ツイッター上では新型コロナワクチンをどう捉えているか

(提供:TKM/イメージマート)

新型コロナの感染拡大が収まる様子を見せず,GoToトラベルキャンペーンも中止となり,今年の正月はステイホームと暗い話題が続いています.神奈川県からはこのままいくと1月末にはコロナ病床が足りなくなるという予測が出たりと,なかなか新型コロナ禍が収束する気配が見えてきません.

そんななか,ワクチンの開発が進みイギリス等では接種が始まったという明るいニュースが飛び込んできました

一方で,通常よりもはるかに速いペースで認可が下りたことから副作用についての懸念も存在しています.

新型コロナワクチンの効果のほどについてコメントはできませんが,賛否両論が存在するワクチンについてツイッター上ではどのような意見が存在するのかを調べてみました.ちなみに,ツイッターは社会の動向を映し出すソーシャルセンサーとしての役割があると言われていますので,ツイッター上のデータを見ることは社会全体の様子を探る手掛かりとして有用であることが分かっています.

ワクチンに関するツイートのクラスタ分析

2020年8月から収集した「ワクチン」が含まれる4,476,129ツイートがありましたので,ツイート量の変化から見てみましょう.

ツイート数から見ると8月くらいからいったん話題としては減っていましたが,ワクチンの認可が下りだしたころからまた話題になってきて,12月半ばからは一日60~80万件の投稿が行われているようです.

「ワクチン」を含む一日ごとのツイート数(著者作成)
「ワクチン」を含む一日ごとのツイート数(著者作成)

次に,これらのツイートの中身はどうだったのか,リツイート数上位500ツイートについて,リツイートしたユーザの類似性に基づくクラスタリングを行いました.クラスタリングの手法についてはこちらの論文をご参照ください.

「ワクチン」を含むツイートのクラスタリング(著者作成)
「ワクチン」を含むツイートのクラスタリング(著者作成)

ワクチン関連のツイートにはかなり多くのクラスタが含まれており,クラスタとして抽出されたものは20近くありましたが,ここでは規模の大きな5つのクラスタについてみてみます.

まず,クラスタAに含まれる最も拡散したツイートがこちら.

これらのツイートに代表されるように,「新型コロナワクチン」に関するデマや不安をあおるマスコミの記事への注意喚起が多く含まれているクラスタでした.基本的には新型コロナワクチンに対してポジティブな反応を示したクラスタと言ってよいでしょう.ちなみに,ここで示したツイートが今回収集した中ではもっとも拡散したツイートでした.

このクラスタには118ツイートが含まれ,54,258アカウントが111,411回の拡散を行っています.アカウントの偏りは0.788であり,比較的偏りの少ないクラスタだったといえます.

次に,クラスタBに含まれるツイートは,主に政治への批判でした.

布マスクの配布すら苦戦していたのに,マイナス80度で保存・輸送しなきゃいけないワクチンを迅速に多くの国民に接種できると期待するのは難しい

などです.

このクラスタには57ツイートが含まれ,20,021アカウントが38,816回の拡散を行っています.アカウントの偏りは2.068であり,偏りの大きいクラスタだったといえます.

クラスタCは,ワクチンを批判するツイート群です.基本的には新型コロナワクチンに対してネガティブな反応を示したクラスタと言ってよいでしょう.

ワクチンには予防効果がない

ワクチンは危険だ

ワクチンで死者が出た

といったツイートが含まれていました.

このクラスタには64ツイートが含まれ,14,708アカウントが32,950回の拡散を行っています.アカウントの偏りは1.444であり,比較的偏りの大きいクラスタだったといえます.

クラスタDはニュースクラスタです.

こちらのような,ワクチンに関するニュースツイート群でした.12月という時期もあって,ワクチンとアレルギーの関係や,変異種の発生に関するツイートが含まれていました.

このクラスタには24ツイートが含まれ,9,036アカウントが14,155回の拡散を行っています.アカウントの偏りは0.593であり,今回確認した5つのクラスタではもっとも偏りが小さいクラスタでした.

最後Eクラスタは,ワクチン接種や入国制限についてのツイートが多く含まれていました.

春節に観光客が入ってくるようになったら医療崩壊するのではないか

外国人が日本にワクチンをうちに来るから,日本人を優先して欲しい

日本政府がワクチン利権のためにコロナを拡散している

といった特定の国の方を忌避したり,いわゆる陰謀論を支持するようなツイートが多く見受けられます.

このクラスタには15ツイートが含まれ,6,385アカウントが10,930回の拡散を行っています.アカウントの偏りは2.524であり,今回確認した5つのクラスタではもっとも偏りが大きいクラスタでした.

クラスタの拡散状況

次に,それぞれのクラスタに属するツイートがどのくらい拡散されたのかを見てみましょう.

各クラスタの拡散数(著者作成)
各クラスタの拡散数(著者作成)

これより,クラスタA(「新型コロナワクチン」に関するデマや不安をあおるマスコミの記事への注意喚起)がかなり拡散されていることが分かります.

次に拡散時期を見てみましょう.

クラスタごとの日ごとのツイート数(著者作成)
クラスタごとの日ごとのツイート数(著者作成)

これを見ると,12月の頭は政治批判系のツイート(クラスタB)が多かったものの,半ばくらいからデマや不安をあおるマスメディアの記事への警戒ツイート(A)がかなりおおくツイートされていることが分かります.

12月後半はワクチンに対してポジティブなクラスタAがネガティブなクラスタCを大きく上回っており,かつポジティブなクラスタAの方がアカウントの偏りも小さいことから,ツイッター上ではワクチンに対してポジティブな勢力が強く,かつネガティブな反応に警戒している様子が分かります.

まとめ

新型コロナワクチンはまだ海外での接種が始まったばかりで,その効果を評価するのは難しい状況ではありますが,(少なくとも)ツイッター上ではワクチンに関してはポジティブな反応が多いことが分かりました.特に,ネガティブな反応への警戒ツイートが多かったことからも,新型コロナワクチンへの期待と,ワクチン接種阻害への警戒が強いことがうかがえます.

個人的にはワクチンの不安を必要以上に煽る記事を求めていないツイートが多かった,というのが興味深かったです.メディアの皆様にも是非ご参考いただければと思います.

いずれにせよ,ワクチンは新型コロナに対抗する有力な手段です.適切なワクチン接種で,一日も早く新型コロナ禍が解消されることを願うばかりです.