この2ヶ月間、ネット業界で流行語大賞のように急に話題になっているのが「メタバース」というキーワードです。

「メタバース」とは、最近ネット上で注目されている仮想空間や仮想世界を提供するサービスを総称する言葉として使われ始めているキーワードで、昨年ぐらいから徐々に使われるようになっていた業界用語でした。

それが、7月末にFacebookのザッカーバーグCEOが「メタバース」企業を目指すと宣言したことで、一気に言葉の認知度がアップ。

様々な企業が、「メタバース」への参入を明言しているのです。

「メタバース」という言葉は聞いたことがなくとも、7月に公開された映画「竜とそばかすの姫」や、細田監督の過去作「サマーウォーズ」が描いているのがまさにメタバース的世界、と言えば世界観がイメージできる方は少なくないのではないかと思います。

ここで日本人として気になるのは、この「メタバース」において日本企業は存在感を見せることができるかどうかでしょう。

20年近く挑戦が続いてきた「仮想空間」サービス

なお、多くの方が誤解しているようですが、「メタバース」という概念への挑戦は今にはじまったものではありません。

古くは日本でも2007年頃に非常に注目された「Second Life」は、現在もサービス運営を継続しており「メタバース」的なサービスの先駆けと言えます。

また、仮想世界的なゲームはすでに複数存在しており、任天堂の「あつまれ どうぶつの森」も1つの「メタバース」だと定義することができます。

ただ、現在「メタバース」が非常に注目を集めているのは、Oculus QuestのようなVR端末や技術の進歩、さらにはNFTと呼ばれるブロックチェーン技術を活用したデジタルアイテムの取引の可能性により、「メタバース」が現実世界同様のもう一つの「世界」になる可能性が見えてきているからです。

参考:いまさら聞けない「メタバース」 いま仮想空間サービスが注目される“3つの理由”

現実のオフィスの再現に挑戦するFacebook

当然ながら、現時点でこの「メタバース」の本命と目されているのは、冒頭でご紹介したFacebookをはじめとした海外の大手ネット企業です。

特にFacebookは、VRゴーグルを開発するOculusを買収し、この数年着々とVR世界のレベルアップに投資してきました。

すでにVRゴーグルにおいてはダントツのシェアを誇っているとみられ、自らHorizon Workroomsというオンライン会議用のサービスも開発するなど、VRゴーグルを入り口とした「メタバース」において、技術的には抜きんでた存在になっていると言えます。

参考:Facebookが火をつけた「メタバース革命」は、スマホの次の時代の扉を開くか

現在のところ、Horizon Workroomsはエンタメの要素はほぼなく、Zoom会議のVR版というべき状態ですので、面白みがないという指摘も少なくないようですが、現実をいかにVR空間に再現するかから取り組むのは、実名SNSのFacebookらしいアプローチと言えます。

ゲームからメタバースに拡張する「フォートナイト」

一方で、広い意味での仮想空間としての「メタバース」で、すでに圧倒的なユーザーを集めているのがバトルロワイヤルゲームの「フォートナイト」を運営するEpic Gamesです。

Epic Gamesといえば、アプリ販売の手数料をめぐってAppleと激しい訴訟合戦を繰り広げていることでも知名度を上げましたが、「フォートナイト」の登録アカウント数はすでに5億を超えるといわれています。

もちろん「フォートナイト」は基本的にはゲームがベースとなっていますし、VRゴーグルを使うタイプの仮想空間ではないので、「メタバース」と言われてもピンと来ない方も少なくないかもしれません。

ただ、実は「フォートナイト」では昨年米津玄師さんがオンラインコンサートを実施して話題になったように、バトルロワイヤルゲーム以外の楽しみ方で楽しんでいるユーザーも増えています。

なにしろ、2020年に実施されたトラビス・スコット氏のバーチャルコンサートでは、同時接続数は1230万人だったと言いますから、既に小さな国家並みの人たちが参加している仮想空間と言うこともできるわけです。

参考:米津玄師による日本人初のフォートナイトライブ挑戦が秘める可能性

また、仮想空間を作れるゲームと言えば、マインクラフトやXBOXを保有しているマイクロソフトも見逃せない存在となっており、メタバースはネット大手企業による次の戦いの場となりつつあるのです。

様々な日本企業もメタバース事業に挑戦

もちろん、日本企業もこうした世界的なトレンドを黙って見ているわけではありません。

ゲームという視点で言えば、前述したように任天堂も「あつまれ どうぶつの森」は累計販売本数は3,200万を超えており、JTBがJTB島を公開するなど企業活用の模索もされています。

また、ソニーグループはEpic Gamesに累計で少なくとも4億5000万ドルを投資しており早くから「メタバース」の可能性に目をつけていたといえるでしょう。

さらに、日本におけるメタバース推進者の一人であるgumi創業者の国光さんは、gumiを退任し「ソード・オブ・ガルガンチュア」などのVRゲームを手がけるThirdverseの代表取締役としてメタバース事業に注力することを宣言されています。

参考:メタバース実現へ「Thirdverse」20億円調達、國光宏尚氏が代表取締役に就任

ゲームから「メタバース」へのアプローチは、日本のゲーム企業にとっても重要な挑戦分野と言えるでしょう。

アニメ的メタバースで世界に勝負

また、ゲーム以外でも独自のアプローチを取る日本企業の活動も見えてきています。

例えば、GREEグループは子会社の「REALITY」が提供するスマートフォン向けバーチャルライブ配信アプリを軸に、メタバース事業に注力することを宣言しました。

「REALITY」では、通常のライブ配信とは異なり、アニメ調のアバターを使ったライブ配信を提供しており、若者を中心に人気を博しています。

さらに、すでに海外展開を本格的に開始しており、アクティブユーザーの8割以上が海外のユーザーとなっているそうです。

参考:「REALITYは世界で大きく成長する可能性がある」--グリーが狙うメタバース事業の勝算

こうしたアニメ的な世界観の「メタバース」においては、日本企業が独自の市場を構築できる可能性を示している1つの良い事例と言えるでしょう。

映画「竜とそばかすの姫」や「サマーウォーズ」のような「メタバース」をイメージされる方は、FacebookのHorizon Workroomsのような世界観より、「REALITY」の方に親近感を感じる方が少なくないはずです。

世界の3Dモデルを無料公開する取り組みも

さらに、メタップス創業者と知られる佐藤航陽さんは、株式会社スペースデータにおいて衛星データからバーチャル空間に世界を自動生成するAIを開発。

なんと、自動生成された地球の様々な地域の3Dモデルを公開していき、誰でも無料で使えるように無償提供していく予定だと発表しています。

参考:スペースデータ、衛星データからバーチャル空間に世界を自動生成するAIを開発。

こうしたデータが、無償で公開されれば、「REALITY」のようなアニメと、現実の渋谷やニューヨークの町並みが組み合わさった「メタバース」が実現するのも、遠い未来の話ではないわけです。

「メタバース」が、現在のインターネットのように様々な企業がつくった空間が相互につながる形になるのか、インターネット以前のパソコン通信のように企業ごとに全く別の空間になるのか、今の段階では分かりません。

ただ、パソコンからスマホへのシフトの時に見られたように、サービスのインフラが変わるタイミングは、新しい企業にとって大きなチャンス。

日本企業にもさまざまな可能性があるのはまちがいありません。

また、こうした様々な企業の努力により、様々なメタバースが生まれてくれば、「サマーウォーズ」や「竜とそばかすの姫」で描かれていた主人公達のように、現実世界よりも仮想世界の方が自分の才能を発揮できるという人も間違いなく増えてくるはず。

私たちが映画でみていた世界は、すぐそこまで来ています。