音楽に国境がなくなる日は近いのだろうか?

●ドイツで隕石動画がブロックされている理由|WIRED.jp

ドイツで隕石動画がブロックされている理由|WIRED
ドイツで隕石動画がブロックされている理由|WIRED

いささか旧聞に属することで申し訳ないのですが、2月15日にロシア連邦ウラル連邦管区のチェリャビンスク州付近へ落下した隕石は、飛行経路で衝撃波による被害をもたらすなど、広く東ヨーロッパ地域にかけて影響を与えました。

各地で隕石が落下していく軌跡を撮影した映像もネットにアップされ、それがニュースで二次利用されたりもしたので、日本でも目にされた人は多かったのではないでしょうか。

ところがこの話題、意外なところで波紋を広げていました。ドイツでは、YouTubeにアップされたこの隕石の動画がほとんどブロックされてしまったというのです。

ブロックの原因は、動画の多くが車載カメラによって撮影されたもので、その際に社内に流れていたBGMを一緒に拾ってしまっていたからだそうです。

グーグル(YouTubeの親会社)とGEMA(ドイツ最大の配信権管理団体)が著作権をめぐって争っているせいで、ロシアのYouTube動画の多くはドイツ内ではブロックされているのだ。

米国でならこれはほぼ確実に(著作権の侵害にあたらない)フェアユースとして扱われるが、ドイツでは、この規定と同等のものはないのだ。

出典:ドイツで隕石動画がブロックされている理由|WIRED.jp

GEMAはグーグルに対して「ストリーミング1回につき0.00375ユーロ(0.005ドル)」の使用料を要求しているそうです。これが決裂して現在は調停中ということなので、やむなくYouTubeのブロックが行なわれているとのこと。期せずして、「音楽にも国境があった」ということが証明されてしまったわけです。

一方で、こんな記事も目にしました。

●Spotifyは音楽業界の救い主? ユニバーサル幹部が語るデジタル戦略

Spotifyは音楽業界の救い主? ユニバーサル幹部が語るデジタル戦略|週アス
Spotifyは音楽業界の救い主? ユニバーサル幹部が語るデジタル戦略|週アス

こちらは、世界の4大レコード・レーベルの1つ、ユニバーサル・ミュージックのスウェーデン子会社の事業開発トップが語ったコメントを記事にしたものです。

音楽のネット配信や共有サービスは目新しいものではないですが、なかなか権利関係の壁を乗り越えることができずに、これまでいくつもの企業が登場しては消えていくことを繰り返してきました。しかし、スウェーデン発の「Spotify」はちょっとようすが違うぞ、ということのようです。それを語っているのが、ネット配信の新興勢力に対して牙城を守ろうとする既存のレーベル側の人間であることが、この記事のポイントになります。

Spotify登場の前、インターネット、さらにはブロードバンドという音楽ファイルを容易に共有できる技術を得た消費者は、一気にファイル共有へと走った。タダという面はもちろんのこと、CDを買うよりも簡単で、便利だったという側面も大きいだろう。CDの販売が主な収益の柱だった音楽業界は大きなあおりを受けた。Universal Music Swedenも例外ではない。同社で事業開発トップを務めるNiklas Twetman氏によると、スウェーデンの場合、2000年から2008年のあいだに音楽業界の事業規模は半分まで縮小したという。

追いつめられたUniversal Music Swedenは事業戦略の大きなシフトを決意する。「いま変更しなければ、われわれの事業は存続しないという段階まできていた」とTwetman氏。そこでデジタル事業の頼みとしたのが、Spotifyだ。2008年に開始し、あっという間にデジタル事業は成長路線に入った。2012年には売り上げの約70%がデジタル事業となる勢いだ。

Spotifyの魅力についてTwetman氏は、モバイルからもアクセスできるなど非常に便利な点を挙げる。合法的で使いやすく、時代にあったサービスを提供すれば、人々は今でも音楽を消費するということがわかった、とまとめる。

出典:Spotifyは音楽業界の救い主? ユニバーサル幹部が語るデジタル戦略|週アスplus

音楽業界は、音楽のデジタル化に関してとても臆病だったと思います。簡単にコピーができて誰にでもばらまけてしまうものは、商品としての価値がないと考えていたのでしょう。課金システムやコピー・ガードなど、さまざまな技術をつぎ込んで、これを阻止しようとしてきた感があります。しかし、無料ダウンロードの魅力はそれを凌駕し、瞬く間に音楽業界を席巻しました。結局、業界はシステムを刷新してデータを引き継げないようにするか、あるいはネット配信の企業を丸ごと買収して技術を握りつぶしてしまうか、いずれにしてもおよそ文化的とは思えない方法で対抗してきたわけです。それらは一見、レーベル側の勝ちにも見えますが、記事にもあったように市場を収縮させるという“副作用”を起こしてしまいました。

Niklas Twetman氏が語るようなかたちで業界全体がデジタル事業への親和性を増せば、無料ダウンロードを叩き潰すのに費やしてきた無駄なエネルギーを創造的な方向へ転換することも可能――。その動向をこれからもウォッチしていきたいと思います。