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米トランプ大統領が就任100日で敵視メディアに寄稿 あらためて米一国主義を宣言

立岩陽一郎InFact編集長
トランプ大統領が寄稿した文章(ワシントンポスト紙4月30日)

就任100日を迎えた米トランプ大統領はかねてから敵視してきた主要紙に寄稿。この中で100日間の取り組みの成果を強調するとともに、あらためて米国一国主義を宣言。

トランプ大統領は就任100日の区切りに、「この100日間で、私は米国民との約束を守った」と題した文章をワシントンポスト紙に寄稿。4月30日の紙面に掲載された。

(参考記事:米有力紙がコラムで「トランプ大統領は不道徳で不誠実に生きてきた70歳」と酷評)

この中でトランプ大統領は、まずTPPからの撤退を大きな成果として挙げた。また政府が行う契約において米国製品の購入、米国企業を優先的に選択することを徹底し、米国企業が米国人を雇用するといった状況を作り出すよう取り組んでいるとしている。

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更に、米国企業の活動の足かせとなっていた多くの規制を撤廃したとして、特に石油、天然ガス、石炭の採掘に伴う規制の撤廃を事例として挙げている。

この他、通常は「undocumented immigrant(無記録移民)」と称される許可なく入国した移民について、蔑称とされる「illegal immigrant(不法移民)」と記した上で、不法移民の流入防止と摘発に成果を出していると強調している。

一方、シリア空爆については、「問題を無視してきた」とオバマ政権を批判しその違いを強調するにとどめている他、北朝鮮政策などについては一切触れていない。

そして、「我々はもう二度と、国外での戦争に我々を引き込み、国内での貧困、失業をもたらす過去の言説に耳を傾けることはない」と結んでおり、国内政策重視、米国一国主義を再度宣言するものとなっている。

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文書はワシントンポスト紙の解説委員や外部の識者が意見を載せるオピニオンのページに掲載され、冒頭に「ドナルド・トランプによる」と記され、文末には「執筆者は米国大統領」と記されている。

トランプ大統領はテレビのCNNやNBC、新聞のニューヨークタイムズやワシントンポストを嘘を流す「米国民の敵」だと批判している。それだけに、そうしたメディアに寄稿したことが話題となっている。公共放送NPRの記者は、「ワシントンポスト紙が依頼したものではなく、本人が送ってきたものらしい。敵視しても、結局はメディアを利用するという点が、トランプ大統領らしさを物語っているように思う」と話している。

(参考記事:米トランプ政権内で激しい権力争い 米メディアが一斉に報道)

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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