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羽田空港、4連休初日の朝は多くの人で賑わう。緊急事態宣言後も予約が増加、窮屈な東京から脱出する動きも

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
4連休初日(7月22日)の朝6時40分頃の羽田空港第2ターミナル(筆者撮影)

 東京オリンピックの開会式に伴って、一部の祝日が移動したことによる4連休に突入した。4連休初日となる7月22日の朝6時過ぎの羽田空港は、4連休を使って旅行に出かける人の姿で賑わっていた。緊急事態宣言下では、今まで最も多い空港利用者になっている。

緊急事態宣言が発令後も新規予約がキャンセルを上回る

 今までは緊急事態宣言が発令されることで、国内線利用者は新規予約もよりもキャンセルが上回り、予約数が減少していた。しかし今回は、これまでの緊急事態宣言下では初めて、7月12日の緊急事態宣言発令以降、各航空会社ではキャンセルよりも新規予約の方が上回る異例の状態となっている。

 品川駅から羽田空港へ向かう京浜急行でも座れない人も出ており、電車が到着するたびに改札口では多くの人が降りている光景が見られ、JALやスカイマークが出発する第1ターミナル、ANAが出発する第2ターミナルともに朝6時の段階で混雑していた。

JAL便が出発する第1ターミナルも年代を問わず、多くの旅行客で賑わう(7月22日、午前6時15分頃撮影)
JAL便が出発する第1ターミナルも年代を問わず、多くの旅行客で賑わう(7月22日、午前6時15分頃撮影)

ANA便が出発する第2ターミナル。大きな荷物を預ける旅行客の光景も見られた。中にはゴルフバックを持っている人も(7月22にち、午前6時頃撮影)
ANA便が出発する第2ターミナル。大きな荷物を預ける旅行客の光景も見られた。中にはゴルフバックを持っている人も(7月22にち、午前6時頃撮影)

第1ターミナルのスカイマーク便チェックインカウンター。スカイマーク便も午前中は混み合っている(7月22日、午前6時15分過ぎ撮影)
第1ターミナルのスカイマーク便チェックインカウンター。スカイマーク便も午前中は混み合っている(7月22日、午前6時15分過ぎ撮影)

午前中の便は満席もしくは満席に近い予約が入っている。朝食レストランも行列

 実際に羽田空港の発着案内版を見ても、午前中を中心に多くの便が満席もしくは満席に近い予約が入っている表示がされていた。まさに緊急事態宣言中では異例の状況である。朝6時台にもかかわらず、羽田空港内の朝食が食べられるレストランには行列ができていた。

羽田空港第1ターミナルの2階にある人気朝食スポットの「Hitoshinaya」も朝6時15分で並んでいた(筆者撮影)
羽田空港第1ターミナルの2階にある人気朝食スポットの「Hitoshinaya」も朝6時15分で並んでいた(筆者撮影)

幅広い世代の利用者の姿。高齢者の姿も以前に比べて増えた。ANAでは昨年と比べて約1.3倍、2年前に比べると5~6割程度

 全体の傾向としては、これまでは家族連れや若い人などが多く見られていたが、羽田空港で取材をしている中で感じたこととしては、高齢者の姿も以前に比べると多く見られ、年代を問わず羽田空港から出発する旅行者や帰省客の姿が見られた。ANAによると7月19日時点で今回の4連休(7月22日~25日)の予約はピーク日で最大1日8万5000人の利用者になる見込みで、昨年の4連休と比べて約1.3倍、コロナ前の2年前と比べると約5~6割程度の利用者となっている。

ANA便、JAL便ともに午前中のほとんどの便が満席もしくは残席わずかになっていた。台風の影響で沖縄方面の那覇、宮古、石垣、久米島行きなどは欠航(筆者撮影)
ANA便、JAL便ともに午前中のほとんどの便が満席もしくは残席わずかになっていた。台風の影響で沖縄方面の那覇、宮古、石垣、久米島行きなどは欠航(筆者撮影)

窮屈な東京から4連休中だけでも脱出したい旅行者も多い

 今回4連休に国内旅行をする人に取材をしたなかで、多く聞かれたのが窮屈な東京から脱出をしたいという声だった。東京都は7月12日から再び緊急事態宣言が再発令されたことで飲食店のお酒の提供自粛、東京五輪開催に伴う首都高速の1000円アップ(乗用車が中心)や交通規制による渋滞の拡大、更に1日あたりの東京都内の新規感染者数が1000人を超えるなど、大幅に増えたことで都内で4連休を過ごすよりは、コロナ対策をした上で、人との接触は最小限にしながら旅行に出て羽根を伸ばしたいという声もあった。

オリンピック無観客で観戦チケットの返金見込んで旅行に行く人も

 一方、東京オリンピックの観戦チケットを持っていた人が、無観客開催になったことで、観戦することができず、東京にいる必要がなくなったこと、更に後日返金される予定で観戦チケットの代金が返金されることを見込んで、無観客開催が決まった7月8日以降に国内旅行を予約した人も確認できた。観戦チケットの返金額が数万円の人もいれば、なかには開会式を含めて100万円以上が返金対象になった人もいる。

 海外旅行に自由に出かけることができない中で、都内でも五輪モードを感じることができない。新型コロナウイルスの観戦者が拡大している東京にいるよりも、仕事も4日間休みになることで、東京を離れてゆっくり過ごしたいということから緊急事態宣言が発令されてから旅行を計画する人も出た。今回、緊急事態宣言発令後にキャンセル数よりも新規予約数が上回ったようだ。東京オリンピックの開会式も目前で、五輪関係者や要人の県を跨いだ移動をしている姿がメディアで報道されていることも、政府や自治体が自粛を呼びかけても説得力がないという声も聞かれた。

第1ターミナルのJAL便の保安検査場(7月22日午前6時15分過ぎ撮影)
第1ターミナルのJAL便の保安検査場(7月22日午前6時15分過ぎ撮影)

第2ターミナルのANA便の保安検査場(7月22日午前6時40分過ぎ撮影)
第2ターミナルのANA便の保安検査場(7月22日午前6時40分過ぎ撮影)

旅行に出かける人の意識も変化。安価で受けられるPCR検査が大人気

 ただ旅行に出かける人の意識も変わっている。数日前から都内の2000円前後でPCR検査ができるセンターには長い行列ができ、予約も取れない日も出ているなどワクチン接種を終えていない世代も、旅行先、帰省先に迷惑をかけない為に積極的に検査を受ける人が増えたほか、高齢者を中心にワクチンの2回接種を終えて2週間以上が経過したことで、緊急事態宣言中ではあるが、予定通りに出かける決断をした人も増えている。旅行者自身も感染予防の対策をした上で出かけている人が日を追うごとに増加している。

羽田空港内にもPCR検査センターがあり、事前予約は必要であるが、出発前にクイック検査(抗原定量検査)やPCR検査が受けられる(第2ターミナルの木下グループ新型コロナPCR検査センター、2021年6月筆者撮影)
羽田空港内にもPCR検査センターがあり、事前予約は必要であるが、出発前にクイック検査(抗原定量検査)やPCR検査が受けられる(第2ターミナルの木下グループ新型コロナPCR検査センター、2021年6月筆者撮影)

沖縄方面は台風の影響で旅行取りやめの人も

 現在、台風が沖縄県に接近している影響で、羽田から那覇、宮古島、石垣島、久米島、下地島への直行便が22日は全便欠航、23日も那覇行きは午前中に那覇空港発着する便のほとんどが欠航するほか、離島への便は23日も全便欠航の路線も出る見込みだ。予約の段階では22日出発のほぼ全便が満席の状況になっていたことから、午前中だけでも数千人単位で利用者が減ったことで、保安検査場前の大混雑にはならなかったが、それでも羽田空港内は大きな荷物を持った旅行客の姿が多く見られた。特定の方面というよりは、全方面で混雑している。

 7月23日の東京オリンピックの開会式のテレビ観戦も、自宅ではなく旅先や帰省先で観る人も多くなりそうだ。

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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