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ロシア疑惑 トランプ大統領の事情聴取へ向けた攻防が最終局面

立岩陽一郎InFact編集長
ロシア疑惑の捜査を指揮するロバート・モラー特別検察官(右)(写真:ロイター/アフロ)

ロシア政府が去年の大統領選挙に関与したとされるロシア疑惑を捜査している特別検察官とトランプ大統領の弁護団との間で、大統領本人への事情聴取をめぐる駆け引きが最終局面を迎えているようだ。

ワシントン・ポスト紙は、4月3日の紙面で、事情聴取を求める際にロバート・モラー特別検察官側が大統領の弁護団に対して、「トランプ大統領は現時点では容疑者とはみなしていない」と伝えたと報じている。これについて新聞、テレビ各社は、専門家の意見から、その真意を推し量る報道を続けている。

このうちCNNテレビには、ニクソン政権時の大統領補佐官を務めたジョン・デーン氏が登場。デーン氏は、ニクソン大統領が失脚したウォーターゲート事件の首謀者として当時の独立検察官(今回の特別検察官とは異なる)と対峙したデーン氏は、特別検察官の狙いは明らかだとして次の様に話した。

「これは事情聴取を行うための呼び水だ。『あなたは容疑者とみなしている』と話したら、大統領は聴取に応じないだろう」。

最初に報じたワシントン・ポスト紙は、特別検察官の伝えた内容がトランプ大統領を捜査対象から外したことを意味するのか、大統領は訴追の対象とはならないという過去の司法判断について語ったものなのか判然としないとしている。そして、「(特別検察官の真意を)知るのはほんの一握りの人だけで、この捜査全般に言えることだが、彼らは何も語らない」と書いている。

ただ、多くのメディアが共通して伝えているのは、大統領への事情聴取はロシア疑惑をめぐる捜査の最大の山場となるというもの。大統領の弁護団の中では、大統領が事実と異なる証言をして更に厳しい立場に追い込まれると懸念する声は根強い。

はたして大統領の事情聴取は行われるのか?その最終局面を迎えているのは間違いない様だ。

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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