連携していきます。

ホテルでは食品ロスに関する事例が数多くあるだけに、日本ブッフェ協会を通して、様々な場面における食品ロスの現実を農林水産省と共に再確認していくことは非常に意義があることでしょう。

ちょうどいいが いちばんいい

食品ロスはいくつもの側面を持っており、ある時には現代における飽食の双子として同一視され、ある時にはレストランでノーショーやドタキャンを呵責なく行う低い意識から生み落とされ、ある時にはブッフェにおける「元をとる」「大食い」といった未熟な文化から発芽しています。

ブッフェにおいてはもちろん、食の分野において「ちょうどいいが いちばんおいしい」が広まることによって、必ずや食品ロスを削減できると考えているので、是非ともこの言葉を広げていきたいです。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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