「令和の覇者」争いが激化した一年 ~将棋界2019年度振り返り~

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 将棋界は4月~翌3月で区切りとなる。

 大阪王将杯王将戦七番勝負第7局をもって、2019年度のタイトル戦が全て終了した。

 公式戦はまだ少し残っているが、2019年度を振り返る。

 タイトルの移り変わりが多く、2018年の第76期名人戦以来、渡辺三冠以外は全て防衛に失敗している。

 文字通り、群雄割拠の将棋界。

 世代交代も鮮明になった一年だった。

タイトルが揺れ動いた2019年

2019年度、タイトルの移り変わり
2019年度、タイトルの移り変わり

 2019年度のタイトルの移り変わりは上図を参考にしていただきたい。

 図からも分かるように、昨年行われたタイトル戦は全て挑戦者が勝利した。

 4月からの名人戦、10月からの竜王戦を制し豊島将之竜王・名人(29)が誕生した。

 竜王・名人を同時に獲得したのは史上4人目だ。

 しかし豊島竜王・名人は、棋聖戦で渡辺明三冠(35)に、王位戦で木村一基王位(46)相手に防衛失敗。

 2つ取ったものの2つ取られてしまい、「令和の覇者」争いの先頭に立つことはできなかった。

 木村王位の悲願の初タイトル獲得は、46歳という年齢も相まって社会現象にもなった。

 大盤解説会に来場したファンの多くが木村王位誕生に涙したことからも、その人気ぶりがうかがえる。

 永瀬拓矢二冠(27)は一気に2つのタイトルを獲得した。

 叡王戦、王座戦といずれもストレートでの奪取は圧巻だった。

 実力を高く評価されつつも、なかなかタイトルに手が届かなかったが、ついに花開いた。

 4月から叡王戦七番勝負が始まる。挑戦者は豊島竜王・名人。二冠同士の頂上決戦だ。

 永瀬二冠は「令和の覇者」争いで遅れをとらないためにも、重要な防衛戦だ。

 

叡王戦七番勝負PV

渡辺三冠を中心に動いた2020年初頭

 6月に棋聖戦で豊島棋聖から奪取を果たし、三冠となった渡辺三冠。

 8割近い成績を残しながら、年内はあと一歩のところで挑戦に届かなかった。

 迎えた年明けのダブルタイトル戦。

 王将戦は4勝3敗、棋王戦は3勝1敗と防衛を果たして結果を出した。

 そして、A級順位戦では9戦全勝の偉業を達成した。

 4月から行われる名人戦七番勝負は、竜王・名人vs三冠という構図で、こちらも頂上決戦だ。

 ここで名人を奪取すると四冠となり、「令和の覇者」争いで一歩抜け出すことになる。

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藤井聡太七段はタイトル挑戦なるか

 2019年度の藤井聡太七段(17)は、王将戦でタイトル挑戦まであと1勝と迫りながら広瀬章人八段(33)に阻まれた。

 現在進行中の棋戦では、棋聖戦と王位戦でタイトル挑戦のチャンスを迎えている。

 あと3勝で挑戦となる棋聖戦決勝トーナメントでは、31日に菅井竜也八段(27)と準々決勝を戦う。2019年度最後の大勝負だ。

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 3年連続年度勝率8割以上の新記録を樹立するなど、タイトルを獲得する実力であることはもう間違いない。

 もし棋聖戦、王位戦ともにタイトルを獲得するようなことがあれば、一気に「令和の覇者」の先頭争いに並ぶことになる。

 

世代交代が鮮明に

 2019年度、羽生善治九段(49)は33年ぶりに棋戦優勝もタイトル獲得も逃した。

 タイトル獲得は通算99期で止まっており、2019年度はタイトル戦登場もなかった。

 全体でみても、羽生世代と呼ばれる黄金世代がタイトル戦に出場できず、世代交代が鮮明となった一年だった。

 今年50歳を迎える羽生九段、会長職を務めながらA級在籍を続ける佐藤康光九段(50)らの活躍をファンは待っていることだろう。

 世代としては、20代と30代の覇権争いとなっている。

 20代では、A級昇級を果たした菅井八段と斎藤慎太郎八段(26)もタイトルに絡む活躍が期待される。

 30代では、2度タイトル戦に登場した広瀬八段、名人を失った佐藤天彦九段(32)も、またタイトル戦線に加わってくるだろう。

2020年度の展望

 最後に2020年度を展望したい。

 タイトル戦は、複数冠を持つ3名を中心に、充実の20代、実力派の30代が絡む展開になるだろう。

 木村王位ら、40代、50代の巻き返しも十分に考えられる。

 そしてなんといっても注目は藤井七段だ。

 2020年度はタイトル戦登場の可能性がかなり高いとみるが、果たして。

 最後に女流棋界にも触れておく。

 新年度は、マイナビ女子オープンと女流王位戦の番勝負が同時に開幕する。

 タイトルを分け合う西山朋佳女王(24)と里見香奈女流王位(28)に、どちらも加藤桃子女流三段(25)が挑む構図だ。

 新年度の女流棋界を占う2つのタイトル戦となる。

 2020年度も熱い戦いが繰り広げられることは間違いない。

 引き続き将棋界にご注目いただきたい。