「こんないい歌、売れない方がおかしいよ!」Metisの「人間失格」は自問自答のすごい歌!

 いい歌でありさえすれば必ずヒットする。これが歌の本来あるべき姿です。しかし、現実は強力なタイアップが付いていなければ売れない時代です。いかがなものか? と思います。この風潮に私はあえてアンチテーゼを投げかけたい。いい歌は売れるべきだし、たくさんの人たちに聴いてもらいたい。そんな“音楽愛”が私のポリシーです。

 「こんないい歌、売れない方がおかしいよ!」

Metisの“心の叫び”が全編を貫いているすごい歌!

 歌は歌であって、実は歌ではない、という時代がありました。どういうことかというと、スタイルはあくまで歌なのですが、それを超えてしまう“何か”があったということです。

 換言すれば、歌が己の自己表現の一手段だったのです。かつて70年代フォークの時代は歌とはそういうものでした。歌にアーティストの生きざまそのものが反映され、聴き手である私たちは歌を聴いてアーティストの“生きざま”に共感を覚えたのです。

 ところが、年月は流れ、歌そのものが変わってしまったように思えてなりません。歌のスタイルはかつてのフォーク一辺倒の時代からロック、ポップス、ダンスミュージック、ヒップホップ、R&Bなどと多様化しましたが、そんななかで歌は、一口で言うなら“たかが歌”に成り下がってしまったのです。でもそれは「歌は音楽としての純粋性を取り戻した」というパラドックスでもあるのです。しかし、と考えてしまいます。いくら音楽性があったとしても、内容が希薄な歌が本当に歌なのか、と。今こそ歌は“原点”に立ち返るべきです。

7分28秒におよぶ大作「人間失格」は2011年発売のMetis9枚目のシングル。アルバム『ONE VOICE~Metis BEST~』にも収録されている
7分28秒におよぶ大作「人間失格」は2011年発売のMetis9枚目のシングル。アルバム『ONE VOICE~Metis BEST~』にも収録されている

 そんなふうに感じていた矢先にMetis(メティス)の「人間失格」を聴きました。すごい歌だ、と思いました。彼女の“心の叫び”が全編を貫いています。母子家庭に育った彼女は16歳のときに、母のがん手術の日、病院で立ち会うどころか、悪い友達と遊びに出かけたまま2週間も遊びほうけていました。世に言う“不良”でした。しかし、彼女は単なる落ちこぼれではなかったのです。現在自分が置かれている状況に疑問点を見出して、どうにかしなければともがき悩んでいたのです。「これでいいのか?」という疑問を感じ、それを対象にぶつけ、さらに自分自身に問いかける。そして現状ではダメだという思いが膨れ上がったとき、彼女は“悪”の世界から抜け出し、歌を歌い始めたのです。それ以降、彼女は自分の求めるものを、生き方を、真摯に追求した結果、26歳になって初めて自分の“心の闇”の中に眠っている“本音”にたどりつくことができたのです。それが「涙を忘れていませんか? 大事な事から逃げてませんか? 自分に嘘をついてませんか? 諦める事に慣れ過ぎてませんか?」というサビのフレーズです。このメッセージは聴き手の心情でもあるのです。だから、このメッセージを受け止めてどうするのか? と自分自身に問いかけたとき、聴き手はMetisそのものになってしまうのです。

 Metisの「人間失格」。こんないい歌、売れない方がおかしいよ。