本を駆逐するのはYouTubeか

ビジネス書はYouTubeに駆逐されてしまうのか ※画像は著者撮影

 筆者はキャリア30年のビジネス書作家だが、昨年YouTubeをスタートした。こちらにも書いたように、雑誌の仕事が壊滅したので動画配信をはじめたのが当初の思惑だった。

 ところが、YouTubeを始めてみると、情報を伝えるコンテンツとして書籍より優れているのではないかと思うようになってきた。物事の説明の何割かは、文字+図解の本よりも、動画の方が理解しやすいのではないかと思い始めたのだ。10ページの本を読むより、その内容を説明した動画を見る方が楽だ。

 また、収録者の人格や感情が伝わりやすく、共感したり、反感を持ってもらえる割合が書籍より大きい。つまり、伝えやすいのだ。

タッチポイントが少なすぎる

 そもそも、書籍を駆逐するのは電子ブックだと思ってきた。1995年頃からインターネットが普及し、多くのWebサイトが公開された。雑誌はその影響をもろに受けて、廃刊に追い込まれたものが少なくない。昔は、映画やテレビの情報を集めるために雑誌を購入したものだ。今や、中古車や賃貸住宅を含め、あらゆる情報探しに、インターネットが当たり前のように使われている。地図帳を買う人も激減した。

 そんな状況でも、ビジネス書は昔よりは部数を減らしたとはいえ、それなりに元気がある。つまり、ウェブには駆逐されなかったのだ。書籍とウェブではさほどわかりやすさが変わらなかったということだろう。速報的な情報を求める雑誌と、まとまった解説を読む書籍との違いだ。

 それでも、最近は、あまりにも書店が減っているのが痛い。つまり、売り手がプッシュしたりSNSなどで話題になった本しか売れなくなっているのだ。暇な時間にふらりと書店に立ち寄って本を買うという行為がしづらくなった。本が売れないから書店が減り、だからよけいに売れなくなるという悪循環が加速しているのは、ご存じの通りだ。

YouTubeのロングテールはビジネス書にも向く

 そもそも、本には決まったパッケージがある。ページ数や判型がほぼ決まっており、その枠を大きく越えたり、少なすぎる情報は流通できない。だから、5ページで終わるような情報はお届けできないのだ。ところが、YouTubeには、量の制限がほとんどない。短い動画が多いだけでなく、30分の動画を5本作成して、書籍並みの情報量にしてもいい。つまり、「本として成立する」ということを考えなくていいわけだ。

 また、本が成り立つためには、一定の部数が売れる必要がある。3000~1万部程度は売れることが見込めないと出版はできない。ところが、YouTubeなら3分の動画を500名が見てくれるだけでもいい。そんな動画を100本作れば、5万回再生され、それなりの収益になっていく。しかも、動画は延々と再生され続けるので、数年後には、合計で数十万回の再生になる可能性も少なくない。

 ところが、500名しか見てくれない3ページの内容を100本集めても価格は合わず、高価すぎる本になって売れない。

 思い通りに情報をお届けできない本というパッケージが、もう古くなっているように思えてならない。しかも、前記のように、動画の方が内容がわかりやすいケースも少なくない。

売れた本しか作ろうとしない

 出版社は、当然ながらビジネスなので売れる本を作ろうとする。結果、現在では類書のオンパレードになっている。類書がない本は企画を通しづらく、出版がしづらい。ヒットした本が出ると、似た本が書店に並ぶことになる。

 書店では、棚の奪い合いが起こっているために、数ヶ月間売れないともう目立たない位置に追いやられてしまうか返品になる。つまり、予想以上に短期間しか売れないのだ。

 僕がYouTubeにアップした動画の中には、1ヶ月ほど鳴かず飛ばずだったのに、突然7万回以上再生されたものもある。書籍では、こんなことはめったに起こらない。タッチポイントが少ない上に、棚からも下げられてしまうので、長期間売れる可能性があるのはアマゾンくらいのものだ。

 それでも、たまに話題になる古い本があるが、YouTubeに比べるとレアケースだ。

鳴かず飛ばずだったこの動画は、急に7万回以上再生された
鳴かず飛ばずだったこの動画は、急に7万回以上再生された

著者と読者がつながれない

 書籍では、感想などをハガキもしくは、メールで編集部に届け、編集者が必要に応じて著者に渡すというゆっくりとしたやり方を続けている。YouTubeではコメントが付いたら即返事をすることができ、ファンになってもらえる。もちろん、アンチといいながら動画を見てしまう人もファンの一部だと考えられる。コメントは次の動画を作ったり反省するヒントになる。

 さらに、視聴者の反応が時間単位でわかるので次の動画の参考にできる。ユーザー層や視聴時間、途中離脱の様子もわかるので、次の動画のクォリティ向上に繋げやすい。本ではそんな情報がほとんどわからないのだ。

 本は、出版社に企画を提示し受諾されてから執筆し、編集者が手を入れてようやく書店に並ぶ。内容は、基本的に正しく、全員が責任を持って仕事をしている。本を出すのは大変な作業なのだ。これにより、内容が正しく情報として高い価値を持っている。

 ところが、YouTubeは伝えたい人が動画を撮影し、ほぼ自由にアップロードできる。内容は玉石混交としかいいようがないが、良い動画は順調に見られていく。つまり、見る側がスクリーニングをしているのだ。本のような一律なレベルは望めないが、良いものは評価される。

 これまで、YouTubeは若年層が楽しみに見るものだと思っていた人も少なくないだろう。だが、これからは、説明や解説の動画もどんどん数を増していくことは間違いない。YouTubeが書籍を駆逐する可能性は、自分で両方を手がけてみて、少なくないと感じている。

 それでも、僕は本を愛しており、出させていただけるなら、書き続けたいと思う。

 今後は、動画の内容をより詳しく書籍で説明する流れが、本を救う道だと考えている。ウケている動画を本にすれば、ヒットも見込めるだろう。ブログの書籍化は、どちらも文字なので内容が同じになってしまう。だが、動画の書籍化なら、コンテンツが違うので成立しやすいと思うのだ。なお、同じ内容はこちらのYouTubeにもアップロードしているので、テキストと映像の違いをご覧いただくと興味深いと思う。