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緊急事態宣言解除後の最初の週末、ANAでは1月~2月の週末と比べて3倍に。羽田空港は家族連れも目立つ

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
3月27日の午前8時過ぎのANA便が発着する羽田空港第2ターミナル(筆者撮影)

 緊急事態宣言が明けた最初の週末となった3月27日(土)の朝、羽田空港の国内線チェックインカウンターには春休みに入ったこともあり旅行客を中心に、今年に入って最も多くの利用者の姿が見られた。特に家族連れでスーツケースを持っている人が多い。

1月・2月の週末に比べて3倍の利用者に

ANAでは、27日・28日の2日間で合計約14万人の予約が入っているとのことだ。またJALグループ(以下JAL)でも27日の土曜日で約5万5000人、28日の日曜日は約5万7000人で合計約11万2000人の予約が入っている。ANAによると、1月~2月にかけての緊急事態宣言中の週末と比べて約3倍の利用者となっているとのことだ。またJALによると1週間前に比べると、1日あたり約1万人増えているとのことだ。

 ANAでみると、昨年9月の4連休(9月19日~22日)は1日あたり約7万2000人で、特に連休初日の9月19日は1日約8万7000人が利用した。また最もGo Toトラベルの利用が多かったと言われている11月の3連休(11月21日~23日)は1日平均で約8万9000人の利用があった。この週末(3月27日・28日)は、そこまでの水準には達していないが、年末年始(12月25日~1月3日)が1日あたり約6万2500人だったことや、1月の1日あたりの利用者平均が約2万人であったことを考えると回復傾向にあることは明らかだ。

JAL便が発着する羽田空港第1ターミナル北ウイングのチェックインカウンター(3月27日午前8時半頃、筆者撮影)
JAL便が発着する羽田空港第1ターミナル北ウイングのチェックインカウンター(3月27日午前8時半頃、筆者撮影)

3月に入ってから回復傾向が顕著に

  昨年4月・5月の1回目の緊急事態宣言中との大きな違いとしては、 昨年4月7日~5月25日までの約1ヶ月半の緊急事態宣言中の全ての期間において国内線利用者は90%以上減少し、特に5月においてはANAで前年比4.5%、JALで前年比7.6%まで下がった。ただ、今年1月の搭乗者数で見ると、ANAで前年比20.0%、JALで前年比22.9%となっており、1回目の緊急事態宣言中に比べて国内線利用者数は、2回目の緊急事態宣言中でも一定数の人の動きがあった。

 2回目の緊急事態宣言が発令された1月中は首都圏や近畿圏などで重症者の病床利用率が逼迫していたこともあり、 旅行を取りやめた人が多かった。2月に入って緊急事態宣言は延長されたが、病床使用率や感染者数も減少傾向となったことで、最初の緊急事態宣言の期限であった2月7日以降は、旅行を予約していた人を中心にキャンセルせずに予定通りに旅行に出かけた人も一定数おり、平日においてはビジネス出張を再開する企業も出始めていた。それでも前年比で2~3割前後の利用者に留まった模様だ。

 3月に入ってからは首都圏の1都3県の緊急事態宣言は再延長されていたが、日を追うごとに羽田空港のチェックインカウンターに人が多く見られるようになり、緊急事態宣言が解除された初日の3月22日(月)はANAで1日あたり約5.5万人、JALで1日あたり約4.5万人となった。筆者も3月24日(水)に羽田→福岡、25日(木)に福岡→羽田のANA便を利用したが往復共に9割以上の搭乗率となっており、今までになかった満席便が多く出るようになった。

 そして初めての週末となった27日は、ANAとJALの2社合わせて土日の2日間で約25万人が国内線を利用する。

筆者が利用した3月25日(木)の20時50分福岡発羽田行きのANA便搭乗光景。搭乗ゲート前には距離を取りながら長い列が出来ていた(3月25日福岡空港にて筆者撮影)
筆者が利用した3月25日(木)の20時50分福岡発羽田行きのANA便搭乗光景。搭乗ゲート前には距離を取りながら長い列が出来ていた(3月25日福岡空港にて筆者撮影)

ゴールデンウィークの予約が急激に上昇中

 航空会社や宿泊施設に取材をすると、緊急事態宣言が明けて以降、ゴールデンウィークの旅行予約が急激に入り始めているそうだ。すでに満室になっているホテルや国内線の便も出ている。料金についても上昇に転じているとのことだ。

 ANAは4月29日~5月5日のゴールデンウィーク期間中はコロナ前に策定した2020年度事業計画比と比べて87%の運航率になることを3月25日に発表した。JALでも4月29日・30日で73%の運航率、5月1日~5日で79%の運航率になる予定だ。

Go Toトラベルの全面再開は早くても6月以降に。今後の感染者数によっては更に後ろ倒しの可能性も

 3月26日に新型コロナウイルスの感染状況がレベル2以下である都道府県の県内旅行における自治体が実施する旅行キャンペーンに国が補助することを発表したが、都道府県を跨いだGo Toトラベルの全面再開は早くても6月以降になる公算が強まっている。

 しかしながら、引き続き海外旅行に出かけられない状況が続いていることもあり、感染者の推移を見ながら、Go Toトラベルの有無に関わらず国内旅行だけでも出かけられるうちに出かけたいという需要はある。

Go Toトラベルが再開していない状況でも旅行需要は回復傾向にある(3月27日午前8時過ぎ、羽田空港第2ターミナルのチェックインカウンター。筆者撮影)
Go Toトラベルが再開していない状況でも旅行需要は回復傾向にある(3月27日午前8時過ぎ、羽田空港第2ターミナルのチェックインカウンター。筆者撮影)

ただ、緊急事態宣言解除後、再び感染者の増加傾向が見られ、仮に東京都の1日あたりの感染者数が1000人を超えてくることになれば、ゴールデンウィークも含めた旅行のキャンセルが相次ぐ可能性が高い。 まだまだ先が見えない状況がしばらくは続くことになりそうだ。

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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