【桜を見る会】略式起訴の対象期間が可能な範囲より短縮されていた

(写真:ロイター/アフロ)

「桜を見る会の略式起訴、変なんですよ」

それは神戸学院大学教授の上脇博之のこの一言で始まった。1月8日、公益財団法人「政治資金センター」(以下、センター)の定例会議の席。この日、センターの理事、評議員が2021年の活動方針を確認していた。

「上脇さん、何がおかしいの?」

センター代表で弁護士の阪口徳雄が上脇に発言を促した。二人とも、政治資金のプロだ。上脇はセンターの理事でもある。

「いや、安倍(前総理)の不起訴で騒ぎになっていますが、そもそも略式起訴された秘書も、実際より対象期間が短いんですよ」

この事件についてはあらためて説明するまでもないが、安倍晋三後援会が主催したとされる「桜を見る会前夜祭」の収支と支出が政治資金収支報告書(以下、収支報告書)に記載されていなかったもので、刑事告発を受けた東京地検特捜部は後援会の代表兼会計責任者だった配川博之公設第一秘書を政治資金規正法違反の罪で略式起訴した。東京簡易裁判所は配川秘書に罰金100万円の略式命令を出し、秘書側は即日納付している。

上脇は、「あれは、2015年については略式起訴していないんです」と続けた。

「え?そうだったか?」

驚いたのは阪口だけではなかった。参加者が直ぐにネットで調べると、その通りだった。

問題の前夜祭は、当時首相だった安倍晋三の後援会が(特捜部は安倍晋三後援会としたが異論も有る)2013年から東京都内のホテルで開催してきたが、その翌年の2014年以降、安倍氏の何れの後援会の収支報告書にも前夜祭の収支の記載がなかった。ところが、東京地検が略式起訴したのは、2016年から2019年に開かれた前夜祭に関する収入計約1157万円と支出計約1865万円についてのみだった。2015年が対象期間に含まれれば、その金額も増え、罪状は当然悪くなる。

政治資金規正法の時効は5年だ。時効の問題だろうか?

「2015年の収支報告書の提出は翌年2016年の5月27日ですから、時効が来るのは今年の5月です」

既に提出日を確認していた上脇が答えた。

報道によると、2015年分の不記載について起訴されていない理由は、収支報告書が存在しないため嫌疑不十分とされたとのことだ。勿論、これは東京地検が公式に認めたものではないが、それ以外の答えは見いだせない。

なぜ「存在しないため」となったのか?収支報告書の保存期間が公表から3年と定められているからだ。

国会議員の政治資金については、総務省か議員の選挙区の自治体の選挙管理委員会に届けられる。その際に、3年間しか保存されない。その結果、東京地検が略式起訴の段階で3年の保存期間を過ぎていた2015年の収支報告書について対象から外したと見るのが自然だ。

「山口県は当時はネット公表はしていないか?」

阪口が事務局に問うた。

「当時はネット公表していませんでした。ですから、情報公開請求して入手して我々のセンターで公開しています」

事務局が答えた。

政治資金センターは、全国の衆議院議員及び参議院議員に関係する政治団体の収支報告書を入手してサイトで公表しており、問題の安倍晋三後援会に関しては2011年までさかのぼって記録を保管し公表している。つまり、問題の2015年の報告書についても存在するし、誰でもその内容を確認できる。

「センターで公表しているのに不存在はおかしいわな。とても捜査を尽くしたことにはならない」

阪口は唸った。

この事件では、安倍は収支報告書の作成内容まで把握していないとして東京地検が不起訴としたため、検察審査会に申し立てが行われている。

「そもそも、特捜部が強制捜査をせずに処理したからこんなことになった」

そう阪口は言った。そしてセンターとして東京地検に再捜査を求めることを決めた。

1月12日、上脇は東京検察審査会に審査の申し立てを行い、1月18日、センターは東京地検に対して再捜査を求める申し入れ書を提出した。