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2015年に注目したい大阪ホテルグルメ

東龍グルメジャーナリスト

注目したい大阪ホテルグルメ

「グルメブーム、2014年の振り返りと2015年の展望」で2014年のグルメブームを振り返り、2015年の展望を東京を中心にして考えてみました。日本において、東京がグルメの中心であることはもちろんですが、<食の都>と称される大阪のグルメにも注目したいです。

大阪の中心地である梅田には「大阪新阪急ホテル」「ホテル阪急インターナショナル」「ザ・リッツ・カールトン大阪」「ANAクラウンプラザホテル大阪」「ホテルグランヴィア大阪」「ヒルトン大阪」「ウェスティンホテル大阪」「インターコンチネンタルホテル大阪」など、非常に多くのホテルが集まっています。

東京にはもちろん多くのホテルがありますが、新宿、赤坂、銀座などに散らばっており、大阪の梅田ほどには密集していません。大阪では多くのホテルが集まっている梅田を中心にして、ホテルレストランがしのぎを削っています。

2015年に注目したい大阪のホテルレストランをご紹介しましょう。

ニューオープン

ホテルニューオータニ大阪「SATSUKI」

目の前で焼いてくれるオムレツ
目の前で焼いてくれるオムレツ

「【大阪グルメ】SATSUKIとサクラから読み解く、ホテルニューオータニ大阪の高い志」でご紹介した「SATSUKI」が2014年7月1日に満を持してオープンしました。

ニューオープンしたことは予定通りでしたが、驚いたことがあります。それは「ホテルニューオータニ「ベッラヴィスタ」料理長にトップシェフが就任した背景とは?」でご紹介した太田高広氏が2014年9月16日よりホテルニューオータニ大阪の総料理長に就任したことです。東京にあるホテルニューオータニのSATSUKIは、太田氏が料理長を務めるようになってから不動の人気を誇るようになっただけに、大阪のSATSUKIもどうなったのか気になるところでしょう。

広報 支配人 勝浦美奈子氏は「スイーツやアラカルトのメニューはもちろん、<最強の朝食>として東京でご好評いただいた『パーフェクトメニュー朝食ビュッフェ』も始まった」と述べ、これに対して、太田氏は「店内は東京より狭く造りも違うが、工夫して並べて、東京に匹敵する100種類ものメニューをご用意している」と説明します。

豆腐入りキャベツ焼き
豆腐入りキャベツ焼き

これだけのメニュー数を用意するだけでも驚きですが、太田氏は「大阪は出汁文化なので厚焼玉子ではなく出汁巻卵にしたり、味噌汁もしっかりと出汁をとったりしている。アジアからのお客さまも多いのでお粥にも力を入れている」と東京と大阪の違いを挙げ、注目の食材や料理を問うと、「サラダでは淡路県産の養宜玉ねぎ、温菜では豆腐入りキャベツ焼きをご用意している」と答えます。

さらには「パンケーキが人気なので、よりおいしく食べていただけるようにアーモンドバターを加えた」と、東京よりもさらに進化させようとする意気込みが伝わってきます。

これから先については「外がパリッと中はしっとりと焼ける溶岩窯を導入して、よりおいしいパンをご提供したい。また大阪近辺の素晴らしい食材をもっと取り入れて、一日の活力にしていただきたい」と楽しそうに語ります。

副総支配人 高山剛和氏は「2015年4月から大阪城公園の改修も始まるので、ホテルニューオータニ大阪も一緒に盛り上げていきたい」と話す一方で、「デフレも終わりを告げ、価格ではなく質が評価される時代になる。食材や料理に対するこだわりで付加価値を高めていきたい」と兜の緒を締めます。

SATSUKIが東京だけではなく大阪でも不動の地位を築けることを見守っていきたいです。

ブッフェ

大阪新阪急ホテル「オリンピア」

和食の実演コーナー
和食の実演コーナー

「【大阪グルメ】総工費1億円以上をかけた人気ブッフェ「ナイト&デイ」のリニューアルとは?」でご紹介したように、大阪でもブッフェが人気です。

特に阪急グループはブッフェに力を入れており、このナイト&デイはもちろん、大阪新阪急ホテル「オリンピア」もブッフェの中では高い人気を誇っています。土日祝日のランチタイムは3部制となっていたり、開店前にウェイティングスペースが黒山の人だかりとなっていたりと、行列店の代名詞となっているほどです。

営業企画 チーフ 伊豆丸梨絵氏は「昨年も多くのお客さまにご愛顧いただいたが、現状には満足しておらず、さらなる改善を進めている」と話し始めます。

具体的には「入口近くにあるスイーツコーナーと和食の実演コーナーを配置換えした。和食の実演コーナーは最も人気があるので、広い場所に移動して並び易いようにした」と大掛かりなブッフェ台の変更も行ったとし、「タイムサービスの際にはアナウンスだけではなく音楽も流してより楽しくなるようにした。外国のお客さまも多いので英語も併せて放送するようにしている」と、様々な試みを行っているとします。

自家製スモークライブ
自家製スモークライブ

メニューに関して訊くと「目利き野菜を入れてヘルシーさにこだわるようにしたり、東京純豆腐とコラボレーションして麻婆豆腐を作ったり、水ではなくルイボスティーで粉を溶き、脂きりがよくなるてんぷらを揚げたりしている」と料理も新しくなっているとします。

今後については「オリンピアはお客さまからのご期待が高いので、10人のチームメンバー全員が知恵を絞って、季節毎に全70種ものメニューを入れ替えている。まだ発表できないが、2015年には大きなことにチャレンジするので、期待していただきたい」と述べます。

梅田のブッフェの代名詞とも言えるオリンピアの次なるアクションを楽しみにしていましょう。

フランス料理

ザ・リッツ・カールトン大阪「ラ・ベ」

ボンボン フォアグラカナール 柚子のコンフィチュール コンドリューソルベ
ボンボン フォアグラカナール 柚子のコンフィチュール コンドリューソルベ

「ミシュランガイド東京2015はどうして話題となっているのか?」でミシュランガイドが近年にはないほど盛り上がりをみせているとご説明しましたが、関西においては、「【大阪グルメ】1周年を迎えたインターコンチネンタルホテル大阪、<食の都>で存在感を示す」でご紹介したインターコンチネンタルホテル大阪「ピエール」がミシュランガイド関西 2015で1つ星を獲得したことがトピックスとなっています。

このピエールもそうですが、関西のホテルレストランで唯一、2010年版から2015年版まで1つ星を獲得しているザ・リッツ・カールトン大阪「ラ・ベ」にも引き続き注目したいです。

ホテルのフランス料理が弱いと言われている大阪でラ・ベはどのようにして星を獲得し続けているのでしょうか。

パブリックリレーションズ マネージャー 渡邊綾子氏は「料理はもちろん、5クヴェールをいただいている通り、サービスや空間を評価していただいていることが要因ではないか」、加えて「ザ・リッツ・カールトンにはホスピタリティの信条が記載されたクレドが全社員に配布されている。多くのスタッフにホスピタリティ精神が行き渡っていることも、評価されているのではないか」と回答します。

ミシュランガイドにある、フォークとスプーンの数によって表される<クヴェール>=<レストランの快適度>では、確かにラ・ベは大阪のフランス料理で唯一、最高の5クヴェール(豪華で最高級)を獲得しています。

渡邊氏は続けて「館内の木製品はマホガニーを中心に揃えており、本物の暖炉も設けられている。ラ・ベはもちろん、ザ・リッツ・カールトン大阪には18世紀の絵画が150点もあり、館内に一歩足を踏み入れた瞬間からストーリーが始まっている」と演出が壮大であることが特徴的であるとします。

オマールブルーのロティ 海藻バター風味スパイスの香るソース 茄子のコンポテ リスフレを添えて ビスクのヴェリーヌ 柚子風味
オマールブルーのロティ 海藻バター風味スパイスの香るソース 茄子のコンポテ リスフレを添えて ビスクのヴェリーヌ 柚子風味

今度は、料理長 クリストフ・ジベール氏にミシュランガイドで星を獲得し続けている理由を問うと、ジベール氏は「星を獲得することが目的ではなく、お客さまに喜んでいただくことが目的。そのために、私だけではなく、他の料理人やサービススタッフと一緒になって日々努力している」と答え、こだわりについては「スペシャリテを決めるのは私ではなくお客さま。お皿を見た時に食べたいと思っていただける料理を作りたい」と真摯に述べます。

これから先については「日々チームの力を高めていってお客さまにより満足していただきたい。その結果ミシュランガイドで2つ星を獲得できたら嬉しく思う」と、あくまでもミシュランガイドが主な目的ではないことを強調します。

2015年はミシュランガイドで2つ星を獲得できるか注目しましょう。

帝国ホテル 大阪「レ セゾン」

茸のリゾットにトラフグ白子のムニエルと雲丹 白トリュフの香り
茸のリゾットにトラフグ白子のムニエルと雲丹 白トリュフの香り

大阪で伝統のフランス料理店と言えば、「【大阪グルメ】2016年で20年を迎える帝国ホテル 大阪、躍動の兆し」でご紹介した帝国ホテル 大阪の「レ セゾン」です。

今でこそ東京も大阪もフレンチでは町場がホテルを凌駕していますが、かつては、ホテルが日本のフレンチを引っ張ってきました。中でも2015年で125年の歴史を誇る帝国ホテル 東京がその先鞭をつけてきたことは、シャリアピンステーキなど名物フランス料理があったり、26年間も料理長を務めた村上信夫氏がNHK「きょうの料理」に長らくレギュラー出演したり、バイキングを日本で広めたりしたことからも明らかでしょう。

この帝国ホテル 東京の「レ セゾン」はミシュランガイドの1つ星を獲得し続けており、シェフはフランス人のティエリー・ヴォワザン氏が務めていますが、帝国ホテル 大阪の同ブランド「レ セゾン」のシェフは日本人の山梨陽巳氏が務めています。

副総支配人 松田喜則氏は「帝国ホテル 大阪は2016年に20周年を迎え、2015年から様々なフェアを行う。2014年は宿泊に力を入れて成果を残したので、2015年はレストランに注力していく」と力強く宣言します。

本日のジビエ(左下から時計回りの順番にペルドロー、ピジョン、コルベーユ)
本日のジビエ(左下から時計回りの順番にペルドロー、ピジョン、コルベーユ)

広報・企画課長 小池崇裕氏は「山梨シェフは27年間も帝国ホテルにいて、帝国ホテル伝統のフランス料理を受け継いでいる。シェフに就任してから5年が経ち、大阪の方の好みも把握しているので、20周年へ向けて期待していただきたい」と述べます。

山梨氏にスペシャリテを訊くと、「魚介類が好きで得意。2007年に水槽を導入してから、魚介類は鮮度が非常によいので、大阪のお客さまに是非食べていただきたい」と答え、「帝国ホテルらしさが感じられると供に、若い方や女性にもっと楽しんでいただけるよう、新しいお料理をご提供する」と自信を持ちます。

広報・企画 アシスタントマネージャー 尾池里美氏は「旬のものを使うことはもちろん、京野菜を使うなどして大阪らしさをもっと表現していきたい。女性に気に入っていただける料理をもっと考えていく」と話します。

帝国ホテルは日本において最も長いフランス料理の伝統を誇るだけに、大阪のレ セゾンがさらに躍進できるように応援していきたいです。

ホテル阪急インターナショナル「マルメゾン」

アボカドとズワイガニのセルクル
アボカドとズワイガニのセルクル

大阪新阪急ホテルのグループであるホテル阪急インターナショナルは阪急ホテルグループの旗艦ホテルです。1992年にホテルと同時にオープンした「マルメゾン」は、大阪の老舗ホテルフレンチのひとつであると言ってもよいでしょう。

営業企画 チーフ 今屋優子氏は「店名の通り、マルメゾン城をモチーフとしており、大きな絵画が飾られていたり、調度品にこだわっていたりと、まるでお城にいるような雰囲気。加えて、25階という高層階から広がる眺望が自慢。パティシエは女性で、女性が好むデザートをご提供しているので、最後まで召し上がっていただきたい」と紹介します。

シェフ 有働昭雄氏は「クラシックなフランス料理を忠実に守っている。フォン ド ヴォーやパイ生地も全ていちから作るなど、当たり前のことを着実に丁寧に行うことが大切」と噛み締めるように話し、この結果として「2012年に行われた『第6回エスコフィエ・フランス料理コンクール』では、当時31歳の西川仁が優勝した」と述べます。

「【グルメ/快挙】何故ザ・プリンス パークタワー東京「ブリーズヴェール」は料理コンクールに強いのか?」でもご紹介したように、エスコフィエ・フランス料理コンクールは、フランス料理を体系的にまとめあげたオーギュスト・エスコフィエを始めとして、先人の技術をいかに忠実に再現できるかを競うコンクールです。エスコフィエ・フランス料理コンクールで優勝するということは料理人としての地力が高いことの証左であると言えるでしょう。

デザートと小菓子
デザートと小菓子

有働氏は「基礎をしっかりと築き上げた後で、流行なモダン料理を追いたい。メインディッシュはクラシックなフランス料理を食べていただきたいが、前菜やデザートはお客さまが驚くような料理をお出ししたい」として、少し間を置いてから「ホテルなのであらゆるお客さまのご要望にお応えしながらもメニューに磨きをかけていく。今年は是非、ミシュランの星を獲得したい」と真剣に話します。

大阪で勢いのある阪急ホテルグループのメインダイニングであるだけに、今後の展開からは目が離せません。

成熟期を迎えた大阪のホテルレストラン

2014年の大阪を振り返ってみると、3月7日にあべのハルカスに「大阪マリオット都ホテル」がオープンして多くの注目を集めたり、7月15日にUSJに新しいアトラクション「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」がオープンしたりしました。こういった追い風を受けて、大阪市内のホテルは、10月における客室の平均稼働率が92.9%を記録したり、2014年1月から6月の客室単価がリーマン・ショック前の2008年並の水準に戻ったりと、好調に推移しています。2015年夏にはUSJの隣に東急ホテルズの「ザ パーク フロント ホテル アット ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」がオープンする予定で、大阪のホテルはまだまだ勢いが止まりません。

年が明けた2015年1月2日、阪急うめだ本店の初売りには開店前に8000人の行列があり、予定より30分も時間を早めて販売を開始しました。このことからも、大阪の消費もだんだんと復活していることが窺えるでしょう。大阪人は東京人よりも値段にシビアなのでホテルよりも町場のレストランに訪れることが多いですが、どのホテルも町場と同じ以上に競争が激しく常に進化していっています。

景気が回復して大阪経済により活気がでてくれば、ホテルレストランの優雅さや質の高さが分かるようになり、リーズナブルさが伝わってくるはずです。2015年は成熟期を迎えた大阪のホテルレストランに是非訪れてみてください。

情報

詳しくは以下の公式サイト]をご確認ください。

参考

SATSUKIについてはすみれ草201にも、ラ・ベについてはレストラン図鑑にも、レ セゾンについてはレストランにも、マルメゾンについてはレストラン図鑑にも詳しく掲載されていますので、ご参考にどうぞ。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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