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緊急事態宣言決定後のキャンセルは10%未満に留まる。GW初日の羽田空港は多くの旅行者で賑わう

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

 ゴールデンウィーク初日となる4月29日、1年前にはほとんど人が見られなかった羽田空港であったが、今年はチェックインカウンターでも多くの利用者の姿が見られた。昨年同様に東京都内は緊急事態宣言が発令されている状況であるが、新型コロナウイルスの感染拡大から2回目のゴールデンウィークを迎え、コロナ禍の旅行スタイルが確立し、2000円~3000円程度でPCR検査が気軽に受けられるようになったことも変化の要因と言えるだろう。

 昨年と今年のGW期間中初日にそれぞれ羽田空港で取材をして感じた違いについてを中心にレポートする。

その1:ターミナルに人が戻る。昨年の6~7倍の利用者に

 昨年のゴールデンウィーク初日の羽田空港に利用者の姿はほとんど見られなかった。ANAの場合は昨年のGWは運航便が通常の2割以下まで減ったが、1回目の緊急事態宣言でマスク不足が解消されておらず、コロナの様子がわからないこともあり、旅行や帰省がほぼ全面ストップとなった。だが今年は、3回目の緊急事態宣言が東京都・大阪府・兵庫県・京都府に発令されているが、ANA国内線全体で77%の運航率まで回復している。

 ANAによると今年のGW期間中の利用者は2年前と比べると4割程度に留まるとのことだが、実際に4月29日のGW初日に羽田空港第1ターミナル(主にJAL)・第2ターミナル(主にANA)では共に、朝から大きな荷物を持った旅行客の姿が目立った。

 ANAではGW初日の予約数は約6万3000人となっており、3月後半の春休み中の週末に比べると若干少ないが、昨年と比べて6~7倍の利用者になっている。

4月29日午前9時前のゴールデンウィーク初日の羽田空港第2ターミナル(筆者撮影、以下全て同じ)
4月29日午前9時前のゴールデンウィーク初日の羽田空港第2ターミナル(筆者撮影、以下全て同じ)

昨年(2020年)4月29日の午前9時過ぎの羽田空港第2ターミナル。利用者の姿はほとんど見られず閑散な状況だった
昨年(2020年)4月29日の午前9時過ぎの羽田空港第2ターミナル。利用者の姿はほとんど見られず閑散な状況だった

その2:昨年は1便もなかった満席便の表示がある

 昨年のゴールデンウィーク期間初日は、筆者調べで羽田空港を出発する便はわずか123便(羽田発のみ)しかなかった。航空会社別の内訳では、 ANA(全日本空輸)が28便、JAL(日本航空)が55便 、スカイマークが13便、 AIRDOが10便、スターフライヤーが10便、ソラシドエアが7便で合計123便しかなかった。機体も小型化され、JALでは羽田空港発着便では普段では見られない、95人乗りのエンブラエル190型機を伊丹線の一部に投入していた。

参考記事:GW初日、羽田空港からの国内線出発便はわずか120便程度。直前キャンセルも多く、空港は閑散(2020年4月29日掲載)

 だが今年は各航空会社ともにGW期間中は7~8割程度の運航率になっており、那覇、宮古島、石垣島などへ向かう便では臨時便も設定されている。傾向としては沖縄方面は搭乗率が高く、感染者が拡大している関西方面への便の予約率は少ない状況になっている。

昨年4月29日午前9時過ぎの羽田空港第1ターミナル。JALでは昨年のGW初日は55便しか出発便がなかった
昨年4月29日午前9時過ぎの羽田空港第1ターミナル。JALでは昨年のGW初日は55便しか出発便がなかった

その3:緊急事態宣言発令後の国内線キャンセル、ANAで6.7%減に留まる。JALも1割以下

 4月23日(金)に緊急事態宣言の発令が決定し、25日(日)から東京都、大阪府、兵庫県、京都府で発令された。ANAによると、GW期間中(4月29日~5月5日)の国内線予約数は4月23日時点では44万4493人だったものが、4月28日時点では41万4798人と約3万人減少(キャンセル)となったが、減少幅は6.7%に留まっている。

 JALでも同様に4月23日に発表したGW期間中の予約状況から大きな減少はなく、ANA同様に緊急事態宣言発令が決まってからのキャンセルは1割以下とのことだ。旅行においては、飛行機・新幹線などの交通機関、宿泊施設でクラスターが起こっていないことで、緊急事態宣言中でも旅行を取りやめることにした人は限定的であった。

参考記事:GWの帰省は軒並み中止だが、国内線は緊急事態宣言でも昨年のような大量キャンセルにならない理由は(2021年4月25日掲載)

今年のGW初日はJAL便が発着する羽田空港第1ターミナルのチェックインカウンターも混雑していた(4月29日午前7時過ぎ)
今年のGW初日はJAL便が発着する羽田空港第1ターミナルのチェックインカウンターも混雑していた(4月29日午前7時過ぎ)

その4:保安検査場も通常運用になっている

 これまでの2回の緊急事態宣言中の一部期間において利用者が少ないことから、ANAでは第2ターミナルの南側の保安検査場、JALでは第1ターミナルの北ウイングを閉鎖していたが、今年のGW期間中は、ほぼ通常の運用となっている(第2ターミナルの保安検査場「D」のみ閉鎖を継続)。

 上級会員や上級クラスの利用者が利用できる航空会社のラウンジも全てオープンしている。ただ、羽田空港内の売店やレストランの一部で休業のままとなっている。

4月29日朝の羽田空港第2ターミナルの南側エリア
4月29日朝の羽田空港第2ターミナルの南側エリア

昨年(2020年)のゴールデンウィークは羽田空港第2ターミナルの南側エリアは閉鎖されていた(2020年4月29日撮影)
昨年(2020年)のゴールデンウィークは羽田空港第2ターミナルの南側エリアは閉鎖されていた(2020年4月29日撮影)

その5:駐車場も繁忙期扱いの料金設定

 羽田空港の第1・第2ターミナル直結の駐車場は、GWや夏休み、年末年始などの繁忙期では多客期料金として、24時間毎の最大料金を通常の1530円から2140円に引き上げている。昨年のGWや夏休み期間はコロナ禍で利用者が少なかったことから多客期料金の設定を見合わせたが、今回のGWでは多客期料金の設定となっている。

 ただ昨年9月の4連休をはじめ、10月・11月の週末に見られた駐車場が満車の状況にはなっていない。

今年のGWは、4月23日~5月9日までの期間は24時間毎の最大料金が通常の1530円から2140円の多客期料金となる
今年のGWは、4月23日~5月9日までの期間は24時間毎の最大料金が通常の1530円から2140円の多客期料金となる

その6:昨年はGW期間中もピーク日はなかったが、今年は出発のピークが4月29日と5月1日、到着のピークが5月5日に

 羽田空港で4月29日の朝に取材に応じたANAエアポートサービスの久沢弘太郎旅客サービス部長は「昨年に比べると7~8倍くらい、2019年度と比べて4割程度のお客様になっている。利用率については5割程度で、ピーク日の4月29日と5月1日は6~7割くらいになる見込みとなっている。お客様に安心して利用してもらえるような取り組みを引き続き行っていく」と話した。

 上記のコメントからも読み取れるが、昨年の緊急事態宣言のGW中では、1便あたり10人未満で出発する便もあったが、今年のGWはガラガラの便は限られることになる。

筆者が感じた昨年と今年のGW初日の違い

 筆者は、昨年のGW初日と今年のGW初日の両方を羽田空港で取材したが、昨年は時が止まってしまったかのような閑散というか、ほとんど人の姿がない光景だったが、今年の4月29日のGW初日は、緊急事態宣言中ではあるが少なくても羽田空港では日常が取り戻されたことを感じている。コロナ禍の旅行スタイルが確立されつつあることも体感することができた。

 今年のGWの国内線の出発ピークは4月29日(祝)と5月1日(土)、戻りのピークは5月5日(祝)となっている。

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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