いよいよ始まった米トランプ政権の脱「温暖化防止」政策
米トランプ政権が地球温暖化防止の取り組みからの撤退を加速させることが明確になった。世界に温暖化の警鐘を鳴らしてきた政府機関の予算を大幅に削減するという。また、温暖化防止のために企業に課してきた規制の撤廃も発表された。
●国際的な研究機関の予算を大幅削減
ワシントン・ポスト紙によると、日本でもノアの名称で知られるNOAA=米海洋大気局の予算が一挙に17%削減されることがわかったという。NOAAは大気や海面の温度変化を観測しており、計測結果から世界の年平均気温が毎年過去最高を記録していることを発表してきた。こうした活動が各国の温暖化の防止の取り組みを後押ししてきたと言われている。
しかし、2割近い予算の削減で、今後の活動は大幅な縮小が避けられない情勢だ。
(参考記事:トランプ大統領の米国とどう向き合うか ドイツ首相の選択)
●米環境保護庁は温暖化防止策を次々に取り止め
また、EPA=米環境保護庁は、油田やガス田で大気に排出されるメタンガスの量を報告するよう企業に求めた規制を取りやめることを発表した。メタンガスは温暖化の原因とされる温室効果ガスの1つ。規制は、オバマ政権が温暖化防止の取り組みの1つとして導入した。
更に、ワシントン・ポスト紙は、EPAが乗用車や軽トラックの燃費効率を上げるよう求める新基準の導入を取りやめる方向で検討に入ったとも報じている。これも、温室効果ガスの排出削減を目的としてオバマ政権時に導入が決まったものだったが、自動車業界から反発の声が出ていた。
EPAはオバマ政権下で温暖化防止の取り組みの旗振り役だった。しかし、環境対策のための規制が企業の経営環境を圧迫していると主張してきたスコット・プルイット氏が長官に就任したことで、今後、更にEPAの温暖化防止の取り組みは後退するものと見られている。
(参考記事:トランプ船に乗った安倍総理)
●パリ協定はどうなるのか
トランプ大統領は、各国が参加して温暖化防止に取り組むことを決めたパリ協定についても懐疑的な姿勢を見せている。温暖化防止に取り組んできたNGOの中からは、パリ協定について、米国が脱退したことで機能しなくなった京都議定書と同じような道をたどるのではないかとの懸念の声が出ている。