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海外からの水際対策、ルール違反者へ飲酒運転並みの罰則強化の声も。自主待機期間は10日間に短縮

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
羽田空港第3ターミナルには入国者が公共交通機関利用できない旨を告知(筆者撮影)

 新型コロナウイルスにおける海外から日本入国時の自主待機期間は、オミクロン株の潜伏期間が従来株に比べて短いことから、1月15日午前0時から14日間待機から10日間待機に変更された。新型コロナウイルスの感染者数が減少したことで昨年10月から従来の14日間から10日間に条件付きで短縮された際には(11月末で停止)、10日目にPCR検査もしくは抗原検査を受けて陰性であることが10日間短縮の条件となっていたが、今回のルール改定においては、無条件(10日目の検査なし)で10日間に自主待機期間が変更された(1月16日現在、全ての国・地域が対象)。

オミクロン株感染拡大地域からの入国は3日間、6日間、10日間のホテル隔離に。多くの国が対象

 今回の短縮は、オミクロン株の潜伏期間が短いということを理由にしている。日本に入国する際には従来から海外の空港を出発する72時間を切った段階でのPCR検査を終えていなければ日本行きの飛行機に乗ることができないことに加え、羽田空港や成田空港、関西空港など日本国内の空港に到着した際にも抗原検査をしたうえで陰性確認された場合に入国できる措置が取られている。

 現在は、欧米も含めてオミクロン株の感染拡大をしている地域を中心に入国後すぐに検疫所の宿泊施設(ホテルなど待機施設)での隔離が行われており、感染状況に応じて国もしくは地域ごとに指定されている3日間、6日間、10日間(日本入国後の翌日から計算:3日間待機の場合はホテルで3泊必要)の待機措置対象者については、入国後すぐにバスなどで空港周辺のホテルに案内される措置(検疫所の宿泊施設)がとられている。

 多くのオミクロン株感染が拡大している対象国・対象地域では3日間(3泊)となっているが、1月16日現在、ヨーロッパではイタリア、イギリス、ドイツ、フランス、オランダ、ポルトガル、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーなどに滞在している場合、アメリカではカリフォルニア州、ニューヨーク州、マサチューセッツ州、ハワイ州、フロリダ州、イリノイ州、テキサス州に滞在している場合、アジアでも韓国からの入国の場合などに6日間(6泊)のホテル待機となっている。ルールは頻繁に変更されるので注意が必要だ。

 待機措置対象者も待機期間を終えた後も日本入国の翌日から10日間は自主待機期間となり、自宅や自己手配のホテルなどでの待機に入る。(今回の短縮措置で10日間の待機措置の場合は待機解除と共に自主待機期間は終了)

外国人の新規入国が停止したことに加え、オミクロン株感染拡大に伴い3日間もしくは6日間の待機者が増えたことで成田空港第2ターミナルの到着ロビーは閑散としていた(2021年12月、筆者撮影)
外国人の新規入国が停止したことに加え、オミクロン株感染拡大に伴い3日間もしくは6日間の待機者が増えたことで成田空港第2ターミナルの到着ロビーは閑散としていた(2021年12月、筆者撮影)

待機施設の不足から地方へチャーター便で移動したケースもあった

 ただ到着した空港周辺のホテルが入国者の増加で確保できない場合に、成田空港から中部空港、那覇空港、福岡空港などへチャーター便を飛ばし、 地方都市のホテルで待機期間を過ごす措置も取られ、一部で批判の声も上がっていた。しかし移動に伴う交通費も宿泊費、そして滞在期間中に部屋に運ばれるお弁当における自己負担額もなく、何よりも日本国内に海外から新型コロナウイルスを持ち込ませない為の措置である。

 国としてもホテルを原則全館借り切ることで対応している点から見ても、海外からの入国者向けのホテルが不足する点は仕方なく、特にオミクロン株に伴う隔離措置対象国が急激に増加したことで宿泊先確保に関係者は苦労しており、結果的に羽田空港や成田空港到着時に長時間ホテルが決まらなくて長い時間、空港内から出られない状況になっている。改善が必要な点もあると思うが、このタイミングで日本に入国する以上は、多少の不便さについては理解しなければならないだろう。

自主待機期間中は、毎日1回のビデオ通話と複数回の現在地確認などが求められる

 筆者も昨年、海外出張に出て帰国した際に夏に14日間の自主待機と10月に10日間の自主待機(10日目に抗原検査を受けて14日間から10日間に短縮)を経験した。その期間、筆者はルールに則り、都内の自宅で過ごした。国として罰則を含めて強化して欲しいのが自宅や自己手配のホテルなどでの自主待機のルール厳守である。外出制限や公共交通機関の不使用などについて誓約書にサインをして、誓約書に記入した待機場所で過ごす必要がある。

 現在はスマートフォンを活用し、毎日1回は「My SOS」というアプリを通じた位置情報と連動した形でのビデオ通話、更に不定期に1日数回スマートフォンの画面上に現在地確認を求めるプッシュ通知が出た際に位置情報を送信するなど措置が取られているが(更に健康状態の報告もアプリ上で毎日行う必要がある)、これらの操作を無視している人も僅かながらいるのが実情である。

 というのも、途中で警告の連絡が入るものの、1週間近くずっと無視していた場合に限って名前が一定期間公表される程度の罰則でしかなく、つまり1週間のうちに何度か応答していれば現状では警告はあっても罰則措置を受けることはない状態になっている。結果的に自宅にスマートフォンを置いたまま外出したり、もしくは2台目のスマートフォンを使って外出するなど違反事例もある。自宅やホテルの待機場所にいる時だけ応答することで罰則から逃れるというケースである。

筆者が昨年10月に海外から帰国時に自主待機した際の画面。ビデオ通話直前に予告の通知が来てから約1分後にビデオ通話がかかってきた。
筆者が昨年10月に海外から帰国時に自主待機した際の画面。ビデオ通話直前に予告の通知が来てから約1分後にビデオ通話がかかってきた。

入国者健康確認センターからの着信画面
入国者健康確認センターからの着信画面

その他に現在地報告は1日数回ある
その他に現在地報告は1日数回ある

今後増えるであろう外国人の入国者に対しても毅然な対応が必要

 取材を進めてみると、ビデオ通話などの応答がほとんどない人に対して、待機場所に係員が確認に出向くケースもあるようだ。ただ罰則規定が弱いことで、待機が守られないケースが出ていることは事実であり、現在の運用ルールであれば、今後解禁されるであろう外国人の入国時にルール違反が横行することも考えられる。外国人の違反者に対して、国外退去処分をする可能性があることを示唆しているが、何よりも違反者をチェックする体制が万全でないことから違反を取り締まる体制を整備することが早急に求められる。毅然な対応が求められる。

 罰則の強化については、今すぐに取り組むべき課題であると思う。ほとんどの入国者が自主待機のルールを守り、空港から自宅やホテルまでの移動も公共交通機関を使わずに、駐車場に駐車していた自分の車、出迎えの車、ハイヤー、レンタカーなどを使い、自主待機期間中は、認められている必要最小限の日常生活に必要な買い物を除いて外出をしないでいる。ルールをしっかり守っている人からすれば違反者の行動は許せない行動であり、罰則を強化すべきという声は多い。

成田空港の鉄道駅へ向かう通路でも誓約書の遵守を求める案内も出ているが(2021年12月、筆者撮影)
成田空港の鉄道駅へ向かう通路でも誓約書の遵守を求める案内も出ているが(2021年12月、筆者撮影)

空港の鉄道駅でも違反者のチェックをしている様子は見られない

 羽田空港や成田空港を取材して感じることとして、入国者の公共交通機関の利用ができないという案内の掲示は出ているが、鉄道駅の改札口でもチェックする人はほとんど見られない。

 日本入国後、自主待機期間中は公共交通機関の利用が禁止されているのにも関わらず利用している人がいるほか、国内線や新幹線などで移動している人がいることも確認されている。少なくとも空港における駅の改札口やリムジンバスの乗車口などでのチェックは今すぐにでもできることだろう。

特に鉄道駅では係員が海外からの入国者が公共交通機関を利用しないかのチェックはしていなかった(2021年12月、筆者撮影)
特に鉄道駅では係員が海外からの入国者が公共交通機関を利用しないかのチェックはしていなかった(2021年12月、筆者撮影)

水際対策の強化もあり、年末年始に帰省や旅行ができた。観光業界にとっては大きかった

 主権制限の是非について、新型コロナウイルス関連ではよく取り上げられるが、海外からの入国者に関しては要請ではなくルールの厳守は義務にすべきであると考える。日本国内に在住している日本人の安全を守るための措置であり、昨年11月末にオミクロン株の感染が拡大した際に海外の新規入国の一旦停止など入国制限を強化したことで諸外国に比べて、市中感染が確認されるまで一定の期間があり、結果的には年末年始については2年ぶりに帰省や旅行に出かけられた人も多かった。

 観光業界や宿泊業界、運輸業界にとっては仮に12月の早い段階で感染者数が増えていれば、繁忙期の年末年始が2年連続で直前キャンセルの状況になっていたかもしれないなか、オミクロン株の市中感染が年明けになったことで、宿泊施設などでは年末年始に売り上げを確保することができて助かったという声も多い。

12月29日のANA国内線が出発する羽田空港第2ターミナル。オミクロン株の市中感染が少なかったこともあり、2年ぶりの帰省や旅行へ出かける人の姿が多く見られた(筆者撮影)
12月29日のANA国内線が出発する羽田空港第2ターミナル。オミクロン株の市中感染が少なかったこともあり、2年ぶりの帰省や旅行へ出かける人の姿が多く見られた(筆者撮影)

違反者へ罰金を取るべきという声が日増しに増えている。飲酒運転並みの罰金が必要との声も

 海外ではルール違反者に対して拘束するなどの強い措置を行っている国もあるが、日本では現実的には違反者に対して拘束することは難しく、罰金を課すことが現実的で効果も出るだろう。飲酒運転での事故が減少した背景には、飲酒運転を摘発された際の罰金が50万円近くになったことで飲酒運転は激減した。定期的な飲酒運転の取り締まりも含めての効果であり、50万円という高額の効果は大きかった。今回の海外からの水際対策においても、感染拡大をさせない為の措置であり、飲酒運転に近い罰則を適用することで抑止力に繋がるだろう。悪質な場合には更に高額の罰金を適用することも視野に入れることも含めた法整備の議論をすべきだろう。

 日本人は、外でのマスク着用義務の法律がない国でありながらも、ほとんどの人が外でもマスクを着用している国であることからも、海外帰国時の自主待機期間中のルールもほとんどの人が遵守している。ただ一部の人がルールを守らないことで、感染拡大に繋がる懸念もあることから、今回10日間に自主待機期間中は短くなるが、自主待機ルールの徹底にも力を入れて欲しいところだ。

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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