2日(木)第80期名人戦・順位戦B級1組9回戦が一斉に行われた。

 藤井聡太竜王(19)は近藤誠也七段(25)に勝ち、通算8勝1敗の成績で首位に立った。

 藤井竜王は次の10回戦が抜け番(奇数人数による調整)となるため、年内の順位戦の対局を終了した。

 この10回戦では藤井竜王以外の上位陣が総崩れとなり、来年の1月13日(木)に行われる予定の11回戦の結果次第では、藤井竜王の昇級が決まる可能性も出てきた。

難戦

 藤井竜王ー近藤七段戦は、先手番の近藤七段が角換わり腰掛け銀を採用し、藤井竜王は9筋(先手玉サイド)の位を取らせる間に攻撃態勢を整える作戦に出た。

 序盤を終えると互いにほぼ同形で、近藤七段だけが自玉側の端の位を取る形に落ち着いた。

 これは藤井竜王にとっては失敗といえる序盤戦だった。

 自玉の端の位は、

  • 逃げ道を広げる
  • 端攻めを緩和する

 という2つのメリットがある。

 藤井竜王としては位を取らせたからにはそれ以上のメリットを見出したかったのだが、うまくいかなかった。結果としては近藤七段の巧みな駒組みにやられた形となった。

 ABEMA将棋チャンネルの中継での勝率も中盤戦まで近藤七段にずっと傾いていたが、それを勝ちに結びつけるのは簡単ではない。

 近藤七段は、手応えはつかみつつも、具体案が見つからずに焦らされる展開だった。それは藤井竜王が形勢を離されずについていった結果でもある。

 中盤で近藤七段が反撃に出たタイミングがどうだったか。もう少し丁寧に受けにまわったほうが実戦的には良かったのではないかと筆者は考える。

 実際、藤井竜王が攻めを焦らずに落ち着いた手を重ねて、中盤の終わりくらいに形勢が逆転したようだ。

 終盤はジリジリと差が開いていき、藤井竜王の鮮やかな収束をみるばかりに。

 難しい戦いの中で、辛抱強さと寄せの速さを見せた強い内容だった。

残り3戦

 ここで藤井竜王の順位戦での星取りを見ていただこう。

12月23日は抜け番のため、残りは3戦
12月23日は抜け番のため、残りは3戦

 2戦目に敗れてから7連勝と星を伸ばしている。対戦相手は一流どころばかりで、この表を見ても実力と勢いを感じる。

 前述の通り10回戦は抜け番で、次戦は年明けの千田翔太七段(27)戦となる。昇級争いの直接対決だ。

 12回戦は阿久津主税八段(39)と対戦する。残留争いに巻き込まれている阿久津八段としても負けられない戦いといえる。

 そして最終13回戦は同じ1敗で並走する佐々木勇気七段(27)と対戦する。これも直接対決だ。

 ここまでも強敵ぞろいだったが、この後も強敵が続く。

 全くもって息が抜けないのがB級1組たる所以だ。

 藤井竜王にとっては11回戦の千田七段戦が昇級を狙う意味で重要な一戦となる。

 もしここで勝てば、競争相手の11回戦の結果次第ではA級昇級が決まる可能性もある(詳細は後述)。

 一方この直接対決を落とせば星の差が縮まり、昇級の行方は最終戦までもつれるだろう。

 A級昇級の確率はかなり高まったが、それでもまだ油断できない状況である。

 対局過多できていた藤井竜王だが、昨日で年内の対局をすべて終えたとのこと。

 一足早い冬休みは、心身の疲れを癒やし、研究を磨く時間となるだろう。

昇級争い

 ここでB級1組の昇級争いをみてみよう。

1敗の2名を3敗の3名が追う展開に
1敗の2名を3敗の3名が追う展開に

 現在、藤井竜王がトップを走る。昨日の対局で連勝がストップした佐々木七段だが、それでも2番手につける。ここまでが昇級ラインだ。

 この両者は3番手以降に星の差2つとしているが、B級2組から昇級したばかりで前期成績に基づく順位が低いため、同星で終わると他の競争相手の下になる。

 野球などでいうゲーム差でいえば、1.5ゲーム差といえる。

 二人とも、年明けの11回戦で昇級を決める可能性がある。条件としては、

  • 11回戦までを全勝(藤井竜王は1戦、佐々木七段は2戦)
  • 11回戦で競争相手(10回戦の三浦ー稲葉戦の勝者)が敗れる

 現時点で昇級争いのカギを握っているのは千田七段だ。

 10回戦では佐々木七段、11回戦では藤井竜王と、1敗の2人との連戦となる。

 もし千田七段が連勝すると一気に大混戦となり、千田七段自身も昇級争いの上位に食い込める。

 前期A級から降級した三浦弘行九段(47)と稲葉陽八段(33)も昇級争いに加わってきている。さすがの地力といえるだろう。

 この二人は10回戦で直接対決がある。勝ったほうが昇級争いに残る大一番だ。

 順位戦も後半に入り、昇級争いも佳境を迎えている。

 3月に笑うのは誰か。藤井竜王のA級昇級はなるか。興味は年明けに続いていく。