「こんないい歌、売れない方がおかしいよ!」ワカバの「見せたいもの」は祖母への思いを素直に表現した歌!

 いい歌でありさえすれば必ずヒットする。これが歌の本来あるべき姿です。しかし、現実は強力なタイアップが付いていなければ売れない時代です。いかがなものか? と思います。この風潮に私はあえてアンチテーゼを投げかけたい。いい歌は売れるべきだし、たくさんの人たちに聴いてもらいたい。そんな“音楽愛”が私のポリシーです。

 「こんないい歌、売れない方がおかしいよ!」

孫のことを気にかける祖母と祖母を思いやる孫の思いやりがモチーフ!

グループは2016年に活動を休止してしまったものの、この名曲は今後も聴き継がれ、歌い継がれていくだろう。
グループは2016年に活動を休止してしまったものの、この名曲は今後も聴き継がれ、歌い継がれていくだろう。

 東日本大震災以降、自然と故郷志向となり、時代は“家族愛の歌”を必要としています。そんな中から2014年には、おじいちゃんとおばあちゃんが出会い、恋をして、結婚をして、子供を授かり、その子供が成長して独立し、そしてまた2人に戻って人生を完結しようとしている。そんなことを歌った吉田山田の「日々」が生まれました。そして翌15年には、ワカバの「見せたいもの」という病室で弱っていく、たくさんの愛をくれた祖母への孫の思いをストレートに表現した歌が生まれました。

 ワカバは亀田大、松井亮太、塚本信男からなる3人組ですが、異色なのはメンバー全員が介護福祉士の資格を持っていること。しかも塚本は現役の介護福祉士として従事しつつ音楽活動には作詞のみの参加だということ。いずれにしても介護の現場を知っているだけに彼らの描く歌の世界にはリアリティーがあるのです。

 「見せたいもの」は松井亮太の実の祖母をモデルにした歌で「祖母と孫の会話」がモチーフになっています。〈静脈の浮き出た腕〉〈冷めた夕飯〉〈バス停から続く坂道〉など情景を描いた歌詞が印象的。リアルな情景を描くことにより、聴き手はその姿を鮮明に想像できるのです。そして孫のことを気にかける祖母と、祖母の死が近いことを悟り、少しでも輝く自分の姿を祖母に見せたいと願う孫の思いやりが切なくも温かく描かれています。だからこそ〈いかないで まだいかないで〉というサビのフレーズの、消えゆく命に向き合う心模様が素直につづられた言葉が聴き手の心にじわじわと染み込んでくるのです。実際の介護現場を知るメンバーが詞を書き、歌い、伝える言葉の力は強い。この歌に元気づけられたり背中を押されたりする人たちはきっとたくさんいるはずです。

 ワカバの「見せたいもの」。こんないい歌、売れない方がおかしいよ。