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羽生結弦選手が所属するANA社員に金メダル報告「失敗の裏付けがあって、当たり前のような成功を掴める」

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
ANAの社員に囲まれて金メダルを報告する羽生結弦選手(筆者撮影)

 平昌オリンピックのフィギュアスケート男子シングルスで、2大会連続の金メダルを獲得した羽生結弦選手が所属先であるANA(全日本空輸)の本社で行われた「金メダル獲得報告会」に出席し、ANA社員に金メダル獲得を報告した。

「成功することって、1回挑戦したから出来るわけではなくて、失敗の裏付けがあって、当たり前のような成功を掴み取ることがどれだけ難しいか」

 羽生選手は挨拶の中で「こうやって、金メダル、一番重いものを持って帰れて、本当によかったと思います。(金メダルを)獲ってきたんだなという実感がここにきて更に感じています。成功することって、1回挑戦したから出来るわけではなくて、失敗があって裏付けがあって、その当たり前のような成功を掴み取ることが本当にどれだけ難しいかということをここに帰ってきて感じています。飛行機って僕たちの乗っている時、普通に離陸して普通に着陸して、それが当たり前ですけど、そういった当たり前の成功の中には、沢山の方々がその当たり前のために働いていて、その当たり前をサポートしてて、そういった当たり前の成功の為に尽力してくださっている方々がいる、そういう会社の人間として成功を持って来れたことは喜ばしいことです。こういう会社にサポートしていただいて幸せです」とANA社員の前で話した。

金メダルの報告をする羽生結弦選手
金メダルの報告をする羽生結弦選手
挨拶の間も終始、笑顔だった
挨拶の間も終始、笑顔だった

ANAは2013年7月に当時18歳の羽生選手と所属契約を結んだ

 羽生選手とANAが所属契約を締結したのは2013年7月1日。新横浜プリンスホテルで行われた所属契約を発表する記者会見で羽生選手は「ANAと契約を結べることを本当に嬉しく思っております。ソチ五輪への道は遠くて険しいものだと思いますが、しっかり自分自身を持ちながら、ANAのサポートを受けながら頑張っていきたいと思っております」と抱負を述べた。これが今から4年8ヶ月前で、羽生選手が18歳の時であった。そして、その7ヶ月後に行われた2014年のソチオリンピックで見事金メダルを獲得し、今回の平昌オリンピックでも連続の金メダルとなった。

2013年7月1日にANAと所属契約を結んだ。当時は18歳の羽生結弦選手
2013年7月1日にANAと所属契約を結んだ。当時は18歳の羽生結弦選手

 今回の平昌オリンピックでは、ケガの影響もあり、拠点先のカナダ・トロントから直接韓国入りをしたことから、オリンピック前の応援イベントはなかった。4年前のソチオリンピックの代表に決まった直後のイベントでは、ANAグループ社員の応援メッセージが書かれた横断幕が手渡され、羽生選手はフィギュアスケートのポーズを披露するなど、いつも笑顔を絶やさずに気配りも忘れない羽生選手の姿があった。シーズンオフに所属先の会社のイベントで登壇する際にも同様だった。

2013年12月のソチオリンピックの代表に決まった直後のイベントではポーズも披露した
2013年12月のソチオリンピックの代表に決まった直後のイベントではポーズも披露した
ソチオリンピックの際にもANA社員が手作りの横断幕でオリンピックに送り出した
ソチオリンピックの際にもANA社員が手作りの横断幕でオリンピックに送り出した
2014年4月のANA新制服発表会では飛行機のドアから登場
2014年4月のANA新制服発表会では飛行機のドアから登場
ANAの新制服発表会での羽生結弦選手(2014年4月撮影)
ANAの新制服発表会での羽生結弦選手(2014年4月撮影)

 ANAが羽生選手と契約した理由について当時、「スケ-ト技術だけではなく、そのひたむきに努力する姿勢が好感を得ている選手です。その姿勢は、『努力と挑戦』を掲げるANAの行動指針と合致した」ことを挙げていた。

 ひたむきに努力する姿勢は日本国民の多くがそう思っているが、筆者もイベントやソチオリンピックの金メダル報告会などで羽生選手が参加したイベントの取材をしている時も、いつも低姿勢で、ソチオリンピックの金メダル報告会のイベント終了後も参加したANA社員に深々と挨拶して感謝の気持ちを述べた姿が印象的であった。今回の平昌オリンピックの金メダル報告会でも同様に報告会の最後には挨拶していた。

金メダル報告会に参加のANA社員との記念撮影
金メダル報告会に参加のANA社員との記念撮影

所属選手として羽生選手の輸送協力などでサポート

 ANAグループにとって羽生選手はどんな存在であるのかANAに話を聞くと、「大きな目標に向かって、日々の鍛錬や努力を積み重ね、限界を超えて挑戦を続ける姿は、ANA グループ全社員の勇気の源です。我々も、羽生選手のように努力と挑戦を続け、羽生選手のように世界の方々から愛される存在になりたいと思っています」とのことで社員にも多くの刺激を与えているようだ。ANAは、羽生選手の輸送協力をはじめ、年に1度夏の公開練習のサポートを行っているなど活動を全面的にバックアップしている。

ANAホールディングス片野坂真哉社長(写真左から2番目)、ANA平子裕志社長(写真右から2番目)も羽生結弦選手を祝福
ANAホールディングス片野坂真哉社長(写真左から2番目)、ANA平子裕志社長(写真右から2番目)も羽生結弦選手を祝福

 ANA社員にとっても今日の金メダル報告会は特別な1日であったようだ。

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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