「こんないい歌、知らなきゃ損!」元ちとせの「死んだ女の子」は“平和の歌”!

 いい歌でありさえすれば必ずヒットする。これが歌の本来あるべき姿です。しかし、現実は強力なタイアップが付いていなければ売れない時代です。いかがなものか?と思います。この風潮に私はあえてアンチテーゼを投げかけたい。いい歌は売れるべきだし、たくさんの人たちに聴いてもらいたい。そんな“音楽愛”が私のポリシーです。

 「こんないい歌、売れない方がおかしいよ!」

アルバム『平和元年』が平和を思うきっかけになってくれればうれしい!

 2015年は終戦70年ということで、安倍総理談話が発表されたり、映画「日本のいちばん長い日」が封切られたりと戦争にまつわることが話題を呼びました。そんな中でかやの外に置かれていたのが「歌」です。

 今や時代は憲法改正へと向かっています。集団的自衛権の問題もあります。尖閣諸島や竹島、従軍慰安婦問題、さらにはテロとの戦いも抱えています。しかし、それと戦う「歌」がないのです。かつて1970年前後、岡林信康たち関西フォーク勢はベトナム反戦、学園紛争、安保反対闘争の嵐が吹き荒れる中で「今、歌わなければならないこと」をメッセージに託して歌いました。若者たちの政治や社会に対する強い反発や熱い思いが“反戦歌”を生んだのです。

 しかし、それから48年が経ち平和を願う「戦う歌」がなくなってしまいました。いかがなものか?と思っている矢先の2015年7月に、「ワダツミの木」というナンバーワン・ヒット曲で知られる元ちとせのアルバム『平和元年』を聴きました。選曲を見てびっくりしました。

第57回日本レコード大賞の企画賞を受賞した傑作『平和元年』。収録されている12曲すべてが心に突き刺さる。元ちとせというシンガーの底力を改めて痛感する1作だ。
第57回日本レコード大賞の企画賞を受賞した傑作『平和元年』。収録されている12曲すべてが心に突き刺さる。元ちとせというシンガーの底力を改めて痛感する1作だ。

 ベトナム戦争真っ最中の1967年にピート・シーガーが発表した「腰まで泥まみれ」、第2次世界大戦中に兵士たちの間で歌われた「リリー・マルレーン」、トルコの詩人、ナジム・ヒクメットが広島の惨状、東京大空襲による焼け跡を見て書き上げた「死んだ女の子」など、12編が反戦を願う「平和の歌」なのです。戦争を知らない世代、当時36歳の元ちとせがアルバムに込めた思いは何か? 2人の子供の母であり、故郷、奄美大島に生活拠点を置き独自のスタンスで活動を続ける彼女はこう語ります。

「戦後60年が経った05年、過去に戦争があったことを風化させないためと思い、坂本龍一さんとのコラボレーション曲『死んだ女の子』を発表しました。戦後70年を迎えた2015年、『平和を祈る思い』『忘れない、繰り返さないという思い』をシンガーとして歌い継ぎ、母として残していければと思い、レコーディングに臨みました。このアルバム『平和元年』が平和を思うきっかけになってくれればと思っています」

 元ちとせの「死んだ女の子」、こんないい歌、知らなきゃ損!