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ANA、国内線機内Wi-Fiを来年4月から無料。2019年下期から国内線にもシートモニターを本格設置

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
ANAは国内線にもシートモニターを本格導入する(画像はエアバスA321)筆者撮影

 ANA(全日本空輸)は、2018年4月1日から国内線の機内Wi-Fiを無料化することを発表した。既にJAL(日本航空)は無料キャンペーンを経て、今年9月から完全無料化されており、ANAも追随することになった。ANAの多頻度利用者であるダイヤモンド会員・プラチナ会員については1月10日から先行して無料化する。 

エアバスA321型機、ボーイング787-9型機、777-300型機では全機でWi-Fiが利用可能に

 現状、有料での利用となっているが既に70機で「ANA Wi-Fi Service」が利用可能となっている。2018年1月時点ではエアバスA321型機、ボーイング787-9型機、777-300型機においては国内線仕様の全機で利用できるほか、ボーイング787-8型機、777-200型機、767-300型機、737-800型機の一部機材でも利用できる。

 搭乗する便でWi-Fiが利用できるかどうかについては、1月中にも搭乗日の午前0時にホームページ上で確認できるようになる予定だ。ANAでは2018年度末までには国内線最大規模の約100機での利用が可能になる予定としており、JAL同様にANAでも多くの便でLINEやメールなどの送受信のほか、ホームページ閲覧も無料で出来るようになる。

機体上部にあるWi-Fiサービス用のアンテナ。Wi-Fiサービス対象機にはステッカーが貼られている
機体上部にあるWi-Fiサービス用のアンテナ。Wi-Fiサービス対象機にはステッカーが貼られている
「ANA Wi-Fi Service」のトップ画面(2017年7月撮影)
「ANA Wi-Fi Service」のトップ画面(2017年7月撮影)

「ANA SKY LIVE TV」はリアルタイムでニュースが視聴できる

 4月から機内Wi-Fiが無料化されることになったが、既に「ANA Wi-Fi Service」の対象機材においてビジネスパーソンを中心に評価が高いのが「ANA SKY LIVE TV」。利用者自身のスマートフォンやタブレット経由で機内Wi-Fiに接続することで、スカパーで放送されている「日テレNEWS24」や「CNNj」などを衛星を経由し、機内Wi-Fiエンターテイメントを活用することでリアルタイム視聴ができる。 現状でも無料のサービスであり、最新ニュースを機内でチェックできるのは何かと重宝する。また一部便においては飛行中に「日テレNEWS24」を機内の大型スクリーンで放映していることもある。

 更にリアルタイムで観られる「日テレジータス」では、巨人戦ホームゲームの時間に飛行していれば機内での野球観戦が可能だ。海外ではアメリカのジェットブルー航空が「DIRECTV」をリアルタイム視聴できる同様のサービスを行っている。

「ANA SKY LIVE TV」のサービス開始時のチャンネル選択画面(2016年1月)
「ANA SKY LIVE TV」のサービス開始時のチャンネル選択画面(2016年1月)

国内線にもシートテレビを装着する

 「ANA Wi-Fi Service」の進化はこれだけではなかった。今回、ANAが発表した中で衝撃的だったのが、国内線にも2019年度下期以降にボーイング777型機・787型機にシートモニター、シート電源、USBポートを設置することを表明したことだ。欧米の航空会社では短距離路線を中心にシートテレビをなくし、お客様自身のスマートフォンやタブレットとWi-Fiを組み合わせることで機内エンターテイメントを楽しむ流れにある中で、ANAは国内線にもシートモニターを設置することを決断した。

 今回のシートモニターの装着は、Wi-Fiサービスの進化系と言っていいだろう。スマートフォンやタブレットがなくてもタッチパネルに対応したシートモニターでの簡単な操作で「ANA SKY LIVE TV」をリアルタイムで視聴でき、加えてシートモニターでは100以上の人気ドラマやバラエティ、アニメなどのビデオやオーディオのコンテンツも楽しめる。

 筆者もこれらのコンテンツを利用しているが、自分のデバイスを使う場合には一旦、ANA Wi-Fiサービスの電波をキャッチしてからの利用になることから、少しばかり時間を要する。だが、シートモニターであれば自動的に接続されているので、すぐに機内エンターテイメントを楽しめることはもちろん、シニア層や小さなお子様でも気軽に使ってもらえることになる。

エアバスA321neoでは先行して全座席にシートモニターが装着されている
エアバスA321neoでは先行して全座席にシートモニターが装着されている

他社との差別化にも

 既に今年9月にANA国内線新仕様機として導入したエアバスA321neo型機(現在2機)に先行してシートモニターを全席に完備した。利用者からの評価も上々だそうだ。同機は2018年度末までに11機体制となる。12月においては、人気ドラマ「逃げるが恥だが役には立つ」(TBS)や「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日)などの再放送も機内で楽しめる。

 短ければ1時間未満、長くても3時間程度の国内線フライトでは、国際線のような映画が中心ではなく、1時間未満のビデオやオーディオプログラム、そしてリアルタイムでのニュース視聴が中心のコンテンツとなる。1時間でも楽しめるコンテンツの充実は、無料Wi-Fiも含めて国内線機内での過ごし方が大きく変え、フルサービスキャリアとして他社との差別化にもなる。シートモニターの導入は、今後の短距離路線のサービスの在り方に一石を投じたことだけは間違いないだろう。

今年9月から国内線専用機として運航を開始した全席シートモニター装着のエアバスA321neo
今年9月から国内線専用機として運航を開始した全席シートモニター装着のエアバスA321neo
航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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