JAL、マッハ2.2で飛ぶアメリカの航空ベンチャーに資金提供。実現すればアメリカ西海岸まで5時間半に

コンコルド以来の超音速旅客機の開発を進めている(画像提供 BOOM社)

 JAL(日本航空)は、12月5日にアメリカ・デンバーを拠点とする航空ベンチャー企業であるBOOM社(BOOM TECHNOLOGY)に対して1000万ドル(約11億円)の資金提供を含めたパートナーシップ関係の締結を発表した。BOOM社は現在、コンコルド以来の超音速旅客機の開発に取り組んでいる。

コンコルド並みのマッハ2.2を計画中

 BOOM社が現在開発中の飛行機は「マッハ2.2(時速2335キロ)」の巡航速度での運航を計画しているが、コンコルドとほぼ変わらない速度となる。ちなみに現在飛行している大型機の多くは時速800~900キロとなっている。開発中の飛行機の航続距離は8334キロ(約5210マイル)で、全席ビジネスクラスを想定し、45~55席程度の座席数を予定している。2003年10月に運航を終了したコンコルドが100席だったことを考えると約半分の座席数となる。

サンフランシスコへ5時間半、シンガポールへ3時間

 JALは、パートナーシップとして資金提供することで20機の将来における優先発注権を得る。もし就航が実現した時のシミュレーションをしてみる。航続距離で計算してみると、現行のJAL日本発着国際線路線ではアジア・オセアニア・ハワイに加えて、北米ではサンフランシスコとバンクーバー、ヨーロッパ方面ではモスクワまで飛べる。残念ながら現在の計画ではヨーロッパ主要都市やアメリカ東海岸までは届かないのだが、届く路線においては現行の約半分の時間で目的地に到着できることを想定している。

 例えば、東京~サンフランシスコ間(5130マイル)は片道5時間30分(現行9時間15分)、東京~シンガポール間(3312マイル)は片道3時間(現行7時間40分)を予定。この計算で行くと人気のハワイへも片道3時間半~4時間程度で行くことが可能となる。

 コンコルドが運航されていた際には、ニューヨークからロンドン(ブリティッシュ・エアウェイズ)とパリ(エールフランス航空)まで約3時間半で結んでいた。試験飛行もまだこれからで実際に就航できるかも未知数である段階である為、JALでも仮に納入された場合において、どの路線に投入するかの議論には現時点では至っていない。

陸地の上空での超音速飛行禁止など課題も多い

 現状、アメリカをはじめとして、多くの国では陸地の上空においての超音速飛行が禁止されていることもあり、基本的には洋上飛行を中心とした路線に投入されることになる。そうなると、ビジネス利用が見込めてグローバル企業のアジアの拠点が多く集まるシンガポール線、また北米ではサンフランシスコ線あたりに飛ぶ可能性が十分に考えられる。ヨーロッパへはロシア上空を飛行することを考えると、クリアしなければならない点も多い。また、実現性は低いと思うが、50席前後の飛行機であることからハワイへ飛ばしても面白いだろう。片道4時間前後であれば富裕層を中心に「土日でハワイへ行ってくる!」なんてことも十分に可能だ。

 JALは今回の出資について「技術の進歩により、安全で性能が良く、経済性のある機体の実現に挑戦するベンチャーが出現してきた中、「移動時間短縮」という価値の創造をJALとしてもその可能性を追求したいと考えた。また、超音速旅客機の実現に向け、開発段階から深く連携していくために出資を決めた」と話す。

実用化へ向けてのスケジュールは

 BOOM社は、燃費効率においてはコンコルドよりも優れ、航空運賃もビジネスクラス並みで提供できる機体の製造を目指している。だが50席規模の航空機ということを考えると、現実的にはファーストクラスに近い運賃でないと収益を出すのは難しいだろう。少なくてもビジネスクラス運賃以上になる公算が大きい。

 同社の計画では、2018年度中にデモ機の飛行を開始し、2020年度には実機での飛行試験、そして早ければ2023年にも就航を予定している。しかし、この10年間を見ても、エアバスA380、ボーイング787も当初予定よりは大幅に初号機の納入が遅れた。国内でも純国産リージョナルジェットの「MRJ」(三菱航空機)の納入が当初予定より大きく遅れているなど、後ろ倒しになる可能性は十分に考えられる。安全性の基準に適合することを国が証明する型式証明の取得が当面の目標になるだろう。

 しかし航空業界においては、超音速機の再来は夢のある話であることは間違いない。実際に商業運航されることになれば、日本だけでなく、世界中で大きなブームになるだろう。JALが約11億円の投資を決めたということ自体、期待の表れでもあるのだろう。飛行機製造のプロフェッショナルを集めている中で就航が実現できるのか、今後の開発計画の進捗状況に注視していきたい。