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トランプ大統領 保守のための政治を宣言

立岩陽一郎InFact編集長
保守派の政治集会であるCPACで演説するトランプ大統領(写真:ロイター/アフロ)

トランプ大統領は保守派のグループの政治集会で、保守派のための政策を実行することを強調した。これまで表向きは保守とリベラルとの団結を訴えてきたトランプ大統領だが、一気に保守派の側に舵を切った。

演説は24日、保守派の市民グループの呼びかけで開催される政治集会「CPAC (シーパック)」で1時間余りにわたって行われた。

この中でトランプ大統領は、「私にとって最初の本格的な政治的な発言の場はこのCPACだった。以来、私は長い間、CPACとともに歩んだ。そして、今、みなさんはとうとう大統領を得た。長い道のりだった」と話し、今後は保守派の人々のための政策を実行することを強調した。

http://cpac.conservative.org/

具体的には、環境保護などの観点から強化されてきた規制を撤廃して企業活動を活性化させることや、企業への減税を実施することをあらためて強調。更に、軍への支出を増やし、攻撃力も防御力も最強の米軍を構築すると宣言。強力な軍事力によって平和を維持するとした。また、メキシコとの国境に建設するとしている壁については、予定を大幅に前倒しして建設に着工する考えを明らかにした。

一方、メディアとの対立が深まっていることについては、これまでの発言を修正した。そして、事実とは異なるフェイク・ニュースとそうでないニュースを分けて考えているとして、米国の敵なのは事実とは異なるフェイク・ニュースを流すメディアだとした。

(参考記事:安倍総理帰国後のトランプ大統領を襲った側近のスキャンダル~トランプの米国とどう向き合うか? (29))

その事例として、フリン前国家安全保障補佐官の辞任のきっかけとなったワシントン・ポスト紙の記事をやり玉にあげ、「情報について匿名の9人からの確認をとったとしているが全て嘘だ」とし、こういうニュースをフェイク・ニュースだと主張。参加者に、情報源を明示しないニュースは信じてはいけないと呼び掛けた。

演説はCNNテレビやCNBCテレビで全米に放送された。演説を聴いた公共放送NPRのベテラン記者は次の様に話し懸念を示した。

(参考記事:トランプの米国とどう向き合うか? (16)~トランプ大統領に毅然と対した米TVキャスターの気骨)

「これで米国の分断が更に明確になったというのが印象だ。メディアも自分に都合の良いメディアとそうでないメディアに分けて、自分にとって都合の悪い報道をするメディアをフェイク・ニュースと呼んで敵視するとしており、分断を煽っている感じがする。今米国で起きている分断はトランプ大統領が作り出したものではないが、大統領がこうした形で分断を煽るとなると、更に状況は深刻なものになるのではないか」

CPACはConservative Political Action Conferenceの略で、草の根の保守派の運動とされる。

(参考記事:トランプの米国とどう向き合うか? (20)~トランプ大統領が連邦最高裁判事を指名で、更に米国の分裂が深まるとの懸念も)

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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