Yahoo!ニュース

ハワイへの空旅を変える?ANA、少額追加で乗れるファミリー層への切り札「カウチシート」でJAL追撃へ

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
ANAが国内航空会社として初めて導入するカウチシート「ANAカウチ」(筆者撮影)

 ANA(全日本空輸)は、来年5月24日に成田~ホノルル線に投入する総2階建て飛行機エアバスA380型機の運航スケジュールを12月26日に発表し、併せて航空券の発売を年明け1月10日の15時から開始することを明らかにした。

今月13日にドイツで機体がお披露目された

 ANAが就航するエアバスA380は、成田~ホノルル線専用の機体として、ハワイのウミガメをイメージした特別塗装機「FLYING HONU」という愛称で、最終的に3機が導入される。12月13日にはドイツ・ハンブルクにあるエアバス社の工場で塗装を終えた1機目の機体がお披露目された。

12月13日にドイツ・ハンブルクにあるエアバス社の工場で塗装を終えたばかりのANAに納入されるA380型機「FLYING HONU」がお披露目された(筆者撮影)
12月13日にドイツ・ハンブルクにあるエアバス社の工場で塗装を終えたばかりのANAに納入されるA380型機「FLYING HONU」がお披露目された(筆者撮影)

JALを強く意識した、JALにはないカウチシートを導入

 今回、ANAのA380で注目されているのがエコノミークラスの追加オプションという形で利用できるカウチシート「ANA COUCHii(ANAカウチ)」の導入だ。カウチシートは、通常足下の部分のレッグレストを上げることによって、窓側席であれば3席、中央席であれば4席をベッドのように利用できるシートで、ハワイ路線で先行するJAL(日本航空)を強く意識したものだ。

 

 1階のエコノミークラス後方エリアに60席設定され、エコノミークラス運賃に追加料金を払う形での利用となる。このシートのメリットは、エコノミークラスでありながら、横になって快適に移動できるアイデアシートになっている。

関連記事:ANA、エアバスA380のホノルル線就航日が5月24日に。マイル特典利用と受け入れ体制強化で差別化へ(11月27日掲載)

画像
11月27日に都内で行われたイベントで女優の綾瀬はるかさんもANAカウチを体験した(筆者撮影)
11月27日に都内で行われたイベントで女優の綾瀬はるかさんもANAカウチを体験した(筆者撮影)

3人掛けシートを2人利用で+1万9000円

 ANAカウチは、3人掛けのシートと4人掛けのシートが設定されている。追加料金は片道・1組あたりで、来年5月24日~7月11日(ホノルル発は7月12日まで)はキャンペーン料金で利用できる。

 3人掛けシートでは大人・子供問わず3名利用だとローシーズン期間で+9000円(キャンペーン期間は+4500円)、2名利用だと+1万9000円(キャンペーン期間は+9500円)、1名利用だと+5万9000円の追加料金となる。

 4人掛けシートでは4名利用だと同じくローシーズン期間で+1万2000円(キャンペーン期間は+6000円)、3名利用だと+2万2000円(キャンペーン期間は+1万1000円)、2名利用だと+5万2000円となる。

4人掛けシートのANAカウチ(画像提供:ANA)
4人掛けシートのANAカウチ(画像提供:ANA)

ハワイ線のシェアはJALが約30%、ANAが約15%という現状

 今回、ANAカウチの追加料金がいくらになるのかが注目されていた。この追加料金次第によって、利用者は大きく左右されるが、想定外に安い追加料金が発表されたことは、ハワイ線の先駆者であるJALからシェアを奪う本気の意気込みを感じる。現状、日本~ハワイ路線のシェアはJALが約30%に対してANAが約15%に留まっているからだ。

ホノルル空港に駐機するJAL。JALはホノルルへ成田から1日4便、関西から2便、中部から1便を運航している(2017年12月、筆者撮影)
ホノルル空港に駐機するJAL。JALはホノルルへ成田から1日4便、関西から2便、中部から1便を運航している(2017年12月、筆者撮影)

カウチシートの先駆けであるニュージーランド航空に乗ってみた

 筆者は、日本発着国際線で唯一、既にカウチシートを導入しているニュージーランド航空の成田~オークランド線に今月搭乗する機会があった。搭乗するとすぐにカウチシートの利用方法について客室乗務員から説明があり、離陸してシートベルトサインが消灯した後にマットレス、掛け布団にもなる大型のブランケット、そして大型の枕がカウチシート利用者に提供された。

 実際に利用した感想としては、横幅は広くなるので、空席がある時に3席掛けを一人で利用するのとは比較にならないくらいの快適さがあり、マットレス、大型のブランケット、大型の枕の存在がより快適にしてくれた。ビジネスクラスと同等の快適度だった。

 ニュージーランド航空の日本~ニュージーランド線では、カウチシート「スカイカウチ」は3席掛けのシートのみの設定で、エコノミークラス運賃に1組あたり2名利用で片道4万円、1名利用で8万円の追加料金であったが、1名利用で8万円追加してもビジネスクラスよりは割安なので、機内食などにこだわりがなければ、カウチシートを利用する意味はあると感じた。2名利用で4万円追加も決して高くはないと思うなかで、今回のANAカウチの追加料金は破格と言えるだろう。

ニュージーランド航空のカウチシート「スカイカウチ」(今年12月、筆者撮影)
ニュージーランド航空のカウチシート「スカイカウチ」(今年12月、筆者撮影)

カウチシートの活用法を考える

 ANAによると、成田~ホノルル線のローシーズン期間の最安値運賃は、エコノミークラス往復5万5000円(小児4万1250円)、プレミアムエコノミー往復11万円(小児8万2500円)、ビジネスクラス往復20万円(小児15万円)、ファーストクラス往復35万円を予定(空港税や燃油サーチャージなどの諸経費は含まず)。カウチシートは、エコノミークラス運賃に追加する形での利用となるが、人数や時期によっても異なるが、上位クラスよりは割安で利用できるケースがほとんどだ。

 筆者がニュージーランド航空で感じたことは、大人1名・子供1名で3席掛けのカウチシートを利用している人が多く、また大人1名で利用しているケースもあった。ANAが導入するANAカウチはどんな形で利用するのがベストなのかを考えてみた。来年5月24日~7月11日(ホノルル発は7月12日まで)はキャンペーン料金となるが、逆にハイシーズン(夏休みや年末年始など)は追加料金が上がる。片道だけカウチにすることも可能。

女性でも大人2人で共に横になるのは厳しい(筆者撮影)
女性でも大人2人で共に横になるのは厳しい(筆者撮影)

ローシーズン期間の最安値運賃で購入できる場合は、人数分のエコノミークラス往復5万5000円(小児4万1250円)に下記のカウチ料金を加算する計算となる。

■ケース1

大人2人、子供2人(2歳~12歳)の場合

3席掛けのカウチを2列分購入し、カウチシートにして親子で横になって寝ることで快適に移動できるだろう。両親は横にならず、小さな子供2人だけ横になるのであれば、4席掛けのカウチを1列分購入する方法もある。その場合は更に安くなる。

追加料金:1万9000円(片道)×2(往復)×2列分=7万6000円(キャンペーン期間は3万8000円)

一人あたりの追加料金(往復):1万9000円(キャンペーン期間は9500円)

■ケース2

大人2人、子供1人(2歳~12歳)の場合

4席掛けのカウチを購入し、カウチシートにして両親のどちらか+子供は3席を使って横になって、1席はカウチにせずに通常のシートポジションで利用する。大人2人が横になるのは厳しいが、大人1人と子供は横になって移動できる。

追加料金:2万2000円(片道)×2(往復)=4万4000円(キャンペーン期間は2万2000円)

一人あたりの追加料金(往復):1万4667円(キャンペーン期間は7334円)

■ケース3

大人2人の場合(その1)

夫婦やカップルで4席掛けのカウチを購入し、二人が同時に横になるのは難しいが、3席分をカウチにして交互に横になる方法もある。

追加料金:5万2000円(片道)×2(往復)=10万4000円(キャンペーン期間も同額)

一人あたりの追加料金(往復):5万2000円

■ケース4

大人2人の場合(その2)

夫婦やカップルで3席掛けのカウチを購入することで、カウチ状態にしなくても2人で3席分が使えることが予約段階で確定できるメリットがある。2人利用であれば、カウチシートにして、あぐらをかいた状態での移動も可能だ。

追加料金:1万9000円(片道)×2(往復)=3万8000円(キャンペーン期間は1万9000円)

一人あたりの追加料金(往復):1万9000円(キャンペーン期間は9500円)

■ケース5

大人1人の場合

飛行機では寝ることが最優先で、ビジネスクラスの機内サービスは不要であれば、3席掛けのカウチを購入し、横になって移動することができる。基本的に1名利用でもビジネスクラスよりは割安になる。またナイトフライトとなる往路だけカウチのオプションを付ける方法もある。

追加料金:5万9000円(片道)×2(往復)=11万8000円(キャンペーン期間も同額)

一人あたりの追加料金(往復):11万8000円

カウチ利用者には寝具も提供される(筆者撮影)
カウチ利用者には寝具も提供される(筆者撮影)

子連れの旅行でカウチ指定が増える可能性が高い

 今回のカウチシートの導入により、子連れ海外旅行においてカウチを指定するケースが増える可能性は高いだろう。子供にとっても親にとっても往路は7時間20分、復路は8時間30分のフライト時間は長いが、割安な価格で子供が横になって移動できることは、親にとっても不安が和らぐことになるだろう。

 また、夫婦やカップルでの利用においても、隣席がブロックできることで、隣の人を気にせずに機内の時間を過ごせることから、ハネムーンなどで利用するケースもあるだろう。キャンペーンを機に、従来JALやハワイアン航空などを利用していたファミリー層や夫婦・カップルがANAに移る可能性を秘める強力な武器であることは間違いない。

静かな空間を強く希望する人には向かない可能性も

 少し気になる点としては、時期によってはカウチシートに他のエリア以上に子連れ利用者が集中する可能性があり、静かな空間を強く希望している利用者には向かないだろう。その場合には、料金はアップするがプレミアムエコノミーやビジネスクラスを選ぶのが賢明だろう。

 欲をいえば、カウチシートのエリアを機体前方と後方に分けて、1階の機体前方はエアアジアXなどでは既に採用されている子供同伴での利用ができない「クワイエットゾーン」を設定して欲しかった。特に成田発はナイトフライトになることから、有料であっても一定の需要はあるだろう。

 A380型機はゲームチェンジャーになるべく、ANAのハワイ戦略がいよいよ本格的に始動する。

機体にはウミガメが描かれているなど、とにかく目立つ機体だ(筆者撮影)
機体にはウミガメが描かれているなど、とにかく目立つ機体だ(筆者撮影)

A380型機運航予定便(成田~ホノルル)

■2019年5月24日~6月30日

NH184便 成田20時20分発 ホノルル8時40分着(火・金・日はエアバスA380で運航。その他の日はボーイング787-9型機)

NH183便 ホノルル11時30分発 成田15時00分着(翌日)(火・金・日はエアバスA380で運航。その他の日はボーイング787-9型機)

■2019年7月1日~10月26日

NH184便 成田20時20分発 ホノルル8時40分着 毎日エアバス380で運航

NH182便 成田21時35分発 ホノルル10時10分着(原則火・金・日はエアバスA380で運航。その他の日はボーイング787-9型機)

NH183便 ホノルル11時30分発 成田15時00分着(翌日) 毎日エアバス380で運航

NH181便 ホノルル12時45分発 成田16時00分着(翌日) (原則火・金・日はエアバスA380で運航。その他の日はボーイング787-9型機)

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

鳥海高太朗の最近の記事