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【JAZZ】映画という題材をより俯瞰した新境地へ(ジェイコブ・コーラー@ヤマハホール)

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家
ジェイコブ・コーラー『マイ・サウンドトラック』
ジェイコブ・コーラー『マイ・サウンドトラック』

“ジャズの醍醐味”と言われているライヴの“予習”をやっちゃおうというヴァーチャルな企画“出掛ける前からジャズ気分”。今回は、ジェイコブ・コーラーの新作『マイ・サウンドトラック』発売記念ライヴ。

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卓越したテクニックと豊かな表現力でピアノ・ジャズ・シーンに新たな風を起こしているジェイコブ・コーラーが、新作『マイ・サウンドトラック』を完成させた。

これまで彼は“シネマティック・ピアノ”と題するアルバム・シリーズを3作までリリースし、映画音楽のジャズ・カヴァーにおいて大きな功績を残している。

今作のタイトルから“シネマティック・ピアノ”の文字が消えていることからも、この作品が映画音楽をカヴァーする趣旨のものでないことは伝わるだろうが、“サウンドトラック”が映画音楽であることを考えると不思議に感じる人がいるかもしれない。

種を明かせば、『マイ・サウンドトラック』は彼の初めてのオリジナル曲によるアルバムだから“シネマティック”ではないということなのだけれど、話はそれでは終わらない。収録されている彼のオリジナル曲が名作映画をトリビュートしたものという、“シネマティック”にして“シネマティック”にあらずの、ハイブリッドなコンセプトを新たに打ち出しているのだ。

カヴァーを超えて手にした自由度

もちろんこれまでの“シネマティック・ピアノ”シリーズでも、ジャズという自由度の大きい表現手段によって、カヴァーと言いながらオリジナルと呼んだほうがいいほどのアレンジを施してきた実績のあるジェイコブ・コーラーなのだけれど、今回“トリビュート”という新しいフィールドへ踏み出すことで、より大きな自由度を手にしたのではないだろうか。

“シネマティック・ピアノ”シリーズでもおなじみのピアノ・トリオにヴァイオリンとチェロを加えた流麗なサウンドがどのように広がりを見せるのか、楽しみだ。

では、行ってきます!

●公演概要

12月4日(木) 開場18:30/開演19:00

会場:ヤマハホール(銀座)

出演:ジェイコブ・コーラー(ピアノ)、パトリック・グリン(ベース)、デニス・フレーゼ(ドラム)、maiko(ヴァイオリン)、平山織絵(チェロ)、ゲスト:樹里からん(ヴォーカル)

♪Jacob Koller "Back to Gotham"

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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