Yahoo!ニュース

河野大臣のブロック祭り騒動で改めて考える、ブロック機能が両刃の剣である理由

徳力基彦noteプロデューサー/ブロガー
2018年にモスクワで開催された日露2プラス2 でスマートフォンを使う河野大臣(写真:ロイター/アフロ)

自民党の総裁選挙への注目が高まる傍ら、次期総裁の有力な候補として名前が挙がっている河野太郎大臣が、ツイッターのブロック機能を使っていることが注目され、ちょっとしたお祭り騒動になっていました。

参考:「#河野さんにブロックされています」がTwitterでトレンド入り

詳細は上記の記事にも書かれていますが、経緯を簡単にご説明すると、9月6日の深夜に一部ツイッターユーザーが「#河野さんにブロックされています」というハッシュタグをつけてツイートをはじめたようです。

それをきっかけに、9月6日の深夜から早朝にかけて河野さんの批判者と支持者の両方が、このハッシュタグを軸に持論を多数ツイートする展開に発展。

(「#河野さんにブロックされています」のツイート数推移 出典:Yahoo!リアルタイム検索)
(「#河野さんにブロックされています」のツイート数推移 出典:Yahoo!リアルタイム検索)

その結果、9月7日の朝の段階で「#河野さんにブロックされています」というハッシュタグがツイッターのトレンド入りし、さらに多くの人たちがこの話題を議論する状況になったようです。

その状況に対してコメントを求められた河野大臣が、「(ブロック機能を使うことに)問題はないというふうに思っている。」というコメントをした冒頭のABEMA TIMESの記事が、Yahoo!トピックス入りしたこともあり、この騒動がさらに多くの人の目に触れる結果になったようです。

Yahoo!リアルタイム検索で、ハッシュタグの投稿をさかのぼってみると、実はこのハッシュタグが投稿されたかなり初期の段階から、ブロック機能を使うことに問題はないという意思表明や、河野大臣がブロック機能を使うことを非難すること自体がおかしいという意見を表明しているツイートも多数あります。

ただ、それらのツイートも「#河野さんにブロックされています」というハッシュタグをつけてツイートしているため、河野大臣にブロックされている人が非常に大勢いるような印象にもなってしまったようです。

ある意味、河野大臣の視点からすると、河野大臣の支援者が河野大臣を擁護しようと反論してくれた結果、かえって火に油を注いでしまった形になってしまったと言えるかもしれません。

公的な職務にある人がブロック機能を使うことの是非

なお、河野大臣のように公的な職務についている方が、ブロック機能を使うことに対する議論は、今に始まったことではありません。

過去にも、河野大臣にブロックされた沖縄タイムスの記者の方が問題提起をしたことがあり、今回の騒動もその延長と見ることもできます。

参考:ブロックされた「沖縄タイムス」記者が問う、河野太郎防衛相のツイッター何が問題か

また、こうした議論に対する最大の事例は、アメリカの大統領だったトランプ氏がツイッターのブロック機能を使うことに対して、米国の裁判所が違憲であるという判断をくだしたケースでしょう。

参考:米トランプ大統領、「Twitterブロックは違憲」判決に再審理を求める

この訴訟は、最終的に最高裁で無効という判断が下されたようですが、公職に就く人間が、公務にツイッターを使うのであれば、ブロック機能を乱用するべきではないという意見の論拠になっています。

参考:トランプ前大統領のTwitterブロックめぐる訴訟、米最高裁が無効と判断

今後、日本でも同様の議論が進むでしょうし、場合によってはアメリカ同様に訴訟がされることもあり得るのかもしれません。

ただ、現時点の日本では、ある程度公人であっても誹謗中傷のようなコメントを目にすることを避けるために、悪質なユーザーに対してはブロック機能は使ってもよいと考える方が多いでしょう。

実際に、現時点で、野党側など他の政治家から、今回の河野大臣の発言に対する批判の声が大きく聞こえてこないのは、自らもブロック機能を使っている方が多いからではないかと推測されています。

ブロック機能を使う前に検討したい5つの選択肢

ただ、実はブロック機能というのは、今回河野大臣がはからずも直面したように、誹謗中傷への対応として複数ある選択肢の中では、リスクが大きい手段になります。

オリンピック開催に関連しても、選手への誹謗中傷が問題になりましたが、同様の問題に悩んでいる方は多いかと思いますので、ここでツイッター上におけるこうした誹謗中傷に対する対応方法をご紹介しておきたいと思います。

ツイッターでは、ユーザーが誹謗中傷や粘着行為などを避けるために複数の機能が提供されており、それらを組み合わせると、選択肢は大きく下記の5つがあげられます。

■1.スルーする

■2.ミュート機能を使う

■3.ブロック機能を使う

■4.通報機能を使う

■5.法的手段を使う

1つずつご紹介します。

■1.スルーする

ネットの匿名掲示板の時代から、インターネット上の誹謗中傷に対する基本テクニックとして言われてきたのが「スルーする技術」です。

要は、ネット上で議論をふっかけられたり誹謗中傷をされたことにたいして、やっきになって反論したところで、かえって相手を喜ばせたり本気にさせるだけで良いことはないから無視するという趣旨です。

ほとんどの批判的なコメントは、たまたま相手が自分の投稿を目にしてしまったことにより発生すると考えると、今でも基本的な選択肢の一つではあります。

ツイッターの機能や第三者に頼らないという意味では、あくまで心の強い人向けということも言えます。

■2.ミュート機能を使う

ただ、本来はスルーだけで済めば話は早いのですが、最近は残念ながら、議論の内容によっては自分に対して批判的な人がわざわざ自分のアカウントをフォローして、執拗に批判的なコメントを繰り返してくる場合があります。

その場合にまずオススメしたいのが、このミュート機能です。

相手のツイートを選択し、右上の「・・・」メニューを選択すると、相手の投稿をミュートするという選択ができます。

これを使えば、自分のアカウントでログインした状態で、相手の発言が表示されることがなくなります。

しかも、後述するブロック機能と異なるのは、相手にミュートしたことが分からない点です。

つまりツイッターが、強制的にそのアカウントのツイートを完全スルーしてくれる状態になるわけです。

■3.ブロック機能を使う

ミュート機能よりも更に一歩進んで、相手を完全にブロックするのがブロック機能です。

ミュート機能では、自分に相手のツイートが見えなくなるだけですが、ブロック機能を使うと、相手も自分のツイートが見えなくなります。

つまり、相手にブロックしたことも知られてしまうわけです。

なお、メディアに掲載された河野大臣の発言を読んでいると、「ブロックされてもツイートを見ることは普通にできる」と発言されていますが、これは少し誤解を生む発言でしょう。

正確には、ブロックされた相手は、ログインした状態ではツイートは見られなくなり、ツイッターをログアウトした状態でブラウザ等で閲覧する必要が出てきます。

例えば上記のワクチンに関するブログのツイートなど、ブロックされた相手は河野大臣経由の最新情報などを入手しにくくなりますし、トランプ氏の訴訟で議論になったように、ツイート上での議論に参加する権利を失うことになります。

ある意味、ブロック機能は両刃の剣ということもできるのです。

ミュートという言葉よりもブロックという言葉の方が日本人には分かりやすいこともあり、何か問題が発生するといきなりブロック機能を使う方が多いようですが、実は相手の発言を見たくないだけであればミュート機能を使う方が安全ということも言えます。

■4.通報機能を使う

なお、相手のアカウントの誹謗中傷や悪質行為が度を越している場合は、ブロック機能等とあわせて通報を行うことも重要です。

ミュート機能やブロック機能で、自分をある程度守ることはできますが、それによって悪質なアカウントが活動を継続すると、他のアカウントに今後同様の行為をする可能性があります。

通報が複数ツイッター側に届くことによって、ツイッター側がそのアカウントを調査したり、アカウントを停止してくれることにもつながります。

なお、通報機能を使うには、相手のアカウントやツイートを表示して「報告する」というメニューを選択してください。

■5.法的手段を使う

ただし、ツイッターの通報機能は、嫌いな相手同士や対立関係にある二つの集団がお互いに組織的に通報し合うなどの行為にも使われがちですので、通報しただけですぐに状況が改善するとは限りません。

本当に深刻な誹謗中傷や殺害予告などの犯罪行為に遭遇した場合は、警察や弁護士などの法的手段の活用を検討したほうが良いでしょう。

木村花さんの母である木村響子さんや、周囲の支援者による地道な活動により、社会における誹謗中傷に対する姿勢や法律も大きく変化しようとしています。

参考:木村花さんの悲劇から1年。誹謗中傷を減らすために私たちができること。

本当に悪質な誹謗中傷には、断固として立ち向かう必要があると感じます。

ただ、当然、こうした行為には手間もお金もかかるケースがありますので、最後の手段ではあります。

また、スラップ訴訟と呼ばれるような嫌がらせ訴訟を行うことは本末転倒ですので、ご注意下さい。

ブロック機能は両刃の剣

ブロック機能が、誹謗中傷や批判的投稿に対する一つの選択肢であることが分かっていただけたでしょうか。

前述したように、ブロック機能は相手に自分のツイートが見えなくなり、相手にブロックしたことが伝わってしまうという意味で両刃の剣と言えます。

誹謗中傷をしてきた相手をブロックすることによって、相手がエスカレートすることも考えられますから、実は注意して使うべき機能と言えるのです。

河野大臣は、2010年から10年以上ツイッターを活用しており、約240万人という日本の政治家でもトップクラスのフォロワー数を誇るツイッター活用のプロですから、おそらく今回のような騒動になることも覚悟してブロック機能を使われているんだろうと思います。

河野大臣にリプライをしたこともないのにブロックされていて驚いている人も少なくないようですが、河野大臣は日本随一のエゴサーチの達人として知られています。

参考:河野大臣のTwitterエゴサ能力に全ネット民が驚愕「ステルス河野太郎チャレンジ」も話題

エゴサーチの過程で、当然誹謗中傷や批判コメントも多数目に入ってくるはずで、そうした投稿主の発言が2度と目に入らないように投稿主自体をブロックする気持ちは、類似の状況を経験したことのある人間なら良く分かるはずです。

ただ、これはあくまでツイッター上級者の河野大臣の選択。

皆さんが誹謗中傷や悪質な投稿に直面した際には、いきなりブロック機能を選択せずに、スルーやミュート機能から始めることをオススメします。

相手にミュートしたことが伝わらないミュート機能と異なり、ブロック機能というのは、相手に面と向かって「あなたとは永遠に話したくない」と伝えるのと同じ結果を生むリスクがあるのです。

それにより、今回の「#河野さんにブロックされています」騒動のように、相手がブロックされたことをまわりに言いふらしたり、ブロックされたことを根に持たれて別の方法で攻撃してくることにもつながりかねません。

くどいようですがブロック機能は両刃の剣。

是非、相手や自分がブロックされたときの気持ちを想像して、ブロック機能を使うようにして下さい。

noteプロデューサー/ブロガー

新卒で入社したNTTを若気の至りで飛び出して、仕事が上手くいかずに路頭に迷いかけたところ、ブログを書きはじめたおかげで人生が救われる。現在は書籍「普通の人のためのSNSの教科書」を出版するなど、noteプロデューサーとして、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNSの活用についてのサポートを行っている。

徳力基彦の最近の記事