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3月1日から海外帰国時の待機ルール大幅緩和。日本人の海外出張・海外旅行は?3回接種で待機期間なしも

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
成田空港第2ターミナル到着ロビー。人は少なく閑散としている(2月25日筆者撮影)

 海外からの日本入国時の水際対策が3月1日から大きく変わる。そこで日本人の海外出張や海外旅行、更には海外在住日本人の一時帰国などがどう変わるのかをまとめてみた。

「宿泊施設での3日間待機の対象国の有無」「ワクチン接種が3回目の有無」で日本入国後のルールが異なる

 3月1日から水際対策を大幅緩和し、外国人の新規入国を認めると共に、待機期間が大きく変更される。今回の新ルールでは、2つの項目での判断になり、主に4パターンに分類されることになった。1つは「宿泊施設での3日間待機の対象国であるのか」、もう1つは「ワクチン接種が3回目を終えているか、もしくは2回以下であるのか(未接種を含む)」となる。

■検疫所が指定する宿泊施設での3日間待機の対象国の場合

 まずは「検疫所が指定する宿泊施設での3日間待機の対象国であるのか」という点であるが、これまではオミクロン株の感染拡大地域として欧米のほとんどの国が対象となっていたが、3月1日からは大幅に緩和され、37カ国・地域のみが対象となる。日本人の渡航者が多い国では、アメリカ、オーストラリア、タイ、フィリピンなどが宿泊施設の3日間待機がなくなる。

3月1日からの宿泊施設での3日間待機の対象国

アラブ首長国連邦、アルバニア、イスラエル、イタリア、イラク、イラン、インド全土、インドネシア、ウズベキスタン、英国、エジプト、オマーン、カナダ全土、韓国、カンボジア、サウジアラビア、シンガポール、スイス、スウェーデン、スリランカ、デンマーク、ドイツ、トルコ、ネパール、ノルウェー、パキスタン、バングラデシュ、ブラジル(サンパウロ州、パラナ州)、フランス、ペルー、ミャンマー、メキシコ、モルディブ、モンゴル、ヨルダン、レバノン、ロシア全土

 対象国については、従来は国・地域によって3日間待機・6日間待機・10日間待機に別れていたが、3月1日時点では対象国は全て3日間待機となる(日本到着時は含まない)。

3日間待機対象国でもワクチン3回目接種済みであれば宿泊施設での待機は不要。ワクチン2回以下でも3日間待機後は制限なしに

 3日間待機国において大きく変わるのは、ワクチンの3回目接種を終えている場合は、入国時の抗原検査などで陰性が判定されれば、宿泊施設での3日間待機は不要となり、自宅や自己手配のホテルで3日間の自主待機となる。

 そして3日目に指定機関でPCR検査もしくは抗原検査を受けて陰性であれば、その結果を入国者健康確認センターへアプリ経由で送付し、待機終了のお知らせが来れば待機終了となる(3日目以降に検査を受けない場合は7日間の自主待機となる)。

 宿泊施設での3日間待機者については、退所前に必ず検査を受けることになることから、退所前の検査で陰性が出ることで、退所段階で待機期間は終了となり、その後は行動の制限はなくなる。

■宿泊施設での待機不要な国からの場合

 また上記の37カ国・地域以外の国からの入国時においては、入国時の抗原検査などで陰性が判定され入国した後は、検疫所が指定する宿泊施設での待機はなく、ワクチンの接種回数に関係なく日本入国後に自宅や自己手配のホテルなどへ移動することができる。

ワクチン3回目接種を終えていれば待機期間なしでコロナ前同様に到着後の行動制限不要。2回以下は3日間の自宅などで自主待機に

 ワクチンの接種回数が0~2回までの入国者は3日間の自主待機で、3日目に指定機関でPCR検査もしくは抗原検査を受けて陰性で、結果を入国者健康確認センターへアプリ経由で送付し、待機終了のお知らせが来れば待機終了となる(3日目以降に検査を受けない場合は7日間の自主待機となる)。

 37カ国・地域以外の国からの入国でワクチン3回目接種を終えている場合は、入国時の抗原検査などで陰性が判定されれば待機期間は不要となり、コロナ前同様に到着後は制約なしで自由に動くことができるようになる。(帰国後3日目の検査も不要)

3日目の指定機関でのPCR検査もしくは抗原定量検査のリストは厚生労働省のホームページ内に掲載されている(抗原定量検査対象の羽田空港内の木下グループ新型コロナPCR検査センター、2021年4月筆者撮影)
3日目の指定機関でのPCR検査もしくは抗原定量検査のリストは厚生労働省のホームページ内に掲載されている(抗原定量検査対象の羽田空港内の木下グループ新型コロナPCR検査センター、2021年4月筆者撮影)

今まで禁止されていた空港から自宅までの公共交通機関が入国時の検査後24時間以内に限って可能に

 そして今回、公共交通機関の利用においてもルールが大きく変わり、自主待機期間中であっても空港から自宅などへの移動においては、最短ルートでの移動を条件に入国時の検査から24時間以内の移動に限って公共交通機関の利用が可能になる。

 つまり、羽田空港や成田空港などに到着後、自宅に戻る際に鉄道・バス・国内線が利用できることになり、地方都市に住んでいる人でもこれまで利用できなかった新幹線や飛行機も使えることになることで、北海道や沖縄も含めて、都内などに宿泊せずに自宅へ戻ることが可能になる。ただ公共交通機関を使う場合は24時間以内の移動が条件となる。

 ただ、注意しなければいけないのが3日目以降に自主検査(PCR検査もしくは抗原検査)に出かける場合の公共交通機関の利用は認められない。

これまでは日本入国後の公共交通機関の利用はできなかったが3月1日以降は、自宅などへの移動に限って認められるようになる(2021年11月、羽田空港第3ターミナルにて撮影)
これまでは日本入国後の公共交通機関の利用はできなかったが3月1日以降は、自宅などへの移動に限って認められるようになる(2021年11月、羽田空港第3ターミナルにて撮影)

日本での接種者は問題ないが、海外で接種している場合には3回目接種はファイザーとモデルナのみが認められる

 ワクチン接種の種類については、日本国内で接種している場合には問題ないが、海外で接種している場合には、1回目・2回目はファイザー、アストラゼネカ、モデルナ、ヤンセンのワクチンが認められるが(ヤンセン社のワクチンは1回の接種で2回分相当と判断する)、3回目はファイザーとモデルナのワクチンしか認めないルールとなった。

 つまり、3回目を海外で接種した場合でもファイザーとモデルナ以外は日本入国時には2回接種と判断されることになる(1・2回目が対象ワクチンの場合)。

自主待機が3日間もしくはなしになることで海外渡航復活の動きも

 オミクロン株の感染拡大する前の昨年秋の時点では、日本人が海外へ出かける場合、観光や短期出張でもアメリカやヨーロッパの多くの国でPCR検査の陰性証明書やワクチン接種証明書(入国する国よって条件は異なる)で入国可能であったが、やはり日本帰国後の14日間もしくは10日間の自宅や自己手配のホテルなどで待機する自主待機がネックとなり、海外渡航における大きなハードルとなっていた。

 昨年11月末に始まった海外でのオミクロン株の感染拡大によって、水際対策を強化し、自主待機期間を14日間とすると共に、オミクロン株の感染拡大地域からの入国時に検疫所が指定する宿泊施設(ホテル)での3日間・6日間・10日間の強制待機の対象国が大きく増え、宿泊施設の不足も大きなニュースとなった。

 年末年始が終わった直後に日本国内でもオミクロン株の感染者数が拡大し、多くの都道府県に「まん延防止等重点措置」が適用された。感染者数が高止まりの状況は続いているが、潜伏期間が短いことに加えて、国内でオミクロン株が蔓延したこともあり、1月15日からは待機期間を10日間に、更に1月29日からは待機期間を7日間に変更したが(共にワクチン接種回数に関係なく)、今回の3月1日からのルール変更によって、入国時のルールが大きく緩和されると共に1日あたりの入国者数が3500人から5000人に拡大される。

3月以降、日本人の海外渡航者が増えることが予想される羽田空港第3ターミナル(2021年11月、筆者撮影)
3月以降、日本人の海外渡航者が増えることが予想される羽田空港第3ターミナル(2021年11月、筆者撮影)

3回目接種を終えた人から海外出張を復活する企業も。海外旅行も復活へ向けて動き出すか?

 つまり3回目のワクチン接種を終えていれば、ほとんどの国からの入国において隔離なしになる。アメリカやヨーロッパの多くの国、更にはオーストラリア、タイ、フィリピンなど一定条件で日本人の短期滞在が可能な国へ海外出張や海外旅行へ出かけることは事実上可能となり、帰国後もすぐに日常生活に戻れる。

 訪問国の感染状況にもよるが、海外出張の復活の動きが出てくるほか、帰国後の待機期間がなくなることで、2年ぶりの海外旅行へ出かける人も徐々に増えることも考えられる。ただ日本出発前・帰国前にPCR検査を受ける必要があり、コストが上がってしまう懸念があることも事実で、海外旅行の復活にはもう少し時間がかかるだろう。加えて、新たな変異株が出てしまうと再び水際対策が強化されてしまうこともあり、まだ先行きは不透明である。

 3月1日以降、1日あたりの入国者数が5000人に増えるが、今後は5000人の枠の争奪戦になる可能性もあり、3月1日の新ルールの運用開始後の新型コロナウイルスの感染状況を見ながら、入国者数の上限についても考えていく必要があるだろう。

 日本行きの便出発72時間以内のPCR検査の陰性証明書も引き続き必要となり、日本政府が指定する検査方法でなければ飛行機のチェックインができないことから、海外から日本へ向かう際には注意して欲しい。またルールは感染状況によって、日々変化することから最新の情報は確認していただきたい。

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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