ツイッター上で拡散した「#東京五輪は中止します」と「#東京五輪の開催を支持します」を比較してみた

燃える五輪(提供:アフロ)

新型コロナの影響で東京オリンピックの開催については議論が尽きない状況です.世論調査を見る限り開催に反対の人の方が多いわけですが,ツイッター上では意見が分断している様子が見て取れます.

データを見る限りでは,基本的には政権不支持派(おおざっぱにはリベラル系)がオリンピック開催を強く反対しており,政権支持派(おおざっぱに保守系)がオリンピック開催に賛成しているというのがツイッター上での状況のようです.

今回は,オリンピック反対派が利用しているハッシュタグ「#東京五輪は中止します」とオリンピック開催支持派の「#東京五輪の開催を支持します」を比較して,どの程度のツイートがあるのかを見てみましょう.

「#東京五輪は中止します」と「#東京五輪の開催を支持します」それぞれについて,5月8日~16日のデータを収集しました.

ツイート数分析

「#東京五輪は中止します」については,85,115ツイートが存在し,そのうちリツイートが65,207ありました.ツイートに参加したアカウントは27,520です.

「#東京五輪の開催を支持します」については,64,526ツイートが存在し,そのうちリツイートが52,659ありました.ツイートに参加したアカウントは23,060です.

「#東京五輪は中止します」の方が若干多くツイートされていたようですが,ほぼ同じくらいといってよいのではないでしょうか.大規模炎上研究者的には「炎上というにはまだまだ小さいな」という感じです.

ツイート数の比較(著者作成)
ツイート数の比較(著者作成)

ツイートの時間変化

また,ツイートの時間変化を見ると下図のようになりました.

ツイートの時間変化(著者作成)
ツイートの時間変化(著者作成)

これを見ると,どちらのハッシュタグも爆発的に拡散する時期があることが見て取れます.

「#東京五輪は中止します」は5月10日9時~11日2時までの18時間に6万以上のツイートとリツイートが行われていました.ちなみに,それまでのツイートはゼロですので,一気に広まった様子が良くわかります.

一方「#東京五輪の開催を支持します」は5月9日以降,徐々に広がっていっていますが,5月15日12時~23時までの間に3万5千以上のツイートが突然拡散しています.

バーストの要因ツイート

どちらのハッシュタグもある瞬間から急激な増加をしているのが分かります.では,どのようなツイートが拡散の引き金になったのでしょうか.「#東京五輪は中止します」は5月10日9時までは全くハッシュタグが使われていなかったので,そのタイミングのツイートがバーストの原因だったといえそうです.ちなみに,そのツイートはこちら.

政権不支持派(おおざっぱにはリベラル系)では大変有名なアカウントです.「#東京五輪は中止します」を含むツイートでリツイート数が多いものの上位5件は当該アカウントによるものです.また,拡散の21%が当該アカウント発のものでしたので,ハッシュタグの拡散を「ツイッターデモ」と呼ぶのであれば,当該アカウントが「ツイッターデモ」を引き起こすのに果たした役割は極めて大きいといえるのではないでしょうか.

次に,「#東京五輪の開催を支持します」のバーストのタイミングについてみてみると,以下の二つのツイートがバーストを牽引していたようです.

これら二つのアカウントは,やはりどちらも政権支持派(おおざっぱに保守系)では有名なアカウントです.拡散数上位15ツイートがこの二つのどちらかのアカウントから拡散されたものですので,その影響力が分かります.拡散された「#東京五輪の開催を支持します」の49.8%がこの二つのアカウントによるツイートでした

なお,こちらで挙げた3つのアカウントが「#東京五輪は中止します」と「#東京五輪の開催を支持します」の全拡散の34.6%の発信源となっていることも特筆すべき点の一つです.

以上より,どちらのハッシュタグも一部の党派性が強いアカウントの影響を強く受けていることが分かりました.

一部のアカウントによる拡散

次に,拡散したツイートがどのくらいのアカウントによって拡散されたのかを調べてみましょう.ここでは,50%のツイートを何パーセントのアカウントが広めたかによって「一部のアカウントが積極的に広めたのかどうか」を調べてみます.

「#東京五輪は中止します」については,拡散の50%は8.7%のアカウントによって行われていました.

「#東京五輪の開催を支持します」については,拡散の50%は15%のアカウントによって行われていました.

ここから,どちらのハッシュタグも一部のアカウントによる拡散が多いのですが,このような傾向は一般的に発生しますので,特に珍しい現象とはいえません.ただし,「#東京五輪は中止します」の8.7%によって半分というのはこれまでのデータから考えても一部のアカウントによる拡散が大きい方だとはいえるでしょう.

なお,最大拡散数を見ても,「#東京五輪の開催を支持します」を最も拡散したアカウントは128回拡散しており,「#東京五輪は中止します」を最も拡散したアカウントは287回拡散していました.

党派性の強さ

「#東京五輪は中止します」と「#東京五輪の開催を支持します」それぞれについて党派性を見てみましょう.ただし,どちらのタグにも「タグ反対派」のツイートが存在しますので,クラスタリングをして最大のハッシュタグ支持系ツイートクラスタ(以下コアクラスタ)のツイートを拡散したアカウントの党派性のみ確認しました.党派性の確認にはこれまでに我々の研究グループが収集しラベリングした党派性アカウントデータを利用しています.(データ詳細については論文投稿中のため割愛いたします)

その結果,

「#東京五輪は中止します」のコアクラスタを拡散したアカウントの58%が政権不支持派(おおざっぱにはリベラル系)のアカウントでした.ただし,政権不支持派アカウントの中で当該ハッシュタグを拡散したアカウントは2.7%です.

「#東京五輪の開催を支持します」のコアクラスタを拡散したアカウントの68%が政権支持派(おおざっぱに保守系)のアカウントによって行われていました.ただし,政権支持派アカウントの中で当該ハッシュタグを拡散したアカウントは1.9%です.

この結果は,これまで行ってきたオリンピックに対するツイート内容分析の結果とも合致します.

割合から見ると,「#東京五輪は中止します」のタグの方が党派性の低いアカウントがコアクラスタ拡散していた可能性が高いといえそうです.

党派性が強いと判断されたアカウントを除くと,「#東京五輪は中止します」のコアクラスタを拡散したアカウントは6393アカウント,「#東京五輪の開催を支持します」のコアクラスタを拡散したアカウントは4404アカウントでした.それぞれのコアクラスタを拡散したアカウントだけを見ると党派性が確認できなかったアカウントの59%が「#東京五輪は中止します」を拡散していたことになり,この結果は,オリンピック中止すべきだが59.7%という世論調査の結果とも合致していました.いや,さすがにこれはただの偶然だけど.

結論

オリンピックの是非を考える二つのハッシュタグのデータを分析し,その拡散力や党派性の強さを確認しました.

データを見る限りハッシュタグを巡る動きには,どちらにも党派性が強く恣意性が存在することが示唆されました.やはり単にツイッターのトレンドに乗ったというだけでは一般的な社会の意見を反映しているとはいえなそうです.単に「こういうツイートが(何か理由があって)多い」くらいにとどめておいた方がよさそうです.党派性の強い話題については特に.

さて,オリンピックの是非についてどちらの意見が多数派かについては,数的には世論調査と同じく中止の方が多いといって良さそうです.数が多いことが正しいこととは限りませんが,バイアスをできるだけ外した時に出てくる結果には一定の意味があるのではないでしょうか.

なお,本記事を含め,これまでの記事で利用したデータはすべてツイッター社によって公開されているものです(データ収集時時点).もし結果に疑問がある方は,是非個別にデータをご確認いただければと思います.