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4月から燃油サーチャージが往復で最大2万円以上の大幅引き下げ。夏休みの航空券は4月1日以降の購入が得

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
羽田空港国際線ターミナル(筆者撮影)

 4月1日発券分(購入分)より燃油特別付加運賃(以下燃油サーチャージ)が大きく引き下げられる。ANA(全日本空輸)とJAL(日本航空)は相次いで4月1日からの燃油サーチャージの改定について発表した。

 特に欧米路線では、現行片道1万7500円が7000円に引き下げられることで、往復で2万1000円安くなる。またバンコクやシンガポール路線でも片道8500円が3000円に引き下げられるなど、半額~最大8割という燃油サーチャージの大幅引き下げというのは珍しい。

燃油サーチャージ、全路線で大幅値下げ

 燃油サーチャージは、搭乗日ではなく航空券を購入した日(発券日)をベースに各航空会社で規定されている燃油サーチャージ額を航空券の料金にプラスして徴収される。大人・小児・座席を使用する幼児、全て同額となっており、日系航空会社においてはマイルを使った特典航空券利用時にも徴収される。

■2019年4月・2018年5月発券分 ANA、JALの燃油サーチャージ額 ※片道あたり

・日本~北米(ハワイを除く)、ヨーロッパ、オセアニア

7000円(現行1万7500円)

・日本~ハワイ、インド、インドネシア

4000円(現行1万1000円)

・日本~タイ、シンガポール、マレーシア、ミャンマー(ANAのみ)、カンボジア(ANAのみ)

3000円(現行8500円)

・日本~ベトナム、フィリピン、グアム(JALのみ)

2000円(現行5000円)

・日本~中国、台湾

1500円(現行4500円)

・日本~韓国

300円(現行1500円)

ANAやJALでは2ヶ月毎の見直し。昨年10月・11月はガソリンも高かった

 ANAやJALの燃油サーチャージは2ヶ月毎に見直されており、4月・5月の燃油サーチャージ額は、昨年12月・今年1月の2ヶ月間の航空燃料(ジェット燃料)の市況となるシンガポールケロシン市況価格(USドル)の2ヶ月平均を円換算した円換算額で決定される。1バレルあたりの2ヶ月平均(昨年12月・今年1月)は71.88USドル(円換算7957円)で、昨年10月・11月の2ヶ月平均が89.37USドル(円換算1万105円)と比べて約2割下がっている。

 自動車を運転している人は、昨年10月にレギュラーガソリンが軒並み1リッターあたり150円を超えていたことを覚えている人もいるだろう。12月になって急激に下がり、その後は130円台で推移している。ガソリン価格のピークも10月・11月の2ヶ月であり、ジェット燃料も同様に10月・11月の2ヶ月間が高値となったことで、10月・11月の航空燃料市況が反映される現在(2月・3月発券分)、割高な水準となっているのだ。以下に主要路線の約3年間の燃油サーチャージ額の推移をまとめた。1年3ヶ月ぶりの安値水準となる。

■ANA、JALの欧米路線の燃油サーチャージ(片道)の推移

・2016年4月~2017年1月:徴収なし

・2017年2月・3月:3500円

・2017年4月~7月:7000円

・2017年8月~11月:3500円 

・2017年12月~2018年1月:7000円

・2018年2月~7月:1万500円

・2018年8月~2019年1月:1万4000円

・(現在)2019年2月・3月:1万7500円

・2019年4月・5月:7000円

■ANA、JALのシンガポール・バンコク路線の燃油サーチャージ(片道)の推移

・2016年4月~2017年1月:徴収なし

・2017年2月・3月:1500円

・2017年4月~7月:3000円

・2017年8月~11月:1500円 

・2017年12月~2018年1月:3000円

・2018年2月~7月:4500円

・2018年8月~2019年1月:6500円

・(現在)2019年2月・3月:8500円

・2019年4月・5月:3000円

4月以降に購入しないと恩恵を受けられない

 前半にも書いたが、引き下げられた燃油サーチャージの額が反映されるのは、4月1日発券分以降となる。残念ながら4月出発以降でも既に購入済みの場合は恩恵を受けられないが、4月以降に購入すれば恩恵を受けられる。

 難しいのはこれからゴールデンウィークを海外旅行を計画する人だ。天皇陛下の即位に伴う10連休になることから既に海外旅行の予約も絶好調であるが、10連休の真ん中に出発して戻る旅程(例えば4月30日出発、5月2日か3日戻りなど)のアジア方面は空いている便もある。それらの便を予約する場合においては早めに航空券を確保したいところだが、現在購入すると燃油サーチャージが高額となってしまう。迷うところである。

 ただ、LCC(格安航空会社)では一部を除いて燃油サーチャージを徴収していないので、購入時期による影響はない。

夏休みの航空券は4月1日に購入するのがベストの可能性が高い

 夏休みの航空券に関しては、4月1日の購入が狙い目となる。最近では予約と同時に購入しなければならないケースがほとんどであるが、航空会社や航空券の種類によっては予約を3月30日か31日に入れて、発券は4月1日でも可能な場合もある。その場合は航空券の購入(支払い)が4月になるので引き下げられた燃油サーチャージで購入でき、航空券の確保もしやすいというメリットがある。

 通常の燃油サーチャージの改定は高くても5000円程度の変動だったが、今回は片道あたり最大1万500円も引き下げられることで、いつも以上に燃油サーチャージを気にして航空券を選ぶのがいいだろう。

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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