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新型コロナに関するツイッター上の雰囲気が緊急事態宣言時と類似

鳥海不二夫東京大学大学院工学系研究科教授
(写真:アフロ)

7月以降の新型コロナウィルスに対するツイート

7月に入り,新型コロナウィルス感染者数が全国で500人を超え,これは第二波ではないかという憶測が出ています.

1月16日以降新型コロナに関係するツイートの収集を続け,7月20日現在,2億1600万ツイートほど収集しています.

このデータから,新型コロナウィルスに関する人々の感情が7月に入ってどのように変化したのかを分析してみましょう.

なお,人々の感情を分析するという意味では,リツイートやニュース記事などURLを含んだツイートはノイズとなってしまうため,オリジナルツイートかつURLを含まないツイートのみを対象として分析をしています.

まずは,ツイート数から見てみましょう.

新型コロナに関するツイート数と陽性者数(筆者作成)
新型コロナに関するツイート数と陽性者数(筆者作成)

新型コロナに関するツイート数は,3月末から4月上旬をピークに徐々に減少傾向にあり,6月には最低(1日10万ツイート程度)まで減少していましたが,7月に入りまた徐々に増加傾向にあります.

緊急事態宣言が解けて,6月は日常に向かいつつあったのに,やはり陽性者数の増加と比例して新型コロナに関するツイートも増加している様子がわかります.

では,これらのツイートの中身はどのようなものでしょうか.

感情の分析

ここでは,ツイートに含まれる感情に注目してみました.

各ツイートに含まれる感情語を抽出し,平常時と比較してどのような感情がどのくらい増加しているのかを分析します.なお,感情抽出にはML-Askを用いました.

コロナ関連ツイートに含まれる各感情が,コロナ前の通常のツイートと比較して何倍になっているのかを図にしてみました.

感情の変化(著者作成)
感情の変化(著者作成)

これだけ見ても分かりづらいので,特に含まれる数の多い「怖」の感情に注目してみましょう.

ここでは,日本に新型コロナが上陸した3月以降の変化を見てみましょう.

「怖」の感情の変化(著者作成)
「怖」の感情の変化(著者作成)

これより,志村けんさんが亡くなった3月30日に「怖」の感情がピークを迎え,その後緊急事態宣言が発令された4月上旬の間は,平常時と比べて,新型コロナ関連のツイートには6倍程度「怖」の感情が含まれていることがわかりました.

しかし,その後徐々に減少し,5~6月には通常時の通常時の4倍程度になり,新型コロナウィルス関連のツイートでも「怖」の感情が減少していったことがわかります.

しかし,7月に入って新型コロナの陽性者が増加するとともにまた「怖」の感情が増加していることがわかります.

その割合は通常時の6倍程度で,緊急事態宣言が出されたころと同程度に「怖」の感情が含まれていたことになります.

4月上旬との類似性

最後に,各感情がツイートされた割合,その分布の類似性を緊急事態宣言が出た直後のもっとも新型コロナの情報に皆が敏感だった4月上旬と比較してみましょう.

4月上旬の感情分布との類似性(著者作成)
4月上旬の感情分布との類似性(著者作成)

4月7日を基準としてそのころの感情分布と各日の感情の分布がどのくらい似ているのか(相関係数)をグラフにしています.1に近いほど4月7日に近い感情分布という意味になります.

なお,週次効果をキャンセルするため7日間平均をとっています.

この結果から,6月くらいは緊急事態宣言の頃とは感情の分布が似ていなかったのですが,7月に入ってから徐々に類似性が増加していることがわかります.

つまり,緊急事態宣言のころにコロナ関連ツイートに含まれる感情が似てきているという事を意味します.

特に陽性者が増加するにしたがって感情の類似性が高まっていることから,やはり7月以降の感染者の増加は人々の感情に大きな影響を与えているといえそうです.

終わりに

7月に入って新型コロナウィルスの陽性者数が増加したことを受けて,ツイッター上でどのように感情が変化したのかを分析してみました.

やはり陽性者数の増加は人々の心に影響を与えているようで,第一波が押し寄せた4月上旬とツイッター上の感情が類似していることがわかりました.

4月の頃に比べると,政府は緊急事態宣言を出す状況ではないと断言し,Go To Travelキャンペーンを実施するなど,むしろ感染対策よりも経済回復への動きが多いようです.

感染対策と経済対策,どちらを重視すべきかというのは難しい問題のため,ここでは議論しません.

しかしながら,緊急事態宣言前から徐々に人々の活動は低下していったことを考えると,社会全体の感情が4月ころと同程度になれば,Go To Travelキャンペーンなどの経済へのテコ入れが効果を十分に発揮できないかもしれません.

感染対策にせよ経済対策にせよ,期待通りの効果が出るよう社会の状況を見極めながら対策を練ってくれることを期待しています.

もちろん,ツイッター上で感情分析した結果が社会の全体の雰囲気を代表しているなんて言うつもりはありませんので,今回の分析結果で対策方針は決定してほしくないですがw

ちなみにですが,感情抽出は技術的に非常に難しいため,実のところその精度はそこまでよくはないです.

その点も併せてご注意ください.

また,4月末までの感情の詳細分析については,こちらの論文をご参照ください.

2020/07/20 13:00 相関係数の計算に関して一部誤解を招く表現を修正しました.

東京大学大学院工学系研究科教授

2004年東京工業大学大学院理工学研究科機械制御システム工学専攻博士課程修了(博士(工学)),2012年より東京大学大学院工学系研究科准教授,2021年より現職.計算社会科学,人工知能技術の社会応用などの研究に従事.計算社会科学会副会長,情報法制研究所理事,人工知能学会編集委員長.人工知能学会,電子情報通信学会,情報処理学会,日本社会情報学会,AAAI各会員.「科学技術への顕著な貢献2018(ナイスステップな研究者)」

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