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沖縄県知事選挙 接戦の行方は

立岩陽一郎InFact編集長
金武町の米軍基地キャンプ・ハンセン前にて(撮影:ニュースのタネ)

9月30日に投開票が行われる沖縄県知事選挙。1週間となった沖縄に取材で入った。

20日、自民、公明両党などが推薦する無所属新人の佐喜真淳(54)候補は、沖縄市で決起集会。午後6時半から始まった集会では、1500人収容の会場の5割から6割ほどが埋まった。

佐喜真候補は、「本当にこれで良いのか。安心して暮らせるのか。そう考えた時、県政を刷新する時だと思って知事選挙に出ることにした。県民の生活が最優先だ。争いや対立ではなく、和を持って対話をしてこの沖縄を導いていく」と語った。

普天間基地の返還を実現するとは語ったが、辺野古移設への是非には触れなかった。

1500席で5割から6割ということは750人から900人くらいは来たという計算だ。しかし多くが作業着姿だった。企業からの派遣といった感じだろうか。

この日、無所属新人の玉城デニー(58)候補の決起集会も、同じ市内で午後7時半から始まった。かなり小さな会場は、人が入り切れない状況だ。主催者に参加人数を尋ねると、560人ほどだと話した。女性の姿が目立った。

玉城候補は、「普天間基地の辺野古への移設について反対する理由をアメリカ政府にもしっかりと話していく。私の父の国であるアメリカは民主主義の国ですから、説明すればわかってくれる」と語った。

ただ、故翁長前知事が主張したような、普天間基地の県外移設、日本本土で受け入れて欲しいといった主張は、私が聞いた限りでは無かった。

在日アメリカ軍専用施設の70.3%が集中する沖縄県。当然、普天間基地の辺野古移設をめぐる議論が選挙戦での最大の争点と評されることが多い。しかし、私の印象では、実際には議論は深まっていない。両候補とも、普天間基地の返還を推進する立場だ。ただ、その先の、「では、どうするべきか?」という点には触れていないというのが印象だ。勿論、それはその先の議論だという言い方はできるだろう。

一方、情勢はどうなのだろうか?両陣営の応援で入っている現職国会議員に尋ねてみた。

玉城候補の支援に入っている立憲民主党の議員は、「接戦だ。当初はこちらが10ポイントほどリードしていたが、今は差を詰められている。数ポイントのリードといった感じじゃないだろうか。ただ、最終的には勝てると思っている」と話した。

沖縄選出の自民党の議員は、「接戦に持ち込みたい。そうすれば勝機は有る」と言葉少なに話した。

実は、投開票が行われる9月30日、沖縄は台風が接近するとの予報だ。有権者の投票行動は天候に左右される。このため、両陣営とも期日前投票を呼び掛けているが、天候が荒れた場合、組織票を持っている側に有利に働く。

一部報道の世論調査では玉城候補が佐喜真候補をリードしているとなっていて、それは両陣営や現地を取材した私が受けた印象とも符合する。しかし、天候なども考えると、結果の予測は難しい。

明確な点は1つだ。どのような結果になろうとも、それは沖縄県民の選択として尊重されるべきという点だ。そこだけは間違えてはいけない。

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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