ウクライナのために折り鶴を送る行為に対し、2ちゃんねる創設者のひろゆき氏と、メンタリストのDaiGo氏が否定的な発言を繰り返したことが波紋を拡げているようです。

参考:ひろゆき氏&DaiGo「折り鶴論争」の裏で“気づくべき視点”

報道によると、この二人の発言に影響されたためか、千羽鶴の寄付を申し出た施設に、多数の誹謗中傷の電話がかかってきてしまっているそうです。

実はこの「千羽鶴論争」は、現在のネット上のメディアの構造問題が分かりやすく出ていますので、詳細をご紹介したいと思います。

二人の問題提起で批判が拡大

この騒動はもともと、朝日新聞に埼玉県の支援施設である「レイズアップ」の利用者が、ウクライナの大使館に千羽鶴を届けるために、折り鶴を折っているという記事が出たことが起点になっています。

参考:「頑張っている人に届けたい」 ウクライナの人々へ折り鶴4200羽

その記事にリンクする形で、ひろゆき氏が「千羽鶴とか『無駄な行為をして、』良い事をした気分になるのは恥ずかしい事である。』というのをそろそろ理解して貰いたいと思うのはオイラだけですかね?」と折り鶴を批判する形でツイート。

この発言に重ねるように、DaiGo氏が「愚者の行動」とさらに激しい言葉で折り鶴を送る行為を批判することで騒動が拡大しました。

結果的に、こうしたツイートや二人のYouTubeでの発言が、様々なメディアで取り上げられたこともあり、前述のように折り鶴行為を批判する電話が、埼玉県の施設にむけられる結果になってしまったようです。

実際に千羽鶴を渡すイベント配信が開催

一方で、こうした誹謗中傷行為に対する問題提起として、この週末には逆にウクライナの方々に直接折り鶴をお渡しするイベントが配信されました。

この企画は、ツイッター上で「じっちゃま」として知られる広瀬隆雄さんや、外国人と日本人を「むすぶ」ライブ配信プラットフォームとして運営されているおむすびチャンネルが中心に実行されたもの。

有料の会員でしか見られない配信サービスであり、アーカイブを視聴することはできないようですが、折り鶴を受け取られたウクライナの方の感謝のツイートもあがっており、「千羽鶴」を折るという行為に平和への祈りを込めるという意味があることが伝わる企画になっていたようです。

また、おむすびチャンネルの機能を使って寄付もできる仕組みになっていたようで、千羽鶴の受け取りをイベント化することで、人々にウクライナのことをあらためて考えてもらう良い構造になっていたようです。

本来であれば、今回のイベントのように、1つの繋がりを作る出来事として開催されるはずだった千羽鶴が、なぜ苦情電話が施設に殺到するほどの問題になってしまったのか。

ここに現在のメディアの報道をめぐる構造問題があります。

震災などのたびに指摘されてきた千羽鶴問題

当初のひろゆき氏の折り鶴に対する問題提起は、ながらく日本で地震で被災された方に千羽鶴が送られて現場が困惑するというケースが多発していたことを背景にしたもので、賛同する方が多い意見であるのは間違いありません。

実際に安藤優子さんなど、千羽鶴への問題提起に賛同している意見も複数見られるのも事実です。

参考:安藤優子氏 ウクライナへの〝千羽鶴〟に「本当の支援になるかは全く別の問題」

相手が希望していない状態で大量の千羽鶴が届いたとしたら扱いに困るのは間違いありませんし、実際に震災の時に困った方々がおられたために、ネット上でも千羽鶴に対して批判的な意見が多いようです。

当然、ウクライナの戦地の方々にとっても、現在最も必要なものは武器や食料などの優先度が高いもので、千羽鶴を必要としている方はほとんどいないというのが実際でしょう。

千羽鶴を折る時間でアルバイトをしてそのお金を寄付する方が、論理的にはウクライナの人の支援につながるのは事実です。

誤解により、千羽鶴送りつけの象徴となった支援施設

ただ、一方で今回誹謗中傷の対象になってしまった「レイズアップ」は、「障害者就労移行支援施設」であり、折り鶴を折っていたのは「作業の合間」だったというのが重要なポイントです。

つまり、まだ就労していない方々だから、当然多額を寄付するような金銭的な余裕はない方々だと想像できます。

就労のための準備をしているわけですから、アルバイトをする時間もないでしょう。

それでも、ウクライナ侵攻のニュースを目にして自分達にできることが何かないかを模索した結果「作業の合間」に、折り鶴を折るという選択をしたわけです。

しかも、いきなり千羽鶴をウクライナに送りつけようとしていたわけではなく、大使館側に事前に確認もしていたようです。

参考:メンタリストDaiGoが「ウクライナに折り鶴送るは狂気」発言 誹謗中傷に苦しむ施設関係者の本音

朝日新聞の記事をよく読むと、それらの事実を確認することができるのですが、ひろゆき氏とDaiGo氏はそれを知ってか知らずか、総論としての被災地への千羽鶴の送りつけを想定した批判をツイッターやYouTube上で展開していたようです。

その結果、本来であればウクライナ大使館も合意の上で歓迎されていたはずのレイズアップの千羽鶴が、誹謗中傷の対象となることになってしまいました。

ウクライナ大使館やウクライナの人々としても、日本の人々が何らかの形でウクライナへの支援を表明することは意味がある行為ではあるはずで、千羽鶴もおむすびチャンネルのイベントのような適切な形で渡されれば、寄付を増やすきっかけにもなるわけです。

その善意の行為に対して誤解で誹謗中傷がされるというのは、本当に残念としか言いようがありません。

過激な発言を多くのメディアが記事化する構造

もちろん、当然ながら二人にも言論の自由がありますから、こうした発言をするのは自由です。

ただ、この二人の発言が誹謗中傷の電話まで引き起こしてしまったのは、こうした二人の発言を基に記事が量産される現在のメディア構造にあると言えます。

実際、二人の発言がされた後、複数のメディアが二人の発言をタイトルに入れた記事を量産しています。

Googleニュースで検索しただけでも、実に数十本の記事を見つけることができ、そのほとんどが詳細の事実関係に踏み込んでいませんでした。

しかも、大体のメディアは元記事である朝日新聞の記事やひろゆき氏のツイートにリンクすらせずに、千羽鶴は問題だという部分だけを報道している記事が多いようです。

そうした記事を見た方々が、レイズアップの千羽鶴も、受け取り側の合意がない迷惑行為と判断し、誹謗中傷の電話をかけるまでに至ってしまうのは、ある意味必然と言えるかもしれません。

過激な発言で収入が得られるインフルエンサーの構造

ひろゆき氏やDaiGo氏は、YouTubeに大量の登録者がおり、その動画の再生回数で収入が入るなど、影響力自体が収入に伝わるいわゆる「インフルエンサービジネス」を収入源の1つにされています。

こうした方々は、多少敵を作ってでも、はっきりと自分の意見や立場を明確にした方が、敵の敵が味方となってファンが増えるという構造にあります。

そのため、組織に所属する人間では難しい過激な発言もされるのが、メディア側の魅力の1つと言えるでしょう。

DaiGo氏が過去に「ホームレスの命どうでもいい」という発言で炎上したにもかかわらず、すぐに活動を再開して今回のように過激な発言を継続できるのは、DaiGo氏がテレビ出演やCM出演など、過激な発言によって契約を打ち切られるような立場ではないからとも言えるわけです。

参考:DaiGo、炎上した「ホームレスの命どうでもいい」発言を反省 「酒の力で愚痴が入ってしまった」

こうした方々は過激な発言自体が売り物ですから、彼らに過激な発言を控えるように、というのは無理な注文になるわけです。

メディアの過激な発言の記事化は誹謗中傷の共犯では

一方で、メディアは彼らの名前をタイトルに入れることで、彼らのファンもアンチも自社の記事に誘導することができるため、彼らの過激な発言をすぐに記事化することで記事のアクセスを稼ごうとする構造にあります。

当然、発言した責任はインフルエンサーや芸能人側にあるわけで、メディア側は発言のリスクを取らずにその発言の記事を作れるとも言えます。

ただ、その結果、今回のように障害者を支援する施設への誹謗中傷が誘発されていると考えると、現在のメディアの著名人の発言だけで記事を作成するいわゆる「こたつ記事」が、今回の誹謗中傷の共犯になってしまっている、と言うのは言いすぎでしょうか。

近年は、ネット上の誹謗中傷を規制するための議論が継続して行われていますが、このままの状態が続くと誹謗中傷の起点になるメディアの記事の乱発についても、議論の対象にする必要が出てくるように感じます。

実は、折り鶴に関する議論が紛糾した結果、ひろゆき氏も「強い言葉を使う事で、多く知れ渡り間違った行為をする人を将来的に減らせると思ってるおいらです。」とあえて強い言葉を選択していることを示唆しています。

その強い言葉を記事に引用するメディア側も、この前提を踏まえておく必要があるように思います。

今回は、善意の行為をしようとしていた障害者支援施設に、誤解による誹謗中傷が多発するという本当に残念な事態になってしまいました。

今後、このようなことのないように、是非メディアの方々には、ひろゆき氏やDaiGo氏のようなインフルエンサーの過激な発言を記事化する際には、その裏側の視点までカバーするようにして頂きたいと強く祈ります。