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トランプ次期大統領に反縁故法の逆襲か?

立岩陽一郎InFact編集長
組閣準備の会合を繰り返すトランプ次期米大統領(写真:ロイター/アフロ)

就任式まで2週間を切り、トランプ次期大統領は政府の要職を任命する重要な時期を迎えている。こうした中、娘婿のジャレッド・クシナー氏が運営していた会社を辞職する意思を固めた。ホワイト・ハウス入りの準備と見られている。しかし、米国には親族の政権入りを規制した反縁故法がある。ロシア問題を抱えるトランプ氏だが、更に新たな火種を抱えることになる。(ワシントンDC/立岩陽一郎)

国防長官などの重要閣僚の任命は既に始まっているが、トランプ氏が政治任用するポストは4000を超えると言われる。中でも注目されるのは大統領を直接補佐するホワイト・ハウスのスタッフの任命だ。

この中で、かねてから注目されていたのが長女イバンカ氏の夫で不動産会社を経営するジャレッド・クシナー氏の動向だ。ワシントン・ポスト紙は、クシナー氏が自身の経営する会社を辞する準備を進めていると報じた。7日、クシナー氏の弁護士が語ったという。

ホワイト・ハウス入りのため障壁と考えられている利害問題を無くすためと見られており、クシナー氏のホワイト・ハウス入りへの動きは明確になったと見られる。

(参考記事:トランプの米国とどう向き合うか? (2) トランプ勝利を予言した米紙の記事)

クシナー氏は安倍総理がトランプ氏と面会する時に同席しており、この異例の面会を実現させた米国側の立役者と見られている。親族で周囲を固めるトランプ氏だが、特にこの弱冠35歳の娘婿への信頼が厚いと見られている。また、ユダヤ教徒であるクシナー氏自身も政治への関心が高いことが言われている。

(参考記事:トランプの米国とどう向き合うか

クシナー氏とともに、イバンカ氏も名前が取りざたされるなど、身内の政権入りがささやかれるトランプ次期大統領。最初の妻のイヴァナ氏が出身地であるチェコの大使になるのではないかとの噂まで出ている。しかし、米国には縁故採用を禁じた反縁故法がある。厚い信頼を置く娘婿をホワイト・ハウスに入れたいのはトランプ氏の意向とも言われているが、法律違反を敢えて犯すのか?それとも、抜け道を見つけ出して、実質的な権限をこの若者に与えるのか?

ロシアとの関係で議会との軋轢が続きそうな雲行きだが、ここにきて、1960年代に成立した法律もトランプ氏の障壁として立ちはだかろうとしている。

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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