米国議会占拠事件でトランプ支持者擁護ツイートの半分は7%のアカウントが拡散させた

アメリカ議会占拠問題(写真:ロイター/アフロ)

アメリカ議会占拠騒動

アメリカ大統領選挙も1月20日のバイデン新大統領の就任式をもって,いったん区切りになりそうですが,その直前の1月7日にアメリカ議会が占拠されるという大ニュースが飛び込んできました.さらに,その占拠ののちにトランプ大統領のTwitterアカウントが停止されたことも大きなニュースとなりました.

基本的にはアメリカでの話なので直接的に日本にかかわりがあるわけではありませんが,やはり大きなニュースであったこともあり,日本のTwitter上でもかなり話題となりました.

ツイートの分析

というわけで,早速ツイッター上の関連データを分析してみましょう.

今回は話題が多岐にわたるため,「議会占拠 OR (議会 AND 占拠) OR ((連邦 OR 米国 OR アメリカ) AND 議会) OR 議会 OR クーデター OR アンティファ OR ペロシ OR トランプ OR バイデン OR ペンス OR 大統領」で検索した結果を用いて分析を行います.

2021年1月7日から1月12日までで3,297,232ツイートを収集しました.

まずツイート数から見てみましょう.

アメリカ議会占拠に関するツイート数(著者作成)
アメリカ議会占拠に関するツイート数(著者作成)

これを見ると,議会占拠が起きた1月7日にピークを迎えた後,トランプ大統領のアカウントが停止された1月9日に再びピークがあることが分かります.

次に,これらのツイートの中身はどうだったのか,リツイート数上位500ツイートについて,リツイートしたアカウントの類似性に基づくクラスタリングを行いました.クラスタリングの手法についてはこちらの論文をご参照ください.

アメリカ議会占拠に関するクラスタ(著者作成)
アメリカ議会占拠に関するクラスタ(著者作成)

大きなクラスタは3つほど得られました.

トランプ支持者擁護クラスタ(A)

まず,クラスタAはトランプ支持者を擁護するクラスタです.こちらには,

トランプ政権は一度も戦争をせずに,過去数十年で最も平和を実現した

という内容のツイートや,

といったツイートが含まれていました.

ちなみに,アンティファとは「アンチファシズム」の略で,急進左派の活動家ネットワークのことだそうです.

「議会占拠したのは本当はトランプ支持派ではなくアンティファである」という言説も多数存在するようで,このようなツイートが割と上位に来ていました.ちなみに,AFP通信はこれを否定しているようです.また,上記ツイートについても,BuzzFeedは誤りだとしています.

このクラスタには,331ツイートが含まれ,93,876アカウントが614,551回リツイートを行っています.

議会占拠否定派クラスタ(B)

図中の左側に見えるクラスタBには,

をはじめとして,議会占拠を行ったトランプ支持派を否定的にとらえているツイート群です.

このクラスタには,54ツイートが含まれ,34,070アカウントが78,655回リツイートを行っています.

上手いこと言ったクラスタ(C)

最後のCクラスタは,

のような,「ちょっとうまい事言った」系のツイートによって作られたクラスタでした.大喜利というほど笑えるツイートはなかったですが,まあ,日本のツイッターらしいツイートです.

ここには6ツイートが含まれ,34,070のアカウントが21,753回ほどリツイートしています.

アカウントの偏り

まず,クラスタA,Bについて,どんなアカウントがこれらのツイートをリツイートしていたのかを調べてみました.とくに,それぞれのクラスタのツイートを多数RTしたアカウントについて,政治的な偏りがないかについて注目しました.

具体的には,各クラスタのツイートを10回以上RTしたアカウントを抽出し,過去のツイートからリベラルまたは保守に分類されていたアカウントかどうかを比較しました.

その結果,

・クラスタAを多数RTしたアカウントの63%が保守系

・クラスタBを多数RTしたアカウントの95%がリベラル系

と判定されました.

ただし,

・保守系アカウントの10.4%がクラスタAのツイートを多数RTした

・リベラル系アカウントの0.6%がクラスタBのツイートを多数RTした

という状況でした.

トランプ支持者を擁護した人の63%は保守系だけど,保守系のアカウントが皆トランプ支持者を擁護していたわけではない,といえそうです.

一部のアカウントによるリツイート

さて,ツイッター上でいわゆるバズった場合,一部のアカウントによって多数のツイートが拡散されることが良く知られています.

それでは,今回の場合はどうだったのでしょうか?

まず,クラスタAについて調べたところ,リツイートを行ったアカウントは全部で93,876アカウントありましたが,そのうち6,548アカウントで全体の50%のツイートが拡散されていました.つまり半数の拡散は7%のアカウントによって行われたといえます.

次に,クラスタBについて調べたところ,こちらは34,070アカウントがリツイートに参加していましたが,そのうち5,481アカウントで全体の50%のツイートが拡散されていました.こちらは,16%のアカウントですね.

どちらもある程度少数のアカウントによって拡散されていることは間違いないですが,その傾向はクラスタAの方がより強かったようです.

クラスタA,Bともに,ですが,特にクラスタAは一部の積極的なアカウントによって拡散が行われていた傾向が強いといえそうです.

まとめ

アメリカ議会占拠問題については,大きく二つのクラスタが見つかり,トランプ大統領支持派を擁護するツイート群が目立ちました.このクラスタのツイートをRTするアカウントは,保守系のツイートをよく拡散するアカウントが60%を占めていました.さらに,そのうち7%のアカウントで半分の拡散を行っていました.

なお,トランプ大統領支持派擁護クラスタが最大だったとはいえ,データに現れた全アカウントを考えると,クラスタAのツイートを拡散したアカウントは全体の22.2%でした.多数派ではありますが,トランプ大統領支持派を擁護するツイート以外を拡散したアカウントの方が多いと言えそうです.

他にもいろいろ分かったことはありますが,とりあえずこんなところで.