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JR北海道 復興クリスマストレインに乗ってきた。

鳥塚亮えちごトキめき鉄道代表取締役社長。元いすみ鉄道社長。
大雪の中運転されたクリスマストレインと雪に喜ぶ外国人観光客。(音威子府駅)

12月24日のクリスマスイブにJR北海道の宗谷本線(旭川-稚内)で「復興クリスマストレイン」が運転されました。

これは筆者が委員を務める北海道観光列車検討会議が、経営危機にあるJR北海道で観光列車を走らせるにはどのようにしたらできるだろうかというテーマの下、インバウンドと呼ばれる外国人観光客を誘客するというモニター列車で、今回は北海道庁の計らいで9月6日の地震で大きな被害を受けた厚真町、安平町、鵡川町の小学生たちも招待して交流を深めるイベント列車として運転されました。

出発に先立って旭川駅で行われたセレモニー。「安平町雪だるま大使」の高橋涼子さんと歌う子どもたち。
出発に先立って旭川駅で行われたセレモニー。「安平町雪だるま大使」の高橋涼子さんと歌う子どもたち。
高橋はるみ北海道知事、島田修JR北海道社長も出席。
高橋はるみ北海道知事、島田修JR北海道社長も出席。
たくさんの報道陣も取材に来ていました。
たくさんの報道陣も取材に来ていました。

列車の始発駅旭川では駅構内で出発セレモニーが開催されました。

招待された子供たちと一緒に「安平町雪だるま大使」で「乗り鉄シンガーソングライター」の高橋涼子さんが歌う式典には高橋はるみ北海道知事とJR北海道の島田修社長も参加されました。事情通の皆様にはこのお二人が並んで出席されることの貴重さがご理解いただけると思いますが、そのシーンを撮ろうと報道各社のカメラマンがたくさん来ていました。

高橋涼子さんのブログ

この列車を報じる翌日25日付の北海道新聞の記事。
この列車を報じる翌日25日付の北海道新聞の記事。
筆者も同じシーンを撮影していました。
筆者も同じシーンを撮影していました。

列車は午前9時8分に旭川を発車。

車内ではインバウンドのお客様やちびっ子たちに楽しませるイベントが開催されました。

「乗り鉄シンガーソングライター」の高橋涼子さんによる車内ミニライブ。車両ごとに行われて乗客の皆様は大喜びでした。
「乗り鉄シンガーソングライター」の高橋涼子さんによる車内ミニライブ。車両ごとに行われて乗客の皆様は大喜びでした。
高橋知事もサンタの衣装で全車両をまわってクリスマスプレゼントを配られました。
高橋知事もサンタの衣装で全車両をまわってクリスマスプレゼントを配られました。

ふだん路面電車など各地の地域鉄道で貸切ライブを開いている高橋涼子さんが全車両をまわって1両ごとにミニライブを開催。外国人の皆様方は大喜びでしたし、高橋知事はサンタの衣装をまとって車内でプレゼントの配布。なんだかすごい列車になりました。

最初の停車駅名寄では地元の皆様方の歓迎を受けました。
最初の停車駅名寄では地元の皆様方の歓迎を受けました。
駅構内で雪投げイベント。ふだん雪など見たことがない東南アジアの皆様方は大喜びでした。
駅構内で雪投げイベント。ふだん雪など見たことがない東南アジアの皆様方は大喜びでした。
そして地元の皆様のお見送り。
そして地元の皆様のお見送り。

途中駅では地元の皆様方による歓迎イベントが各地で開催されました。

名寄駅では雪投げイベント。輪投げと同じ要領で投げた雪が景品に当たればその景品をゲットできるという単純なイベントでしたが、ふだん雪など見ることの無い東南アジアからのお客様をはじめ、乗客の皆様は大喜びでした。

音威子府駅ではゆるキャラたちのお出迎えを受けました。
音威子府駅ではゆるキャラたちのお出迎えを受けました。
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外国人の皆様は記念撮影に夢中です。
外国人の皆様は記念撮影に夢中です。

宗谷本線のほぼ中間地点にある音威子府(おといねっぷ)では地元のゆるキャラたちが勢ぞろいでお出迎え。

乗客の外国人にとってはおそらくそれぞれのゆるキャラはどれが何だかわからないと思いますが、それでも大人気で記念撮影に順番待ちの列ができていました。

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駅舎内ではハスカップワインやハスカップ羊羹の試飲、試食が行なわれ、地元の人たちも大活躍。

宗谷本線のラッセル車。
宗谷本線のラッセル車。

豪雪地帯の音威子府ではラッセル車も登場。これはイベントではなく、きちんと除雪のお仕事をしているラッセル車ですが、このサプライズに乗客の皆様は一斉にカメラを向けていました。

幌延駅から雪道を歩いて昼食会場へ。
幌延駅から雪道を歩いて昼食会場へ。
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幌延では昼食会場まで数分間の徒歩移動。

100名を超える団体では駅の近くで食事をする場所を探すのも一苦労で、今回は企画側が苦肉の策として駅から数分間歩くところでの食事となりましたが、これが意外にも大好評でした。その理由は「雪道を歩く体験ができたこと」。バス旅行だと歩くなんてことはまずありませんから、こういうことも鉄道の旅ならではなんですね。

小学生に自分の名前を習字で書いてもらって笑顔の外国人旅行者。(撮影:大熊一精さん)
小学生に自分の名前を習字で書いてもらって笑顔の外国人旅行者。(撮影:大熊一精さん)

その昼食会場では、同行の厚真町、安平町、鵡川町の小学生たちが習字で外国人観光客の名前を書くイベントも開催され、自分の名前を書いてもらった彼らはこの笑顔。もちろんこの半紙は台紙に貼って皆様方にプレゼントされました。

良い記念になったことと思います。

本物のトナカイさんと記念撮影も。
本物のトナカイさんと記念撮影も。

食事を終えて列車に戻ると駅前では本物のトナカイさんがお出迎え。こちらも大人気で記念撮影に順番待ちができていました。

このように「復興クリスマストレイン」は車内、車外でいろいろなイベントを繰り返しながら、丸1日かけて17時過ぎに終着の稚内に到着しましたが、丸1日乗ってみて気がついたことは北海道という土地の資源の豊富さ。特に観光資源は未知数だということです。

地元の皆様方にとってみれば冬の寒さや雪は厄介ものかもしれませんが、その寒さや雪が、実は貴重な観光資源であり、東南アジアからの観光客にとっては「行ってみたい、体験してみたい。」という目的になるのです。

だから、スキーやスノーボードをやらない人たちでも皆さんこれだけ楽しめるわけで、雪合戦や雪道を歩くというだけの体験でも、各所に撮影したくなるような仕掛けがあるだけで十分集客できるということがわかったのが今回のモニターツアーの大きな収穫でした。

中国からの参加者の一人にお聞きしましたところ、自分の友達に自慢できるような写真が撮れることが大きなポイントだそうで、大雪の中でちょっとした撮影ポイント(マイナス表示の温度計や積雪量を示すメジャーなど)があれば、それだけで行く価値があるとおっしゃっていました。

つまり、特別な史跡や景観がないような所でも、十分に観光地になりうるのが今の時代でありますから、そう考えると大雪が降るというのもそれだけで資源になるのだということです。

この観光列車のモニターツアーは来年1月31日には今度は道東の釧網本線(網走ー稚内)で走ります。インバウンド取扱いの旅行事業者の方や外国人旅行者が対象のモニターツアーになりますので一般のお客様のご乗車はできませんが、冬の釧網本線には「SL湿原号」や「流氷物語号」などの観光列車が走ります。ぜひ皆様も、貴重な体験ができる冬の北海道へご旅行ください。列車に乗るだけで、駅のホームにいるだけで、友達に自慢できるような体験写真が撮影できるチャンスがたくさんあるのが、この時期の北海道なのです。

(おことわりがあるものを除き、写真はすべて筆者撮影)

えちごトキめき鉄道代表取締役社長。元いすみ鉄道社長。

1960年生まれ東京都出身。元ブリティッシュエアウエイズ旅客運航部長。2009年に公募で千葉県のいすみ鉄道代表取締役社長に就任。ムーミン列車、昭和の国鉄形ディーゼルカー、訓練費用自己負担による自社養成乗務員運転士の募集、レストラン列車などをプロデュースし、いすみ鉄道を一躍全国区にし、地方創生に貢献。2019年9月、新潟県の第3セクターえちごトキめき鉄道社長に就任。NPO法人「おいしいローカル線をつくる会」顧問。地元の鉄道を上手に使って観光客を呼び込むなど、地域の皆様方とともに地域全体が浮上する取り組みを進めています。

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