週明けの月曜日、7月19日から東京オリンピック開会式より4日早く、首都高速の都内区間において、朝6時~夜22時までの連続16時間、自家用車を中心に通常の通行料金に一律1000円アップされる(中型車・大型車・特大車、タクシーや小型貨物などの事業用、自家用車扱いの小型貨物車は1000円アップの対象外)。

大きく議論されることもなく、予定通りに週明け19日から実施へ

 東京オリンピック期間においては7月19日~8月9日の22日間、パラリンピック期間では8月24日~9月5日の13日間の予定。海外からの入国者も当初予定より大きく減り、更に無観客開催となり、大会関係車両も減るなかで、1000円アップの必要性について疑問の声が相次いでいた。しかし、大きな議論もされることなく、予定通りに19日月曜日から実施される。

首都高速の多くで東京オリンピック・パラリンピックの選手や大会関係者の輸送ルートを示す標識が見える
首都高速の多くで東京オリンピック・パラリンピックの選手や大会関係者の輸送ルートを示す標識が見える写真:松尾/アフロスポーツ

オリンピックの雰囲気は味わえないが、日常生活はオリンピックの影響を受ける東京

 この1ヶ月だけ見ても、東京オリンピックの観戦チケットは、東京都を含む1都3県で全て無効となり無観客開催が決まり、今週に入ってからは東京都内の1日の新規感染者数も1000人を超え、7月15日には1308人となった。オリンピックの雰囲気を国民が直接的に味わうことができず、観戦したい人はテレビ観戦のみとなることが確定したなか、日常生活に影響を及ぼすのは最小限にして欲しいという声が大勢だ。

 海外から来日する外国人は選手・大会関係者、メディア関係者などに限定され、訪日外国人観光客(インバウンド)で賑わっていた2019年に比べても1日あたりの入国者は圧倒的に少ない。しかし、首都高速の1000円アップはそのままであり、日常生活に影響が出る人も発生することになる。

大会関係車両だけが渋滞しなければよいという風にも受け取れる。1000円アップが決められたのは2019年秋

 首都高速の料金を1000円アップする理由については「首都高速道路の渋滞を回避し、大会関係車両の円滑な移動を確保する」としているが、間違いなく大会関係車両は減っているはずである。

 7月16日の赤羽一嘉国土交通大臣の会見では「無観客開催による交通量の減少との御指摘がありましたが、そもそも、観客の輸送は、乗用車を想定せず、公共交通機関を利用することを原則としていることから、無観客開催の決定によって、首都高速の交通量が減少することは見込んでおりません」と発言している。大会関係車両の数の増減の基準となるのは、無観客が決定した時点ではなく、2020年に予定通りに実施されていた場合の台数との比較でなければならないはずだ。1000円アップというのは2019年10月に決められていたからだ。

関連記事:五輪期間中の首都高速、通行料金一律1000円アップは必要か?コロナ禍の移動スタイルに対応する必要性(6月5日掲載)

 赤羽大臣は更に「現在の首都高速の交通量は例年と同程度であり、現状においても渋滞が発生しているため、大会関係車両の円滑な移動のためには、交通量を削減する必要があると認識しております」と発言している。

朝6時~夜22時までの連続16時間が対象で時差利用もほぼ不可能

 首都高速の交通量については、コロナ前と変わらない水準まで戻っていると筆者も認識しているが、朝・夕方時間帯の渋滞は多くの場所で見られるが、昼間の時間帯の渋滞はわずかしかなく、朝6時~夜22時までの16時間を通して交通量を削減する必要はない。日中時間帯の首都高速は問題ないはずだ。首都圏のJR・地下鉄・私鉄が取り組んでいる時差出勤のような形で、ドライバーに対して時差利用を促すべきであるが、それも不可能である。

 混んでいる時間に対して交通量を減らす意味で追加料金を課すことは理解できるが、深夜だけ安くする(深夜0時~4時)は5割引にすることで時差利用を促しているのは納得できない人がほとんどだろう。その時間に経済活動や日常生活をずらすことをできる人はわずかであり、馬鹿にしていると思われても仕方のない時差利用である。

国民生活への影響も考慮して、国が動く必要性も

 赤羽大臣の発言で「国土交通省や首都高速道路会社が独自で決定した施策ではなく、あくまで、東京都及び大会組織委員会からの協力依頼に基づき、首都高速道路会社が実施するもの」とあったが、確かに協力依頼自体は東京都と大会組織委員会であるが、国民が五輪に触れる機会を制限(無観客やパブリックビューイングの中心)している以上、国民生活への影響も最小限にするべく、国や国土交通省が東京都や大会組織委員会に介入するべきだろう。

都内の新規感染者数も1000人超えで、公共交通機関の利用を避けたい人には厳しい35日間

 特に1日の東京都における新規感染者数が1000人を超えたことも考慮すべきである。少しでも人との接触を減らすべく、感染リスクを減らす意味で自家用車で移動をする人も多い。日常生活の中でどうしても移動をしなければならない人も多い。これが数日間であれば我慢することができるが、オリンピック期間で22日間、パラリンピック期間で13日間も金銭的負担、もしくは一般道利用においては渋滞による時間的負担を強いられることに納得いかないという声が多い。都内での車の多くが不要不急な利用ではないことも付け加えておきたい。

優遇するのは選手・コーチの車両のみでもいいのではないか

 今回の1000円アップにおいては「首都高ロードプライシング」という言葉が使われているが、ザル状態と言わざる得ない。大会関係者の車両が円滑に走行できれば問題なしという認識なんだろう。選手・コーチについては、選手ファーストで、渋滞なく円滑に選手村から競技会場に移動できるように便宜を図り、混雑時には優先して走行できるようにする方法も考えられるが、選手以外の大会関係者やメディア車両などについては、余裕を持って出発すれば済むだけの話である。多少の渋滞は我慢すべきだと思う。

 首都高速が身動きが取れないくらいの大渋滞になることは事故渋滞以外は考えられないなかで、東京都や大会組織委員会も関連車両を減らす努力をすることで、1000円の追加料金を減額したり、時間帯を短くするなどの努力をして欲しいものだ。議論すらほとんどされなかったこと自体がザル状態と言わざるを得ない。

本来は選手村から半径8キロ以内の「コンパクト五輪」だったはずだが

 そして、本来、東京オリンピックは選手村から半径8キロ以内に競技会場を集めた「コンパクト五輪」だったのではなかったのだろうか。郊外での競技では宿泊施設も競技会場周辺になることから、晴海の選手村から競技会場への移動も至近距離だったはずだが、今回の首都高速の1000円アップは都内区間のほとんどが対象であり、コンパクト五輪のメリットが全く見えていない。

晴海の選手村に近い豊洲出口。豊洲インターの先の選手村に最も近い晴海インターは7月19日~8月9日、8月24日~9月5日の期間、通行止めとなる
晴海の選手村に近い豊洲出口。豊洲インターの先の選手村に最も近い晴海インターは7月19日~8月9日、8月24日~9月5日の期間、通行止めとなる写真:西村尚己/アフロスポーツ

ETCレーン利用では、料金アップを知らずに利用するケースも

 週末に入ったことで、7月19日からの1000円アップは間違いなく実行されることになるだろう。ほとんどの車がETC利用ということで、19日以降、料金アップされていることを知らずにETCレーンを通過し、首都高を降りる時にETC受信機(もしくはカーナビ連動の場合はカーナビ)から流れる料金を知らせる音声で初めて知る人も出るだろう。トラブルになる可能性も考えられる。

最初の1週間の交通量を見て、期間中でも減額・時間帯の見直しなどを検討するべき

 実際に19日から1000円アップが実行され、まずは1週間の首都高速の交通量を時間帯別に測定した上で再度議論すべきだろう。最大の懸念は、1000円アップを回避すべく、通常は首都高速を利用している車が一般道に切り替えることでの一般道の渋滞だ。既に郵便局や宅配便などでは遅延の可能性について発表しているが、一般道の渋滞による混雑の状況も含め、交通量の分析をした上で、期間中の見直しも考えて欲しい。いよいよ1000円アップが7月19日(月)から始まる。