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斎藤八段が挑戦へM1&残留争いは永瀬王座と羽生九段が直接対決ー第80期順位戦A級は残り2戦ー

遠山雄亮将棋プロ棋士 六段
記事中の画像作成:筆者

 13日(木)の対局をもって、第80期名人戦・順位戦A級は7回戦までの対局を全て終えた。

 挑戦争いは、斎藤慎太郎八段(28)が全勝でトップを走り、次戦に勝てば挑戦権獲得となる。

 残留争いは、山崎隆之八段(40)の降級が決定し、残りはあと1枠。

 羽生善治九段(51)がピンチを迎えており、8回戦での永瀬拓矢王座(29)との直接対決が大一番となる。

 リーグの現状、そして8回戦の大一番について解説する。

7回戦の結果

 1月7~13日の間に7回戦の5局が指された。

 結果は下記の通り(左側の棋士が先手、対局日順)。

○斎藤慎太郎八段(7勝0敗)ー羽生善治九段(2勝5敗)●

●山崎隆之八段(1勝6敗)ー豊島将之九段(4勝3敗)○

●広瀬章人八段(3勝4敗)ー菅井竜也八段(3勝4敗)○

○糸谷哲郎八段(5勝2敗)ー佐藤康光九段(3勝4敗)●

●永瀬拓矢王座(3勝4敗)ー佐藤天彦九段(4勝3敗)○

 挑戦を争う斎藤八段と糸谷哲郎八段(33)は、互いに会心の指しまわしで勝利した。

 残留争いでは、6敗目を喫した山崎八段の降級が決定。

 羽生九段は痛い一敗。同じく2勝だった菅井竜也八段(29)は終盤で競り勝って残留へ前進した。

 4勝目をあげた豊島将之九段(31)と佐藤天彦九段(33)は残留を決め、今節で敗れた3勝4敗の3名には降級の目が残っている。

挑戦争い

挑戦争いは斎藤八段と糸谷八段にしぼられている
挑戦争いは斎藤八段と糸谷八段にしぼられている

 星の差が2つあるため、斎藤八段が8回戦に勝利すれば挑戦権が決まる。

 また斎藤八段が敗れても、糸谷八段が敗れればやはり斎藤八段の挑戦が決まる。

 もし斎藤八段が敗れて糸谷八段が勝つと、挑戦争いは最終戦へ持ち越しとなる。

 その最終戦では糸谷八段と斎藤八段の直接対決となり、もし糸谷八段が勝つと二人によるプレーオフが行われる。

 斎藤八段は7回戦の羽生九段戦でも安定した指しまわしをみせ、リードしてから付け入る隙を与えなかった。

 ここまでの内容の充実ぶりをみれば8回戦で決めそうな感じもするが、対戦相手は豊島九段で一筋縄ではいきそうにない。

 糸谷八段も7回戦では佐藤康光九段(52)を腕力でねじ伏せて快勝し、勢いに乗っている。8回戦の相手は佐藤(天)九段。奨励会時代からのライバル対決だ。

 佐藤(天)九段は7回戦の永瀬王座戦では苦しい将棋を粘って逆転勝ち。終盤での腕力をみせて残留を決め、上り調子といえる。

 斎藤八段も糸谷八段も8回戦では難敵を迎える。誰と当たっても厳しいのがA級たる所以である。

残留争い

4勝以上の棋士は残留が確定している
4勝以上の棋士は残留が確定している

 山崎八段が無念の降級となり、残す枠は一つ。

 最も危ないのは羽生九段で、8回戦に敗れると降級が決まる。しかし永瀬王座との直接対決なので、もし勝てば順位の差で羽生九段は残留圏内へ浮上する。

 永瀬王座は2連勝スタートだったがそこから星が伸びない。タイトル保持者でも残留争いに巻き込まれるのがA級の厳しさだ。

 もし羽生九段が勝った場合、3勝4敗同士の佐藤(康)九段ー菅井八段の敗者も降級の目が残る。

 他に3勝4敗で順位上位の広瀬章人八段(34)も、結果次第では降級の目を残して最終戦を迎えることになる。

8回戦の注目

 最も注目を集めるのは、永瀬王座と羽生九段の直接対決だろう。

 対戦成績は永瀬11勝ー羽生4勝で、永瀬王座が4連勝中と大きくリードしている。

 そのデータでは分が悪くみえる羽生九段だが、先手番で主導権を握れるのはプラス材料といえよう。

 数々の修羅場をくぐり抜けてきた羽生九段だ。この厳しい勝負でどんなパフォーマンスをみせるか、注目したい。

 斎藤八段勝ち&羽生九段負け。このパターンだと最終戦を待たずに挑戦も降級も全て決まる。

 斎藤八段負け&糸谷八段勝ち&羽生九段勝ち、このパターンだと全て最終戦に持ち越しとなる。

 いったいどんな結末を迎えるのか。

 8回戦は2月4日(金)に一斉に行われる。

将棋プロ棋士 六段

1979年東京都生まれ。将棋のプロ棋士。棋士会副会長。2005年、四段(プロ入り)。2018年、六段。2021年竜王戦で2組に昇級するなど、現役のプロ棋士として活躍。普及にも熱心で、ABEMAでのわかりやすい解説も好評だ。2022年9月に初段を目指す級位者向けの上達書「イチから学ぶ将棋のロジック」を上梓。他にも「ゼロからはじめる 大人のための将棋入門」「将棋・ひと目の歩の手筋」「将棋・ひと目の詰み」など著書多数。文春オンラインでも「将棋棋士・遠山雄亮の眼」連載中。2019年3月まで『モバイル編集長』として、将棋連盟のアプリ・AI・Web・ITの運営にも携わっていた。

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