ブラザーズ5が歌う「この街で」は同世代の私たちにとってこれ以上はない“人生応援歌”である!

2011年3月11日の東日本大震災以降、“故郷志向”が強まっている。故郷が突然なくなってしまったり、帰りたくても帰れない状況を見て、私たちは故郷のことを考えざるをえない。自然と故郷志向となり、家族、友だち、仲間、故郷の山や河や海や草原など、大切な人、大切な自然、大切な思い出などをふと考えてしまう。

時代は故郷志向!

大切な人、自然、思い出などに想いを馳せると、脳裏のスクリーンに大切にしまいこまれていた想い出の映像が蘇ると共に、懐かしい歌も響いてくる。「ふるさと」「赤とんぼ」「夕焼け小焼け」などで、タイムカプセルを掘り起こして宝石箱をあけたかのように鮮やかに流れてくる。これらの歌は子どもの頃に歌ったものだが、成長すると共に心の中にしまいこまれていつの間にか冬眠してしまい、長い間歌われることはなかった。しかし、大震災以降の故郷志向と共にリアリティーを持って蘇ってきた。と同時に今、ひそかに歌われている故郷志向の歌がある。それが第2の「ふるさと」か、と注目されている「この街で」である。

第2の「ふるさと」か?と注目されている「この街で」!

2005年3月3日、松山市で開催された日本ペンクラブ主催の「平和の日・松山の集い」にゲストで招かれた新井満は、本番前日に表敬訪問した松山市役所で「恋し、結婚し、母になったこの街で、おばあちゃんになりたい!」というコピーを見つけた。松山市の「だから、ことば大募集」で市長賞を受賞した桂綾子さんの作品だった。

「シンプルだけど心の深いところまで届いてくると感動して、そんな想いを話したら、市長さんから、このコピーをふくらませて、明日の“平和の日・松山の集い”でぜひ発表して下さいと頼まれたんです」

本番まで1日もないので徹夜で頑張ったが、曲が完成しないまま本番をむかえてしまう。結局、即興的に「この街で」は生まれた。その後、再演を求める声が市民から殺到し1000枚限定で松山市で発売されることになったが、反応は高まるばかりだった。

そこで新井盤が06年5月にリリースされた。さらに08年になると城之内早苗with布施明、フォー・セインツ、仲本工事と三代純歌など、10年になるとトワ・エ・モワなどがカバー盤を相継いで出す。カバーされるということは“いい曲”だという証拠。そして今年、満を持してブラザーズ5が“本命盤”をリリースした。

「僕にとって夢の世界です」(杉田二郎)

ブラザーズ5は杉田二郎、堀内孝雄、ばんばひろふみ、高山厳、因幡晃からなるスーパーユニット。彼らがカバー作品として選んだのが「この街で」だった。

「『この街で』っていう楽曲に関してはそれぞれが興味を持っていたんです」

と前置きしてから杉田二郎は言う。

「僕も以前からライブで歌わせてもらっていますが、『この街で』に出てくるストーリーがすごく純粋で理想形なんです。この街で生まれて、その街の人と恋をして、そして人生をまっとうしていくっていうことがなかなかできるようでできない。これは僕にとって夢の世界というか、きれいな世界なんですね。歌っていて心が洗われるんです」

この街で生まれて育ち、恋をして結ばれてお母さんになって、そしておばあちゃんになって、おじいちゃんになったあなたと歩いてゆきたい、と歌う「この街で」はまさしく私たちにとって理想の人生ストーリーではないだろうか。60歳を過ぎたブラザーズ5が歌う「この街で」は同世代の私たちにとってこれ以上はない“人生応援歌”と言っていい。歌の主人公に思いを託しながら前向きに歩んでいこうという勇気も与えてくれる。これぞ良質な〈大人の歌〉である。