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飛行機が道路を横切った。セントレアに来年夏オープン「FLIGHT OF DREAMS」に飛行機を搬入

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
飛行機が道路を横切るという珍しい光景(筆者関係者撮影)

 日本で初めて、飛行機が道路を横切った。12月17日に中部国際空港(セントレア)でボーイング787の飛行試験初号機(ZA001)が空港エリア内に来年夏にオープン予定の新複合商業施設「FLIGHT OF DREAMS」の建物内に搬入するイベントが開催された。

 航空会社には引き渡さずにボーイング社自身で所有・保管していた記念すべきボーイング787の飛行試験初号機は、787型機の第2の故郷と言われる中部国際空港に2015年に寄贈された。第2の故郷と呼ばれるのは、ボーイング787の部品の約35%は日本国内、その多くが中部地域で製造されているからであり、現在もスバル、三菱重工業、川崎重工業などで中央翼、主翼、胴体などを製造し、アメリカ国内の最終組立工場に輸送されている。

航空ファンが見守る中で飛行機が道路を横切った

 今回、ボーイング社より寄贈されたボーイング787の飛行試験初号機(ZA001)の屋内展示をメインに、デジタルを最大限駆使した体験型コンテンツ空間を提供する施設「FLIGHT OF DREAMS」を建設することになった。その為、これまで駐機していた屋外のエリアから900メートル離れた「FLIGHT OF DREAMS」の建物内へ移動させるのにあたり、平面の駐車場エリアと公道を走行しなければならず、道路を一時的に通行止めにして公道を横切ることになった。せっかくの珍しい機会ということで、中部国際空港の運営会社を中心に、航空ファンも楽しめるように休日の昼間に移動させるイベントを企画した。

飛行機が搬入する直前の「FLIGHT OF DREAMS」の建物
飛行機が搬入する直前の「FLIGHT OF DREAMS」の建物

 約3500人を定員とした観覧スペース(入場無料)は先着順で募集が行われたが申込初日で枠が埋まるほどの人気となった。午前11時半から機体の移動が開始された。既に自力で走行することができないことから、牽引車(トーイングカー)に引っ張られての移動となった。牽引作業はANA中部空港株式会社が担当し、時速3~4キロというゆっくりのスピードで動き出した。この日はボーイング787の部品などを運ぶボーイング社の大型貨物飛行機「ドリームリフター」も駐機しており、訪れたファンにとっては大きなサプライズとなった。

ボーイング787の部品を運ぶボーイング社の大型貨物飛行機「ドリームリフター」との2ショットが実現
ボーイング787の部品を運ぶボーイング社の大型貨物飛行機「ドリームリフター」との2ショットが実現

時速3~4キロの速度で建物内にスポットイン

 その後、駐車場エリアに一旦駐機され、イベント参加者が自由に機体の間近で記念撮影ができる時間が設けられるなど参加者にとっては至福の時間となったようだ。そして、この日のメインイベントである機体が無事に道路を横断した。時速3~4キロという歩くよりも遅いスピードで道路を無事に横切り、建物内の所定の場所に14時10分頃にスポットインをして飛行機の大移動は終わった。特に機体の両翼と建物の間のスペースは約70センチしかなく、数センチ単位の作業が求められ、作業は慎重に進められていたが、牽引のプロはバックすることなく円滑に飛行機を移動させた。

制限エリアからまずは駐車場エリアへ移動
制限エリアからまずは駐車場エリアへ移動

 

イベント参加者は駐車場エリアに駐機した機体に近づいて撮影することができた
イベント参加者は駐車場エリアに駐機した機体に近づいて撮影することができた
建物内にゆっくりなスピードで搬入されるボーイング787型機
建物内にゆっくりなスピードで搬入されるボーイング787型機
建物内の所定の場所にスポットインした
建物内の所定の場所にスポットインした

 牽引作業という大役を終えたANA中部空港の松永悟さんは「数センチ単位での作業で風も強かったので、風の影響を考慮しての作業となったが、100点満点」と話した。風も強くて寒かったが、機体が建物内に入るまで多くの人に見守られながらのイベントであったが、参加した人からは楽しかったという声が多く聞かれた。

牽引を担当したANA中部空港の松永悟さん
牽引を担当したANA中部空港の松永悟さん

来年8月のオープンを目指す

 「FLIGHT OF DREAMS」は、地上4階で延床面積は約1万1000平方メートルを誇り、1階が「展示エリア」、2階と3階が「商業エリア」となる。空港を運営する中部国際空港株式会社の友添雅直社長は「来年2月には外壁が完成し、4月頃には内装を完成させて、8月頃には皆様に中に入っていただいてバーチャルな体験、リアルなボーイング787を観ていただきたい」と話した。

中部国際空港株式会社の友添雅直社長
中部国際空港株式会社の友添雅直社長

「チームラボ」が体験型コンテンツの空間プロデュースを担当

 展示エリアにおいては今までにない演出となる。ボーイング787の飛行試験初号機を中心とした屋内展示では、東京大学発のベンチャー企業のウルトラテクノロジスト集団「チームラボ」が体験型コンテンツの空間プロデュースを担当する。「超体感演出」という新しい見せ方で、実機と空間全体を使った光と音を使ったプロジェクションマッピングを通じ、まるで飛行機が飛んでいるかのように感じることができる「超体感演出(仮称)」や来場者がクレヨンで描いた飛行機をスキャンしてドーム空間内の空を飛び回る「お絵かき飛行機」、紙飛行機を実際に折って光のゲート空間に飛ばした飛距離によって光のゲートの音や色が変わる「紙飛行機を飛ばす(仮称)」などのアトラクションが計画されている。

展示エリアイメージ(画像提供:中部国際空港)
展示エリアイメージ(画像提供:中部国際空港)
超体感演出(仮)のイメージ(提供:中部国際空港)
超体感演出(仮)のイメージ(提供:中部国際空港)

 また、商業エリアではボーイングの創業の地である「シアトル」の街並みをイメージし、フードコートなどを開設する予定であるなど、今までにない空港における新複合施設となる。

名古屋の新しい観光スポットしても期待

 今年は、レゴランドジャパン(名古屋市・金城ふ頭)、MRJミュージアム(豊山町)など愛知県では相次いで新しいスポットがオープンしたが、来年は「FLIGHT OF DREAMS」が注目スポットになる可能性が高い。

 加えて、セントレアの空港島には新たに2019年度上期にLCCターミナル、2019年秋には約6万平方メートルの広さの展示場「愛知県国際展示場」がオープンする予定となっている。またホテルの新設・増築ラッシュも進んでいるなど、2020年には日本国内で最も空港エリア内施設が充実する空港になることは間違いないだろう。観光スポットが少ない名古屋にとっては、リニア・鉄道館(名古屋市・金城ふ頭)、国産リージョナルジェット「MRJ」の最終組み立て工場が見学できるMRJミュージアムと共に交通系アミューズメント施設で観光客を誘致し、名古屋全体の活性化にも期待したい。

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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