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藤井聡太七段、タイトルホルダー撃破!「令和」活躍のカギは将棋AI活用法

遠山雄亮将棋プロ棋士 六段
2017年、竜王戦ランキング戦6組準々決勝より(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 24日、藤井聡太七段(16)が第32期竜王戦4組ランキング戦準決勝で高見泰地叡王(25)に127手で勝ち、決勝へ進出した。これにより3組への昇級も決定した。

 藤井(聡)七段は、3期連続ランキング戦優勝と決勝トーナメント進出へあと1勝に迫った。

対局内容

 対局は、藤井(聡)七段の先手で角換わりに進んだ。高見叡王としては相手の得意戦法を真っ向から受けて立った格好だ。

 この日の藤井(聡)七段は中盤戦で形勢判断の精度をやや欠く場面があり、形勢の針は揺れながらも徐々に高見叡王に振れていった。

 終盤戦、優勢の高見叡王がと金を捨てる好手で一気に攻め込み、藤井(聡)七段は辛い受けを強いられているように見えた。しかしその粘り強い受けに高見叡王が攻めを間違えて逆転。

 最後は藤井(聡)七段が銀捨てから敵玉をとらえて激闘を制した。

逆転また逆転

 高見叡王は終盤まで素晴らしい指しまわしだったが、防衛戦となる叡王戦七番勝負で2連敗スタートという影響もあったか。珍しく決め所で踏み込みを欠いた。

 藤井(聡)七段は苦しい戦いだったが、粘り強い指しまわしで勝利を呼び込んだ。

 藤井(聡)七段の今期竜王戦での勝ち上がりをみると、準々決勝の中田宏樹八段(54)戦でも終盤の逆転で勝っており、逆転勝ちが続いている。逆転で勝ちを拾い続けるのは強さでもあるが、絶好調時と比べるともう一息というところだ。

 決勝戦の相手はまだ決まっていないが、前王位の菅井竜也七段が相手となれば、未だに勝ったことのない強敵で試金石の一戦になるだろう。

中盤の精度

 藤井(聡)七段自身もよくコメントしているように中盤の精度は課題であろう。これは藤井(聡)七段に限らずプロ棋士ならば皆課題とするところだ。

 中盤戦は局面がごちゃごちゃして方針も見えづらい。その中で形勢を正しく判断するのは難しい。とはいえ形勢判断を間違うといくら時間をかけても正解を導き出すことはできないので、中盤戦での形勢判断の精度を上げることは実力向上に不可欠だ。

 そのためプロ棋士は中盤の精度を上げるために日々精進している。

 そして中盤の精度を上げるには将棋AIの活用が欠かせない。いまや将棋AIは人間よりはるかに強いのだ。それを活用しない手はない。

 問題となるのは、中盤の精度を上げるためにどう将棋AIを活用するか、その方法だ。まだその方法論は確立されていない。

 AIの活用法で一歩先を行くチェスの世界では、トップの強みは総じて中盤の精度だ。これはチェスAIによって全体的に序盤戦の研究が深まり、研究でリードできないからだという。

 将棋でも同様の傾向が強まっている。今後、中盤の精度がより実力に反映されることは間違いない。

「令和」活躍のカギはAI活用法

 時代を作った人は、必ず新しい技術を活用していた。将棋界では平成時代に棋譜データベースが普及してビッグデータが生まれ、羽生善治九段はビッグデータを活用して時代を作った。

 いま将棋の世界では「人間とAIの共存」というステージに入っている。令和時代に活躍するには将棋AIの活用は必須だろう。

 藤井(聡)七段はハードの性能にこだわったPCを購入するなど将棋AIの活用に積極的だ。

 藤井(聡)七段がどう将棋AIを活用していくか、ということは、社会において人間がAIをどう活用していくか、ということへの先例になるかもしれない。

 その活用法には将棋界のみならず、社会からも注目が寄せられるだろう。

将棋プロ棋士 六段

1979年東京都生まれ。将棋のプロ棋士。棋士会副会長。2005年、四段(プロ入り)。2018年、六段。2021年竜王戦で2組に昇級するなど、現役のプロ棋士として活躍。普及にも熱心で、ABEMAでのわかりやすい解説も好評だ。2022年9月に初段を目指す級位者向けの上達書「イチから学ぶ将棋のロジック」を上梓。他にも「ゼロからはじめる 大人のための将棋入門」「将棋・ひと目の歩の手筋」「将棋・ひと目の詰み」など著書多数。文春オンラインでも「将棋棋士・遠山雄亮の眼」連載中。2019年3月まで『モバイル編集長』として、将棋連盟のアプリ・AI・Web・ITの運営にも携わっていた。

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