今年何度目かの大寒波の接近で、JR北海道では昨日の早い段階から本日3月6日の列車の計画運休を発表しています。

計画運休というのは悪天候等で列車の正常運転ができなくなる恐れがある場合、あらかじめ列車の運転を取りやめますということですが、これに対して利用者からは「えっ? 今の段階でもう発表しちゃうの?」「やる気ないんじゃないの?」と言った言葉が聞こえてきます。

中には「昔に比べて根性がなくなった。」「輸送の使命を投げ捨てている。」などといった厳しいご意見もいただいているようですが、確かに以前はギリギリまで頑張って、少しでも運行できる可能性があれば何とか列車を動かそうという姿勢が見られましたが、今ではそういう「努力姿勢」を見せることなく、早々と運休を決める姿に「利用者離れが加速する。」といったご意見も多いのが実情です。

除雪設備の軽量化

こと、除雪に関してですが、一つの事実として北海道ばかりでなく全国的に見られる傾向があります。

それは除雪機械の軽量化です。

以前は写真のようにオレンジ色の強力なラッセル車が各地で配備されていました。

これは国鉄時代から引き継いだものですが、国鉄からJRになって35年が経過しています。ということは、これら除雪用の大型機械も投入からすでに半世紀近くが経過して、置き換えの時期を迎えています。

雪国では毎年の傾向として、昭和の時代に比べると雪の降る量が減少傾向です。

そこで、近年雪国の鉄道会社では国鉄時代から引き継いだ重量級の除雪車両を更新する際に、モーターカーと呼ばれる軽量級の車両に置き換えています。

また、以前は人海戦術で行っていた除雪作業も、職員数が減って駅にも車両基地にも人的余裕がありませんので、「昔はこうだった。」と言われても比較にならない状態ですが、そこへ近年ドカ雪と呼ばれる局地的な大雪が発生して、対応できずにマヒ状態となっているのです。

更新が進む重量級のラッセル車。筆者撮影
更新が進む重量級のラッセル車。筆者撮影

MR型と呼ばれる軽量モーターカー除雪車。筆者撮影
MR型と呼ばれる軽量モーターカー除雪車。筆者撮影

もともとは航空会社の考え方

計画運休というのが最初に始まったのは、筆者の経験によると今から20年ぐらい前、アメリカの航空会社からです。

当時、筆者は成田空港に勤務していましたが、台風が接近してくるとアメリカから飛行機が飛んでこなくなることが始まりました。

それまでは、成田が悪天候でも代替飛行場へ行かれるだけの燃料を積んでとりあえず飛んで来て、何度か着陸を試みて、ダメなら代替飛行場へ行くという飛行計画でしたが、ある時、「明日は台風だから、欠航が決まりました。」という発表がアメリカ系航空会社からありました。

アメリカからの便は、中には12時間以上もかけて飛んできます。その便の到着を待って、折り返しのアメリカ行きの便が出発します。こういう運航形態でしたが、台風などの悪天候が見込まれる場合には、日本へ向かう便を最初から飛ばさないという手法をとり始めました。

12時間かかって飛んできて降りられなければ経営的にも大損です。

だったら最初から飛ばさないということでしょうか。

つまり、前日の段階から「明日は飛行機は飛びません。」と発表するのです。

ところが相手はお天気ですから、台風がコースをそれて翌日はいい天気、なんてこともあるわけで、それでも「台風のために欠航」という表示を出して、お客様からはかなり怒られるような事態も経験しました。

今思えば、交通機関の計画運休はそんなところから始まったのだと思います。

契機になったのは2018年1月の信越本線列車立往生事故

それでも、JRをはじめとする鉄道会社は、何とか列車を走らせようという姿勢がありました。利用者もそれが当然と考えていましたが、2018年1月に信越本線で発生した列車立往生事故が契機となりました。

2018年1月11日、新潟駅を発車した列車が三条市の東光寺駅を発車した直後に雪のために走行不能となって、15時間も乗客が車内に缶詰めになるということが発生しました。

この場所は新潟平野の真ん中でふだんは雪の量は少ないところですが、この時は近年稀に見る大雪。それも里雪型と呼ばれる平野に大雪を降らせるタイプの低気圧でしたので、予期せぬ大雪に列車が駅間で立ち往生してしまいました。

400名以上の乗客を車内に乗せたまま一晩列車が立ち往生したこの事故を受けて、国交省は各鉄道会社に対して「列車内に乗客を乗せたまま駅間で運行不能になるような事態を起こしてはならない。」という指導を出しました。

この信越本線での立往生とそれによる国交省からの指導が契機になって、JR各社だけでなく、鉄道会社全体で、計画運休というスタイルが取られ始めたのです。

何が何でも動かせの時代

以前に比べると鉄道会社は根性がなくなったというご意見をお持ちの方もいらっしゃると思いますが、今は無理をしないという時代になりました。乗客だけでなく鉄道会社の職員にも敢えて危険にさらしてまで列車を運行する必要はないという考え方が一般的ですね。では、昔、根性があった時代はどうだったのでしょうか。

サンパチ豪雪時の信越本線除雪列車 (ジオテクサービス株式会社のホームページより)
サンパチ豪雪時の信越本線除雪列車 (ジオテクサービス株式会社のホームページより)

新潟県では昭和38年に発生した「サンパチ豪雪」という大雪が有名ですが、その時は、1月23日16:05に新潟駅を出た上野行急行列車「越路」が、上野駅に到着したのが5日後の1月28日の8:29と記録されています。なんと112時間24分もかかっています。

この時は長岡市内で3m以上の積雪があり、列車が各所で立ち往生した記録が残っていますが、今の時代にこういうことが許されるのかどうか。

2018年1月の信越本線立往生事故では車内に乗客が閉じ込めれられた時間は15時間。サンパチ豪雪ほどではないとしても10時間も20時間も列車の中にお客様を乗せたままにしておくことは、時代が受け入れられないのです。

ということで、このようなメッセージが前日の段階で利用者のスマホに届く時代になったのですが、利用者はあらかじめ計画を立てて行動することで、駅や車内で行き場を失うようなことは避けられる時代になったと筆者は考えます。

他の交通機関はどうなのか

鉄道が早々と運休を発表するのに対し高速バスはギリギリまで決定を遅らせる傾向があります。結果として鉄道は動かないけど高速バスは走ったという状況もよく見かけます。

では、高速バスはどうして大雪でも運行できるのでしょうか。

鉄道と高速バスの大きな違いは前述のように途中での立往生を回避できるかどうかということです。

鉄道は、特に特急列車の場合は長距離を走りますので途中で峠のような山間部を通ります。

本日の運休も特急「おおぞら」「とかち」など石勝線に集中していますが、石勝峠という険しい峠区間を通ることから、ここでの大雪で列車が立往生しないための措置です。

これに対して高速バスは自社の判断ではなくて、高速道路会社の判断で運行できるかどうかが決まります。高速道路が閉鎖されない限り高速バスは発車するのですが、さらに鉄道とバスが違うのは、バスはUターンして引き返すこともできれば、どこでも止まって乗客を降ろすことができるのに対し、鉄道は立往生した場所で安易に乗客を降ろすことができないというところです。

どこか最寄り駅に停車して、「はい、こちらで運転打ち切りです。」ということはできませんし、途中の踏切で「ここでバスに乗り換えてください。」ということもできません。

乗客を乗せた以上は責任を持たなければならないというのは鉄道も高速バスも同じですが、乗客を抱えたまま立ち往生した場合の解決策がバスに比べると鉄道は少ないため、事前回避することしかありません。これが計画運休ということになります。

吹雪をついて走る特急列車 撮影:半野久光氏
吹雪をついて走る特急列車 撮影:半野久光氏

JR北海道は経営危機状態と言われています。

そういう会社からは人材がどんどん去っていくことを考えると、職員数に余剰どころか余裕が全くない状況が容易に想像できます。

現状のリソースで輸送の使命を全うすることがどこまでできるのかを考えた場合、運行範囲を狭めて限定していくしかないというのが、計画運休の判断の根底にあると筆者は考えます。

当面このような事態が続くと思いますが、できるだけ多くの情報を仕入れられることが今の時代の利点でもありますので、ご利用の皆様方はしっかりと計画を立てて、あるいはいくつかの選択肢を考慮しながら、トラブルを事前に予測し、回避していただきたいと思います。

ご利用の皆様方のご理解とご協力を切にお願い申し上げます。