前代未聞、LCC就航初便が人を乗せずに貨物だけでバンコクへ。JALグループ「ZIPAIR」が6月就航

ZIPAIRのボーイング787-8型機(2019年12月18日、筆者撮影)

 LCC(格安航空会社)の就航初便が人を乗せない貨物便として運航するという世界でも聞いたことがない運用をJALグループが新たに設立した国際線中長距離LCC「ZIPAIR(ジップエア)」が行うことを5月21日に発表した。6月3日から成田~バンコク(スワンナプーム)線でスタートする。

関連記事:2020年就航の注目航空会社。日本初の中長距離国際線LCC「ZIPAIR」のシートから見る将来展望(2019年12月29日掲載)

旅客便としての運航目処は立たず

 新型コロナウイルスによる影響で、当初は5月14日に就航する予定だった成田~バンコク(スワンナプーム)線の初便を延期することを4月9日に発表していた。航空券の販売開始前だったことで利用者への影響はなかった。

 各国の入国制限によって海外との往来は難しい状況になっており、就航へ向けて準備が進められていた中で、国際線のみ運航する計画となっているZIPAIRの就航は、自由に海外へ渡航できる段階になるまでは難しいと思われていた。今もお客様を乗せる旅客便としての運航の目処は立っていない。

週4往復でバンコクへの貨物便を運航。1便で20トンを運べる

 そのような状況の中で、JALが100%出資である点、そして使用する機体が貨物コンテナが搭載可能なボーイング787型機であることから今回、お客様を乗せない貨物専用便として、JALのコードシェア便という形で6月3日から週4往復で運航を開始することになった。

 ZIPAIRによると、同社が2機保有するボーイング787-8型機の貨物搭載量は45トンとなっているが、飛行時間が長く、燃料の関係もあって実際に搭載できるのは20トンとなるとのことだ。旅客便の運航を開始する際には290席(ビジネスクラスに相当するZIP Full-Flat18席を含む)となる。

272席あるエコノミークラス「Standard」(2019年12月18日、筆者撮影。以下同じ)
272席あるエコノミークラス「Standard」(2019年12月18日、筆者撮影。以下同じ)
ビジネスクラスに相当する「ZIP Full-Flat」は18席で全席通路側アクセスのフルフラットシート
ビジネスクラスに相当する「ZIP Full-Flat」は18席で全席通路側アクセスのフルフラットシート

ZIPAIRにとっては初めての営業収入に

 LCCが貨物専用便として変更すること自体が前代未聞であるが、未曾有の状況の中で不足している航空貨物スペースの供給を補うべく、ZIPAIRはJALと協議した結果、貨物便として機体を有効活用するという判断に至った。JAL側で受託した貨物をZIPAIR機に載せるという運用となる。

 これまで1円の収入も入らなかったZIPAIRにとっては、限られた便数にはなるが初めて収入を得ることになる。4月1日時点の社員数は199名で、そのうちパイロットが30名、客室乗務員が110名となっており、訓練の大部分を終え、就航へ向けた最終準備に入っていた中での新型コロナウイルスの世界的蔓延という状況になったが、JALが受託した荷物を運ぶことで、運航における限界費用分の収益は見込めるとZIPAIRは判断したそうだ。もちろん会社自体の黒字化には時間を要することになるが、少しでも収入を得る意義は大きいだろう。

従来の事業計画でも貨物を搭載する予定だった

 世界的にも国際線中長距離LCCが貨物を受託することは決して珍しくはないが、LCCが貨物便として運航することになるが、ZIPAIRでは当初の事業計画の段階から「乗客+貨物」での収入を計画しており、お客様を迎えることができない状況の中で、想定外にはなるが、まずは貨物専用便として運航を開始することを決断した。

 ZIPAIRの西田真吾社長は「残念ながら現在の状況では旅客便としてお客さまをお迎えすることはかないませんが、世界各地で多くの方々が前向きに取り組んでいらっしゃるように、私たちなりに「今、私たちにできること」を考え、航空会社としての第一歩を貨物専用便として歩み始めることといたしました」とコメントを出した。

ZIPAIRの西田真吾社長
ZIPAIRの西田真吾社長

旅客便就航まで万全の準備を進める

 成田~バンコク線以外にも、7月から成田~ソウル(仁川)線にも就航する計画であるが、就航延期の可能性が高いほか、年内にも成田~ホノルル線の就航を計画しているが、まだ就航日の目処は見えていない。

 まずは早くお客様を乗せて就航できる日をZIPAIRは心待ちにしながら「旅客便就航まで全社員で万全の準備を進めていきたい」と西田社長はコメントしている。