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英語入試改革、メディア報道や大臣の発言をきっかけに文科省前抗議運動に発展

寺沢拓敬言語社会学者
文科省前抗議の様子(撮影:ポールおじさん @tqc_4)

私のヤフーニュース個人の記事でも何度も扱っている大学英語入試改革における民間試験導入。反対運動が盛り上がっていることは何度も記してきたが、新たなフェイズに入っているので、ここ数ヶ月の経過を整理しておこう。

とくに、8月末からの抗議運動については、大手メディアではあまり報道がなされていないようなので、ここに記しておく価値があると思う。

数ヶ月前は、教育関係者および学者の間での反対運動だったものが、徐々に裾野を拡大し、市民運動の様相を呈してきた感がある。

2019年6月18日(火) 国会請願

研究者を中心に、民間試験利用入試の延期を求める国会請願書を提出。院内集会と記者会見も開く。

「英語民間試験、利用中止を」 学識者らが国会請願 (写真=共同) :日本経済新聞

7月2日(火)TOEIC、民間試験から撤退を発表

TOEICが撤退すると発表し、激震が走った。「大きな綻び」が初めて顕在化した。詳細は以下。

TOEIC撤退ショック ― 大学入試共通テストに参加せず(寺沢拓敬) - 個人 - Yahoo!ニュース

7月~ 報道の増加

6月以前の段階ではメディアはほとんどこの問題について注目してこなかったが、7月から報道が急増し始める。

新聞データベースで「社説 AND 英語」の見出し検索を行った結果(無関係のものは目視で除外)が以下。ここでは社説だけに限定しているが、報道記事はこの数十倍に及ぶ。また、社説の増加はとくに8月末から加速している様子。

  • 信濃毎日新聞 2019.07.08 社説=英語民間試験 今ならまだ立ち止まれる
  • 朝日新聞 2019.07.30 (社説)大学入試英語 受験生の不安に応えよ
  • The Asahi Shimbun AJW 2019.07.30 EDITORIAL: Concerns linger over English tests for university admission system
  • 読売新聞 2019.08.17 [社説]英語入試新方式 学校現場の懸念を受け止めよ
  • 毎日新聞 2019.08.22 社説:大学新テストの英語 混乱収拾へ手立てが必要
  • 信濃毎日新聞 2019.08.28 社説=英語民間試験 導入を無理押しするな
  • 京都新聞 2019.08.29 社説 英語民間試験 受験生を困らせぬよう
  • 沖縄タイムス 2019.08.29[社説]共通テストの英語/受験生の不安解消せよ
  • 中国新聞 2019.08.30 社説 大学入試英語 見切り発車 許されない
  • 熊本日日新聞 2019.08.30 社説=英語の民間試験利用 受験生の不安解消が急務 
  • 南日本新聞 2019.08.31[社説]大学入試の英語/受験生の不安解消急げ
  • 北海道新聞 2019.09.02 <社説>英語民間試験*混乱の回避が最優先だ
  • 徳島新聞 2019.09.03 社説 英語民間試験
  • 高知新聞 2019.09.03 『社説』 民間英語試験  文科省は何をしていた
  • 神戸新聞 2019.09.04 <社説>大学入試英語 混乱の収拾を急ぐべきだ
  • 北日本新聞 2019.09.04 <社説> 英語民間試験 受験生の不安払拭急げ

8月16日(金) 柴山文科大臣「サイレントマジョリティは賛成です」

柴山大臣は、英語入試改革への反対という声に対し、「サイレントマジョリティは賛成です」と応答。「一部の人間が反対だと騒いでいるだけ」と暗にほのめかす。懸念に対する声を軽視しているということで、さらに批判が集まる

News Up “サイレントマジョリティーは賛成?” 文科相と受験生の攻防 | NHKニュース

8月24日(土) 柴山大臣へ抗議した大学生、警察に排除される

埼玉県知事戦の応援演説に立った柴山大臣に大学生が民間試験撤廃に関するプラカードを掲げながら抗議。直後に警察から強制排除。その際にベルトをちぎられる。

「言論弾圧だ」との批判に、柴山大臣はツイッターで反応。

#柴山昌彦 文科相「業務妨害罪にならないよう気を付けて」 - Togetter

8月27日(火) 大臣「大声出す権利、保障されない」

上記の事件について問われた柴山大臣は、「(演説会場で)大声を出すことは権利として保障されているとは言えないのではないか」と、言論の自由の制限をめぐる持論を展開。

演説中に抗議受けた文科相「大声出す権利保障されない」:朝日新聞デジタル

8月30日(金)文科省前抗議行動

SNS発で文科省前の抗議活動に発展。政治的イデオロギー色は排し、大学入試の改悪および文科大臣の資質を問うワンイッシュー型(正確にはツー・イッシューズ?)の抗議活動。

当日の様子:

#0830文科省前抗議 - Twitter検索 / Twitter

9月6日(金) 文科省前抗議行動、第二弾

さらに拡大した抗議活動が予定されている模様(19:00-20:30 文科省前)。

ゲストも多数かけつけるらしい。

#0906文科省前抗議 - Twitter検索 / Twitter

追記9月7日午後0時

報道は次のようなものがあった。

ちなみに、ネットでは事前に誰が来るか書いてなかったようだが(組織的な運動ではなかったためだろう)、結局、共産党の畑野君枝衆議院議員と吉良よし子参議院議員が駆けつけ、スピーチを行ったとのこと。

言語社会学者

関西学院大学社会学部准教授。博士(学術)。言語(とくに英語)に関する人々の行動・態度や教育制度について、統計や史料を駆使して研究している。著書に、『小学校英語のジレンマ』(岩波新書、2020年)、『「日本人」と英語の社会学』(研究社、2015年)、『「なんで英語やるの?」の戦後史』(研究社、2014年)などがある。

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