米国の主要メディアで北朝鮮特集が相次ぐ 脅威をあおる結果との懸念も
米国の主要メディアで北朝鮮の特集を組むところが増えている。北朝鮮への脅威が高まっている米国の現状を反映したものと見られるが、こうした放送がかえって脅威をあおることになるとの懸念も出ている。
主要テレビNBCは3日に続き4日も夜のメインニュース「Nightly News」を韓国の米軍基地から放送した。キャスターのレスター・ホルト氏が、38度線近くで行われている米韓合同演習の現場を取材した内容を伝え、亡命した元北朝鮮外交官のインタビューを伝えた。この中で元外交官は、金正恩氏が兄の金正男氏の殺害を指示したことは間違いないと話した上で、自分も狙われており、金正恩氏は自分に従わない個人や国家を葬ろうとするなどと語った。
(参考記事:拉致の記憶~蓮池兄がたどる拉致事件)
また、4日、公共放送PBSも看板番組の「フロントライン」で、「知られざる国家 北朝鮮」と題した特集を放送した。これは2014年に制作し放送したもので、それを再放送することにしたという。この中で、日本のアジアプレスが入手した映像や独自の取材などを使って、北朝鮮の実態を描いている。
北朝鮮をめぐってはトランプ米大統領が今月行われる中国の習近平国家主席との米中首脳会談で主題に沿えるものと見られており、トランプ政権の外交の最重要課題となっている。
(参考記事:米トランプ政権、初軍事作戦でつまずき 戦死した米兵の父親が「バカげた作戦」と批判(38))
既にティラーソン国務長官が過去の北朝鮮政策は失敗に終わったとの認識を示し、今後は軍事力の行使も視野に入れたあらゆる選択肢を検討すると発言している他、マティス国防長官も、北朝鮮の核開発、弾道弾開発を止める必要が有ると発言している。更に、トランプ大統領は中国の協力が得られなければ米国単独で対応すると述べるなど、軍事力の行使をにおわす発言を始めている。
主要メディアが北朝鮮特集を組む背景には、米国内で増す北朝鮮脅威論がある。一方、北朝鮮に対して軍事力の行使をにおわせるトランプ政権の姿勢が脅威を更に増幅させていることも間違いない。このため、こうした主要メディアの取り上げ方が北朝鮮の脅威をあおる結果になるとの懸念の声も出ている。
(参考記事:米トランプ政権が北朝鮮と初の「協議」へ~トランプの米国とどう向き合うか? (33))
※「38度線近くで」とすべきところが「北朝鮮の38度線」と誤記していました。修正しています。