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GWどうする?単身赴任者。新型コロナで赴任先に留まる人、テレワーク早期開始で早めに戻った人の心境

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
欠航便が続き閑散とする羽田空港第2ターミナル(4月16日、筆者撮影)

 新型コロナウイルスは、単身赴任者のゴールデンウィーク(GW)の一時帰宅にも大きな影響が出ている。安倍晋三首相は、4月22日に国民に対して、帰省や旅行を控えて欲しいと呼びかけると共に、ビデオ通話を使用した「オンライン帰省」をするなど外出自粛を呼びかけた。

 GW中の帰省や旅行などを自粛により、ANA(全日本空輸)やJAL(日本航空)などの国内線やJRの新幹線などではキャンセルが相次いでいる。特に4月16日に東京都や大阪府などの7都府県から日本全国に拡大して以降、キャンセルの流れがより顕著になった。

国内線、ANAは85%、JALは60%強が運休

 航空会社では、キャンセルが増えたことにより、GW中の国内線の大減便が決まり、ANAは4月29日~5月6日までの期間で当初運航予定便の85%が運休、JALも4月23日~30日までの期間で64%、5月1日~6日までの期間で62%が運休する。予約数も昨年比で約9割減となっており、帰省や旅行の自粛要請は確実に浸透している。

 特に懸念していた帰省においては、帰省先で感染拡大を防ぐべく、各自治体の首長が相次いで、帰省しないように呼びかけたことで、今週に入ってから飛行機や新幹線での移動を取りやめたケースも多く出ている。

4月17日時点でも既に多くの国内線が欠航し、羽田空港の出発案内板には「欠航」表示が目立っていた(4月17日午後、筆者撮影)
4月17日時点でも既に多くの国内線が欠航し、羽田空港の出発案内板には「欠航」表示が目立っていた(4月17日午後、筆者撮影)

早期テレワーク実施企業では3月中に自宅に移動完了

 しかしながら今、単身赴任者がGW中に自宅に戻るかどうかで揺れているケースが増えている。親元に帰省する場合とは異なり、自分の家に戻るという行動も自粛すべきなのか、それとも単身赴任先に留まるのかという問題だ。

 特にテレワークが可能な仕事の場合において、会社のテレワークに対する考え方次第で単身赴任者の状況が大きく異なっている。IT企業をはじめ、今回のコロナウイルス以前からテレワークの整備を続けてきた企業の中には、3月前半から完全テレワークに踏み切った企業もあった。

 九州から東京に単身赴任をしていた30代男性は、3月に入ってすぐ、完全テレワークになった直後に九州の自宅に戻り、現在も一度も東京に戻ることなく、自宅での仕事が続いており、思わぬ形で家族と過ごす時間が大きく増えているそうだ。会社の完全テレワークの早い決断に感謝していると話す。

旧来型の日本企業の多くでテレワーク対応が遅れた

 ただ、このように早い段階からの完全テレワークは珍しく、2月後半もしくは3月からテレワークを実施した企業でも、週1回もしくは数回は出勤するケースが多かったのが実情だ。そのため、テレワークであっても単身赴任先から離れることが難しく、特に旧来型の日本企業の多くでテレワーク導入が遅れた。

 7都府県に緊急事態宣言の発令が決定した4月7日以降にようやく完全テレワークに踏み切った企業も多くあったが、実際にはテレワークの整備が整っていない場合や経理や人事、財務など自宅での作業が難しい場合には、時差出勤や出勤日数を減らすなどの対応しかできずに、現在でも出勤を継続していることも珍しくない。通勤電車の混雑度は減少しているが、それでも座れずに密集した空間で通勤しているという声も多く聞かれる。

GW中も家に戻れない単身赴任者

 このような状況でまもなくGWを迎えるが、今の段階で赴任先に留まっている単身赴任者の多くは自宅に戻らないことを決断した人が多いようだ。東京都内に自宅があり、妻と子供一人は自宅で生活し、大阪に単身赴任中の40代男性も大阪に留まることを決めた一人だ。3月中旬までは2週間に1回のペースで週末には新幹線を使って大阪から東京に戻っていたが、3月後半に妻から「子供や近所に住む(妻の)両親のことを考えて、満員電車で通勤している以上、しばらくは大阪に留まって欲しい」と言われた。

 コロナウイルスが沈静化すればGWには帰省して4歳の子供と一緒に過ごすことができると考えていたが、4月7日に赴任先の大阪府と自宅のある東京都が共に緊急事態宣言の発令が決まった段階で妻からは「GWも自宅に戻ってこないように」と言われ、大阪に残るという選択肢しかなくなってしまった。

約3ヶ月前の1月27日の大阪・道頓堀。中国からの団体旅行が禁止された直後で外国人観光客が減り始めた頃だったが、まだ日本国内の自粛はなく、多くの人が歩いていた(1月27日、筆者撮影)
約3ヶ月前の1月27日の大阪・道頓堀。中国からの団体旅行が禁止された直後で外国人観光客が減り始めた頃だったが、まだ日本国内の自粛はなく、多くの人が歩いていた(1月27日、筆者撮影)

妻が夫の一時帰宅に不安を持つケースが多い

 上場企業のグループ会社の営業職であるこの男性は、ようやく会社が完全テレワークを決断した矢先の出来事で、この男性は会社のテレワーク決断が遅かったことで自宅に戻るタイミングを失ったと話す。現在は赴任先で借りている部屋の中でテレワークを続けている。

 勤務する会社では、4月7日までは時差出勤すら認められずに、通常通りに毎日出勤することが求められた。御堂筋線で千里中央駅から梅田まで通勤していたが、相変わらず混んでいる電車通勤であったことに、不特定多数と多く接する毎日に妻が不安を覚え、自宅に戻ることに対して拒絶反応を示したと男性は話す。

 子供や親と毎日接する妻にとっては、少しでも感染リスクを減らしたいという考えであり、特に東京や大阪などの感染経路が不明の感染者が多い大都市圏に赴任している家族が同様に考えているケースは多い。会社が早い段階で完全テレワークを決断して欲しかったと話す。

今の不安は、いつ自宅に帰れるのか

 飛行機は既に大幅減便になっているが、東京と大阪を結ぶ大動脈の東海道新幹線は臨時列車のみ運休で定期列車は通常通りの本数で運転されている。物理的には新幹線で移動することは可能であるが、この男性が勤務する会社では4月29日~5月6日までの9日間がGWの長期休暇となり、テレワーク勤務も休みになるが、そのまま大阪の部屋の中で過ごすことになり、子供とはテレビ電話で話す日々がしばらく続くことになる。今の不安は「どのタイミングで自宅に戻れるのか?」と話す。

 少なくても緊急事態宣言が解除されるまでは難しく、現在設定されている5月6日で解除される可能性が低く、先行きが見えないことの不安は大きい。加えて、解除された段階でも妻が帰宅OKを出さない限りは家に戻れず、しばらくはコロナウイルスの推移を見守るしかないと話した。

会社のテレワークに対する考え方で過ごし方が変わるGW

 このようにGW中に単身赴任先に残ることを決断した人がいるが、今もGWを前に単身赴任先から自宅に戻るか迷っている単身赴任者が多いのも事実だが、特別な事情がない限りは赴任先に留まることが賢明だろう。テレワーク方針の決断が早い会社と後手になった会社でGWの過ごし方が大きく変わるという皮肉な状況になっている。

 日本全国が外出自粛となる初めての大型連休がまもなくスタートする。

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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