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大統領就任式まで1週間の首都は

立岩陽一郎InFact編集長
大統領就任式の準備が進む米連邦議会。宣誓式のためのステージが設置された。

米国に新たな大統領が誕生するまで1週間を切った。首都ワシントンは様々な懸念を抱えつつも大統領就任式の準備を加速させている。就任式の行われる首都の状況を伝える。

●異常な状況が続く米政界

世界中の注目を浴びたドナルド・トランプ米次期大統領の記者会見は米国の内外で大きな波紋を呼んでいる。人権問題に取り組んできたことで知られる民主党のジョン・ルイス議員が、米ネットワークNBCのインタビューに応じて、「私はトランプ氏を正当な大統領とは認めない」と発言するなど、異常な状況が続いている。

こうした中、就任式が行われる首都ワシントンの中心部に足を運んだ。

●首都では粛々と準備が

かなり厳戒態勢かと思われたが、そういうことはなかった。地下鉄の駅などに警察官の姿を見たが、ワシントンDCというのはいつもこうだったような気もする。

就任式は連邦議会ビルの西側のバルコニーで行われる。バルコニーの周辺には星条旗が掲げられ、特設の会場の設置が続いていた。バルコニーからナショナル・モールと呼ばれる芝生の公園が続き、その先にワシントン・メモリアルの塔が見える。米国の心の中心部と言われる場所だ。

就任式で多くの人が集まる議会前の広場
就任式で多くの人が集まる議会前の広場

8年前に行われたオバマ大統領の最初の就任式の際は、モールの芝が人で埋め尽くされたという。その数は200万人とも言われている。今回のトランプ氏の就任式は、どれだけの人が集まるのか?

懸念されているのが、就任式を祝う人と同じくらい就任に反対する人が来ると言われていることだ。就任式の当日にもデモが予定されているが、翌日にも女性グループによる大規模な集会が予定されている。

目立つのは仮設トイレの多さだ。緑色のボックスタイプで、ドアには鍵がかけられていた。当然だろう。当日までは空にしておかないといけない。

就任式は現地時間の午前9時頃から始まり注目の宣誓式は正午に行われる。その後、連邦議会で昼食会(勿論、関係者のみ)が行われ、続いてパレードが行われる。パレードは連邦議会からペンシルバニア・アベニューをホワイトハウスに向けた約2キロを車で通るものだ。オバマ大統領は車から出てミシェル夫人とともに徒歩で歩いた。トランプ氏がどうするかはその時にならないとわからない。

設置された大量の簡易トイレ、その数は数千個
設置された大量の簡易トイレ、その数は数千個

そのペンシルバニア・アベニューも仮設のトイレと、仮設のスタンドが設置されていた。

●憲法修正条項第一条を見よ

面白いものを見つけた。連邦議会を出てホワイトハウスに向かって少し歩いたところだ。

ニュージアムに掲げられた修正条項第一条
ニュージアムに掲げられた修正条項第一条

「私たちはアメリカの憲法修正条項第一条が認める自由を祝う」と大きく書かれている。表現の自由、結社の自由、信教の自由、そして報道の自由を保障した憲法の条文だ。見ると、ニュージアムと呼ばれる報道に関する博物館だった。報道の歴史を展示している。新大統領は必ずこの建物の前を通ることになる。これは呼称から「次期」が外れた彼に向けた1つのメッセージなのか?大統領は、何かつぶやくのだろうか?

ホワイトハウスにほど近い場所に、新たな名所ができたので行ってみた。トランプ氏が自身のホテルにしたかつての「オールド・ポスト・パビリオン」だ。黒字に金ぴかの文字でTRUMP INTERNATIONAL HOTELと書かれていた。このホテルの存在も実はトランプ氏の利益相反との関係で取りざたされている。それはともかく、このホテルが米国の首都の新たな名所になっていることは間違いなく、多くの人が建物の前で写真を撮っていた。

新たに始まったトランプ氏のホテル
新たに始まったトランプ氏のホテル

次期政権が波乱含みなのは間違いない。しかし、首都は粛々とその日に向けて準備を進めている。

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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