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カド番の豊島将之竜王、藤井聡太三冠への対抗策は角換わりか?~第34期竜王戦七番勝負第4局展望~

遠山雄亮将棋プロ棋士 六段
記事中の画像作成:筆者

 挑戦者の藤井聡太三冠(19)が3連勝でタイトル獲得まであと1勝としている第34期竜王戦七番勝負は、11月12・13日に山口県宇部市で第4局が行われる。

 藤井三冠が勝って竜王を奪取し四冠目を獲得するか。それともカド番の豊島将之竜王(31)が逆転防衛の足がかりを築くか。第4局を展望していく。

連採

 夏からタイトル戦を続けて戦っている両者の対戦は、2021年に入って14局を数える。

 そのうち、豊島竜王の先手番で行われた対局は全部で6局ある。

豊島竜王が先手番の時の対戦表。2021年のみ
豊島竜王が先手番の時の対戦表。2021年のみ

 タイトル戦では豊島竜王の2勝、藤井三冠の3勝だ。

 豊島竜王の先手番ではほぼ互角の戦いだが、豊島竜王は後手番で7連敗しており、それが夏のタイトル戦の結果(叡王失冠・王位挑戦失敗)、そしてこの竜王戦七番勝負における3連敗という数字につながっている。

 対戦表をご覧いただくと、豊島竜王は同じ戦型を続けて採用する傾向がみえる。

 7月の王位戦第2局、8月の叡王戦第2局では角換わり早繰り銀を採用し、相早繰り銀の戦いとなった。

 8月の王位戦第4局では角換わりから相掛かりに変えている。そこから3局続けて相掛かり、しかも全て▲5八玉と構える格好を採用している。

 このように同じ作戦を続けるのが豊島竜王の一つの特徴である。

 では、本局も相掛かりになるのか?筆者はそうではないと考える

角換わり腰掛け銀に回帰か

 星には表れていないのだが、豊島竜王が新しい作戦を採用すると最初は藤井三冠が対応に苦慮している。

 7月の王位戦第2局での相早繰り銀、8月の王位戦第4局での相掛かりと、どちらも豊島竜王が中盤まで有利に進めていた(結果は2局とも藤井三冠の逆転勝利)。

 しかし局が進むにつれて藤井三冠の対応が整っていく。相掛かり3連投となった竜王戦第2局では、後手番の藤井三冠が積極的な指しまわしで序盤からリードを奪った。

 そう考えると本局で豊島竜王はまた違った作戦を採用するのではないか。

 そうなると、豊島竜王が以前得意としていた角換わり腰掛け銀が浮かび上がる。

 この戦法で豊島竜王は数々のタイトルを獲得しており、カド番となる本局で流れを変える意味でもこの角換わり腰掛け銀を採用するのではないかと予想する

対局過多を跳ね返せるか

 藤井三冠は9日に第71期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグ5回戦で羽生善治九段(51)を破り、挑戦権獲得に近づいた。

藤井聡太三冠、羽生善治九段に勝って挑戦に前進!行く手を阻むのは誰か?〜第71期王将リーグ最終展望〜

 9日の対局を終えて休む間もなく11日に山口県へ移動して、12日から第4局を戦う。勝っている者の宿命ではあるが非常に厳しい日程だ。

 若さもあってある程度忙しくても体力的に問題ないだろうが、それでも対局が立て込むとわずかに精度が落ちる時もあるように見受けられる。藤井三冠といえども人の子なのだ。

 本局もスケジュール的にはかなり厳しい状況であり、ベストの状態で臨めるかは微妙なところである。

 対局過多を跳ね返して藤井三冠が勝利して竜王を獲得するか、豊島竜王が逆転防衛の足がかりを築くか。

 注目の対局は12日9時に開始され、13日の夕方頃に決着する。

ABEMA将棋チャンネルなど各メディアで中継が行われるので、ぜひご覧ください。

将棋プロ棋士 六段

1979年東京都生まれ。将棋のプロ棋士。棋士会副会長。2005年、四段(プロ入り)。2018年、六段。2021年竜王戦で2組に昇級するなど、現役のプロ棋士として活躍。普及にも熱心で、ABEMAでのわかりやすい解説も好評だ。2022年9月に初段を目指す級位者向けの上達書「イチから学ぶ将棋のロジック」を上梓。他にも「ゼロからはじめる 大人のための将棋入門」「将棋・ひと目の歩の手筋」「将棋・ひと目の詰み」など著書多数。文春オンラインでも「将棋棋士・遠山雄亮の眼」連載中。2019年3月まで『モバイル編集長』として、将棋連盟のアプリ・AI・Web・ITの運営にも携わっていた。

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