東京オリンピックの開幕まで50日を切ったなかで、都内の交通規制も6月から一部始まり、東京・有楽町の東京国際フォーラム周辺の一部道路は6月1日より通行止となった。東京オリンピック・パラリンピックの開催が迫るなかで、首都高速の都内区間において、オリンピック期間では開幕前の7月19日~8月9日の22日間、パラリンピック期間では8月24日~9月5日の13日間の合計35日間、自家用車については6時~22時までの16時間において首都高速の都内区間において一律1000円アップされる。

7月19日~8月9日と8月24日~9月5日の朝6時~夜22時、一律1000円上乗せ。普通車が主な対象に

 例えば、通常630円の区間(銀座→空港中央のETC車)であれば、7月19日~8月9日と8月24日~9月5日の朝6時~夜22時までは1630円になる。今回、一律1000円アップの対象となるのは、ETC車の場合は自家用車のみが対象となり、中型車・大型車・特大車、タクシーや小型貨物などの事業用、また自家用車扱いの小型貨物車は1000円アップの除外となる(現金での支払いにおいてはルールが異なる)。また、身体障害者手帳の保有者や同乗する車両などホームページ上で提示されている事前登録車両も上乗せの対象とはならない。

2019年時点では交通量抑制の呼びかけだけでは抑えられないことから大会期間中の上乗せに踏み切った

 普通車については、朝6時~夜22時まで1000円を上乗せする一方、深夜0時~4時までは5割引にすることを発表している。東京都が2019年10月16日に発表した「東京2020大会における首都高速道路の料金施策に関する方針」によると、大会関係車両が多く通行する首都高速道路での流動を確保する上で以下の課題が明らかになったと記されている。これが1000円上乗せを決定した理由となる。

1:TDM(多くの企業・市民の皆様から少しずつ協力を頂き、全体の交通量を低減する交通需要マネジメント)のみでは首都高速道路の交通量が減りにくい傾向にあること

2: 大会期間中は、大会関係車両の通行、物流車両など派生需要の増加など、例年同時期の交通量よりも多くの交通が見込まれること

3: TDM による交通量の低減効果を、オリンピック・パラリンピック期間(約 30 日間)を通じて継続させる必要があること

 入国制限がなく、大会に出場する選手だけでなく、大会関係者、スポンサー関係者、メディア関係者、そして海外からの観光客が押し寄せる状況となれば、首都高速の渋滞が増加し、選手や大会関係者の移動にも影響が出ることから、1000円を上乗せすることで交通量の抑制効果は見られるだろう。呼びかけだけでは交通量が減らないという判断は妥当だろう。だが1年延期で運営方針が見直され、状況は大きく変わった。

東京オリンピック・パラリンピックの選手や大会関係者の輸送ルートを示す標識
東京オリンピック・パラリンピックの選手や大会関係者の輸送ルートを示す標識写真:松尾/アフロスポーツ

海外からの大会関係者や外国人観光客抑制で大会関係車両が大幅に増える可能性は少ない?

 大会関係者やメディア関係者の入国者も大幅に減らした上に行動が制限され、外国人観光客の入国は一切認められず、仮に有観客での実施になった場合でも人数制限がされることで交通量は従来想定よりは少なくなる。

 それでも、期間中は大会関係車両が増えることになるが、大幅に車が増加する可能性は低い。そのような状況下で1日16時間という長時間にわたる1000円の上乗せは必要なのだろうか?コロナ禍でなければ、1000円の上乗せについて、オリンピック・パラリンピックを円滑に進める為に協力したいという気持ちを持つ人も多かっただろう。しかし、コロナ禍で社会生活が大きく制限されるなかで、首都高速の上乗せについては再考すべきであり、300円~500円程度の上乗せに引き下げるなどの策があってもいいだろう。

競技会場にもなっている東京国際フォーラム前の道路は早くも6月1日から車両通行止めになるなど五輪関係の交通規制が始まる(6月5日正午ごろ、筆者撮影)
競技会場にもなっている東京国際フォーラム前の道路は早くも6月1日から車両通行止めになるなど五輪関係の交通規制が始まる(6月5日正午ごろ、筆者撮影)

コロナ禍で公共交通機関の利用を避けて車移動にシフトした人も多く、コロナ禍の移動スタイルにも配慮する必要も

 当初は、オリンピック・パラリンピック開催期間中は自家用車の利用を控え、鉄道・バスなどの公共交通機関の利用を呼びかけていた。しかし今は状況が違う。コロナ禍になって鉄道利用を控え、できる限り自家用車で移動することで人との接触を控える人が増えている。今までは電車移動が中心だった人も、車での通勤にシフトした人も実際にいる。公共交通機関の利用に抵抗があって車移動をするという、コロナ禍で変わった移動スタイルについても考慮する必要がある。

 旅行についても自家用車だけでなく、レンタカーやカーシェアなどを活用する人がコロナ禍で増加した。オリンピック・パラリンピック期間中であっても、日常生活で公共交通機関の利用を極力避けている人にとっての金銭的・時間的負担は大きい。首都高速を利用すれば1000円が加算され、往復利用なら2000円も金銭的負担が増えることになる。一般道を走れば渋滞で時間を要する可能性が高く、デメリットしかない。人との接触を避ける意味で公共交通機関の利用を抑制している人に対しての上乗せに納得できないという声も聞かれる。

 直近で問題となる点は3つあると考える。

問題点その1:16時間という上乗せ対象時間の長さの必要性

 1つ目は朝6時から夜22時までの16時間という上乗せ対象時間の長さである。東京オリンピック・パラリンピックが実施されることになっても競技が中心となり、関連イベントは大きく縮小されることで交通規制の時間も長時間に及ばないだろう。仮に首都高速の通行料金を上乗せする場合でも、本当に大会関係者車両の円滑な移動が必要な時間(1日数時間程度)に縮小すべきで、日常生活への影響は最小限にすべきである。そもそも料金上乗せ自体が必要であるかも議論して欲しい。

問題点その2:上乗せ対象区間の範囲。現在は都内区間全て

 2つ目は上乗せ対象区間の範囲である。今回1000円上乗せは、都内区間全てが対象であり、都心中心部に入らない場合でも1000円上乗せの対象となる。湾岸線は空港中央と浦安、1号線は大師、2号線は全線、3号線は用賀、4号線は高井戸、5号線は戸田南、中央環状線は新郷、6号線は八潮南、7号線は一之江、9号線は全線となる(入口・出口によって一部異なる)。ETC車であれば、入口・出口の情報もしっかり管理できることから(首都高速におけるETC車であれば利用率は約96%)、都心環状線+競技エリアに近い場所を走行する車に限定するなど範囲を狭めることも考えるべきだろう。

問題点その3:首都圏での周知がほとんどされていない

 3つ目は1000円上乗せの周知がほとんどされていないことだ。車を運転する人であってもオリンピック・パラリンピック期間(大会前後を含めて)合計35日間において首都高速で1000円アップすることにおける知名度は低い。

 例えば羽田空港から飛行機を利用する場合、コロナ禍では、自家用車を持っている人においては車で羽田空港へ向かう人が増えている。これも接触を減らすという目的もあるが、7月19日~8月9日、8月24日~9月5日に首都高速を利用する場合には片道あたり1000円が加算される。同様に都内から地方へマイカーで旅行に出かける場合もだ。もし予定通りに実施するのであれば更なる周知が必要である。

春休み期間中の羽田空港第2ターミナル(3月27日、筆者撮影)。感染者が減少傾向になれば、夏休み中に自家用車で羽田空港へ向かって飛行機を利用する人も多いだろう
春休み期間中の羽田空港第2ターミナル(3月27日、筆者撮影)。感染者が減少傾向になれば、夏休み中に自家用車で羽田空港へ向かって飛行機を利用する人も多いだろう

 料金上乗せがスタートする7月19日まで約45日しかないが、国民に大きな負担が発生せずに納得できる形での検討を望みたい。