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GW初日、羽田空港からの国内線出発便はわずか120便程度。直前キャンセルも多く、空港は閑散

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
GW初日、旅行自粛で閑散の羽田空港第2ターミナル(4月29日午前9時、筆者撮影)

 ゴールデンウィーク初日の4月29日朝、羽田空港国内線チェックインカウンターは閑散としていた。緊急事態宣言中の「ステイホーム週間」で各地では県をまたいだ移動を控えるように自治体の首長を中心に呼び掛けたことで、いつもは帰省や旅行などで大混雑となる連休初日も空港に人の姿が見られない。

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羽田から出発する国内線は123便、全便に空席あり

 各航空会社が発表した運休の情報および実際に羽田空港発の国内線全便についてホームページの空席状況から確認したところ、連休初日の4月29日に羽田空港を出発する便はわずか123便(片道ベース)しかない。

 航空会社別の内訳では、 ANA(全日本空輸)が28便、JAL(日本航空)が55便 、スカイマークが13便、 AIRDOが10便、スターフライヤーが10便、ソラシドエアが7便で合計123便となっている。

 普通席は運航する123便全てに空席があり、ANAやJALでは機体も通常より小型の機体で運航し、特にJALでは羽田空港発着便では普段では見られない、95人乗りのエンブラエル190型機を伊丹線の一部に投入しているが、それでも満席にはなっていない。

羽田空港では欠航便が多いことから、多くの飛行機が普段使わないスポットも含めて駐機している(4月29日午前9時、筆者撮影)
羽田空港では欠航便が多いことから、多くの飛行機が普段使わないスポットも含めて駐機している(4月29日午前9時、筆者撮影)

前年比で予約数は9割以上減っている

 国内線全体の数字となるが、ゴールデンウィーク期間中(4月29日~5月6日)、ANA では約85%、JALでは約6割強が運休となる。ゴールデンウィーク中の飛行機移動を多くの人が自粛したことにより、期間中の予約数は ANA が前年比94.5%減の6万9439人(4月28日現在) 、JALが前年比87.3%減の12万342人(4月22日現在)となっている。JALも23日以降のキャンセルも多く出ており、9割以上の減少になっている模様だ。

 これだけ多くの便が減便しているにもかかわらず、予約率もわずか30%程度しかなく、ほとんどの便がガラガラで出発することになる。

JAL便が出発する羽田空港第1ターミナルのチェックインエリアも閑散としていた(4月29日午前9時20分、筆者撮影)
JAL便が出発する羽田空港第1ターミナルのチェックインエリアも閑散としていた(4月29日午前9時20分、筆者撮影)

23日~28日にキャンセルした人は想定以上に多かった

 ここで興味深いのは、沖縄県の玉城デニー知事が沖縄にゴールデンウィーク期間中に6万人が来県するという数字を根拠に沖縄に来ることを控えてほしいという発言があった。実際には往復の場合は二人とカウントされたり、沖縄県内の石垣島や宮古島など那覇と離島を結ぶ便も含まれていたこと、更に直前のキャンセルも多かったことで4月28日に赤羽一嘉国土交通相は県外から沖縄への便の予約者数が約1万5000人になっていることを明らかにした。

 実際に直前のキャンセルも多く、 ANAが4月22日に発表したゴールデンウィーク期間中の予約数は13万2011人だったが、翌日の23日にゴールデンウィーク期間中の運休・減便を発表したことで、23日~28日にかけて帰省や旅行を取りやめたケースも多く、28日の時点では予約数が6万9439人まで減少した。運休便を予約していた人の一部は他の便へ振り替えたが、ANAでは約1週間で約47%の人がキャンセルした。

 安倍晋三首相や玉城デニー沖縄県知事などの呼びかけが一定の効果が出たのは間違いなく、 ANAの沖縄方面の予約数(往復利用は2人でカウント、沖縄県内路線も含む)を見てもこの1週間だけでも約半分(4月22日時点で3万104人→4月28日時点で1万6247人)に減っている。

ANAの出発案内版、多くの便で欠航になっているほか、チェックインエリアも半分に縮小している(4月29日午前9時10分、筆者撮影)
ANAの出発案内版、多くの便で欠航になっているほか、チェックインエリアも半分に縮小している(4月29日午前9時10分、筆者撮影)
JALの出発案内版も多くの便が欠航していることがわかる(4月29日午前9時20分、筆者撮影)
JALの出発案内版も多くの便が欠航していることがわかる(4月29日午前9時20分、筆者撮影)

伊丹便は8便、広島便は2便、岡山便は1便しかない

 4月29日に羽田空港を出発する便の方面別の便数を調べてみたが、10便以上の出発便があるのは、新千歳(16便)、福岡(15便)、那覇(10便)の3空港のみ。大阪・伊丹行きも8便しかなく、東海道・山陽新幹線との競合路線となる岡山線はわずか1便、広島線も2便しか飛ばない。四国路線は4空港全てANAとJALが1便ずつの2便で、九州路線も数便程度の運航しかない。地方路線においては、日によっては1便も飛ばない路線も出ている。

スカイマークも出発便は13便しかなく、カウンターには限られた利用者の姿しかなかった(4月29日午前9時25分、筆者撮影)
スカイマークも出発便は13便しかなく、カウンターには限られた利用者の姿しかなかった(4月29日午前9時25分、筆者撮影)

 4月29日の路線別の羽田空港を出発便数は以下の通りとなっている。運航便数は毎日異なり、4月29日に運航している便でもゴールデンウィーク期間中に1便も飛ばない日がある路線もあることから、最新の運航状況は各社のホームページなどで確認して欲しい。

 AIRDO、スターフライヤー、ソラシドエアはANAとのコードシェア便となっており、ANA便名での利用が可能となっている。

■幹線路線

(4月29日に羽田空港を出発する便)

那覇:10便(ANA:3便、JAL:5便、スカイマーク:2便)

新千歳:16便(ANA:2便、JAL:6便、スカイマーク:3便、AIRDO:5便)

福岡:15便(ANA:4便、JAL:6便、スカイマーク:4便、スターフライヤー:1便)

伊丹:8便(ANA:2便、JAL:6便)

関西:7便(ANA:1便、JAL:1便、スターフライヤー:5便)

神戸:3便(ANA:運航なし、スカイマーク:3便)

中部:3便(ANA:1便、JAL:2便)

■北海道路線の便数(新千歳以外)

(4月29日に羽田空港を出発する便)

稚内:運航なし(ANA:運航なし)

オホーツク紋別:1便(ANA:1便)

女満別:2便(JAL:1便、AIRDO:1便)

根室中標津:運航なし(ANA:運航なし)

釧路:2便(ANA:運航なし、JAL:1便、AIRDO:1便)

帯広:2便(JAL:1便、AIRDO:1便)

旭川:2便(JAL:1便、AIRDO:1便)

函館:2便(ANA:運航なし、JAL:1便、AIRDO:1便)

■東北路線の便数

(4月29日に羽田空港を出発する便)

青森:2便(JAL:2便)

三沢:1便(JAL:1便)

大館能代:運航なし(ANA:運航なし)

秋田:1便(ANA:運航なし、JAL:1便)

庄内:1便(ANA:1便)

山形:1便(JAL:1便)

■北陸・八丈島・近畿路線の便数(伊丹・関西・神戸以外)

(4月29日に羽田空港を出発する便)

富山:1便(ANA:1便)

小松:2便(ANA:1便、JAL:1便)

能登:1便(ANA:1便)

八丈島:1便(ANA:1便)

南紀白浜:1便(JAL:1便)

■中国路線の便数

(4月29日に羽田空港を出発する便)

岡山:1便(ANA:運航なし、JAL:1便)

広島:2便(ANA:1便、JAL:1便)

岩国:運航なし(ANA:運航なし)

山口宇部:4便(ANA:運航なし、JAL:1便、スターフライヤー:3便)

鳥取:1便(ANA:1便)

米子:1便(ANA:1便)

出雲:1便(JAL:1便)

萩・石見:1便(ANA:1便)

■四国路線の便数

(4月29日に羽田空港を出発する便)

徳島:2便(ANA:1便、JAL:1便)

高松:2便(ANA:1便、JAL:1便)

松山:2便(ANA:1便、JAL:1便)

高知:2便(ANA:1便、JAL:1便)

■九州・沖縄路線の便数(福岡、那覇以外)

(4月29日に羽田空港を出発する便)

北九州:2便(JAL:1便、スターフライヤー:1便)

佐賀:1便(ANA:1便)

大分:2便(ANA:運航なし、JAL:1便、ソラシドエア:1便)

熊本:3便(ANA:運航なし、JAL:2便、ソラシドエア:1便)

長崎:2便(ANA:運航なし、JAL:1便、スカイマーク※神戸経由:運航なし、ソラシドエア:1便)

宮崎:3便(ANA:運航なし、JAL:1便、ソラシドエア:2便)

鹿児島:5便(ANA:運航なし、JAL:2便、スカイマーク:1便、ソラシドエア:2便)

奄美大島:1便(JAL:1便)

宮古:運航なし(ANA:運航なし、JTA:運航なし)

石垣:運航なし(ANA:運航なし、JTA:運航なし)

ANAでは保安検査場の地上係員がフェイスシールドを着用してお客様に対応していた(4月29日午前9時10分、筆者撮影)
ANAでは保安検査場の地上係員がフェイスシールドを着用してお客様に対応していた(4月29日午前9時10分、筆者撮影)
グランドスタッフが装着するフェイスシールドは、カードケースを使うなど日用品を使ってANAのグランドスタッフが製作した(4月17日、羽田空港にて筆者撮影)
グランドスタッフが装着するフェイスシールドは、カードケースを使うなど日用品を使ってANAのグランドスタッフが製作した(4月17日、羽田空港にて筆者撮影)

 国内線については、ゴールデンウィーク期間中の「ステイホーム」がしっかり浸透しているようだ。加えて羽田空港では展望デッキも閉鎖されており、ゴールデンウィーク期間中、閑散とした状況が続く。

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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